AMDが次世代プロセッサアーキテクチャZen 5の詳細を公開したが、このZen 5ベースのRyzen 9000シリーズCPUが、前世代と比較して驚異的な28%のトランジスタ密度向上を実現している事が明らかになった。
Zen 5アーキテクチャがもたらす密度革命
AMDのZen 5アーキテクチャを採用する「Eldora」コアコンプレックスダイ(CCD)は、83億1500万トランジスタを70.6平方ミリメートルに詰め込むことに成功した。これは、前世代のZen 4ベース「Durango」CCDの65億トランジスタと比較して、実に28%もの密度向上を意味する。興味深いことに、この大幅な密度向上にもかかわらず、ダイサイズはほぼ同等(Zen 4が71平方ミリメートル)を維持している。
製造プロセス | 面積 | トランジスタ数 | 密度 | |
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Zen (Zeppelin) | 14 nm | 212 mm² | 48億 | 22.6 MTr/mm² |
Zen+ (Zeppelin) | 12 nm | 212 mm² | 48億 | 22.6 MTr/mm² |
CCD (Aspen Highlands, Ryzen 3000) | 7 nm | 74 mm² | 39億 | 52.7 MTr/mm² |
IOD (Ryzen 3000) | 12 nm | 125 mm² | 20億9000万 | 16.7 MTr/mm² |
CCD (Breckenridge, Ryzen 5000) | 7 nm | 80.7 mm² | 41億5000万 | 51.4 MTr/mm² |
IOD (Ryzen 5000) | 12 nm | 125 mm² | 20億9000万 | 16,7 MTr/mm² |
CCD (Durango, Ryzen 7000) | 5 nm | 71 mm² | 65億 | 92.9 MTr/mm² |
IOD (Ryzen 7000) | 6 nm | 122 mm² | 34億 | 27.9 MTr/mm² |
CCD (Eldora, Ryzen 9000) | 4 nm (N4X) | 70.6 mm² | 83億1500万 | 117.78 MTr/mm² |
IOD (Ryzen 9000) | 6 nm | 122 mm² | 34億 | 27.9 MTr/mm² |
この密度向上の背景には、TSMCの最新製造プロセスの採用がある。Zen 5チップはTSMCのN4P(4nmクラス)プロセスで製造される一方、Zen 4チップはN5(5nmクラス)プロセスで製造されていた。この微細化によって、AMDは同じダイサイズでより多くの機能を詰め込むことが可能になったのだ。
トランジスタ密度で見ると、Zen 5 CCDは1平方ミリメートルあたり117.78メガトランジスタ(MTr/mm²)を達成。これは、Zen 4 CCDの92.9 MTr/mm²から26.8%の向上を示している。
さらに、AMDはモバイル向けの「Strix Point」APUについても情報を公開した。Strix PointはZen 5とZen 5cコアを組み合わせた232.5平方ミリメートルのモノリシックダイを採用。これは前世代の「Phoenix」や「Hawk Point」と比較して30.6%大きいサイズだが、コア数やキャッシュ、グラフィックス機能の大幅な強化を考慮すると、効率的な設計が行われていることがわかる。
製造プロセス | ダイサイズ | コア構成 | L2キャッシュ | L3キャッシュ | |
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Phoenix1 | TSMC 4 nm | 178 mm² | Zen 4 x8 | 8 MB | 16 MB |
Phoenix2 | TSMC 4 nm | 137 mm² | Zen 4 x2 + Zen 4c x4 | 6 MB | 16 MB |
Hawk Point1 | TSMC 4 nm | 178 mm² | Zen 4 x8 | 8 MB | 16 MB |
Hawk Point2 | TSMC 4 nm | 137 mm² | Zen 4 x2 + Zen 4c x4 | 6 MB | 16 MB |
Strix Point | TSMC 4 nm (N4P) | 232.5 mm² | Zen 5 x4 + Zen 5c x8 | 12 MB | 24 MB |
この密度向上は、AMDの競争力強化に直結する。特に、AIアクセラレーション機能を搭載したRyzen AI 300シリーズは、MicrosoftのCopilot+対応AI PC市場での シェア獲得を狙う重要な製品となる。
Zen 5アーキテクチャを採用したRyzen 9000シリーズは2024年7月31日に発売予定で、デスクトップからモバイルまで幅広い製品ラインナップが展開される。この新世代プロセッサは、高性能コンピューティング市場に新たな基準をもたらすと同時に、AIや機械学習分野での応用も期待される。
Source
- HardwareLuxx: AMD macht Angaben zur Chipgröße
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