SoftBankが、野心的なAIベンチャー「Project Izanagi」のチップ製造をIntelからTSMCへ変更する方針を固めたと報じられている。この動きは、NVIDIAに対抗するAIアクセラレータ市場への参入を目指すSoftBankの1000億ドル規模の投資計画の一環であり、半導体業界に大きな波紋を広げている。eee
SoftBankのAI野望とIntelからの離反
SoftBankのCEO、孫正義氏は、NVIDIAに匹敵するAIアクセラレータを販売する企業の創設を目指し、最大1000億ドルの投資を検討していると伝えられている。この壮大な計画は、単にAIチップの設計・販売にとどまらず、データセンターの構築や独自のソフトウェアスタックの開発まで視野に入れた総合的なものだ。
当初、SoftBankはIntelとの協力を模索していた。しかし、Financial Timesの報道によると、この協力関係は「量と速度」に関するSoftBankの要求をIntelが満たせなかったために頓挫したとされている。具体的には、2025年の実用化が予定されているIntel 18Aプロセスの使用が検討されていたと推測されるが、既に他の大口顧客との契約が存在することが障害になった可能性がある。
IntelとSoftBankの協力関係の詳細は明らかになっていないが、Intelがチップ設計の専門知識を提供する予定だったという情報もある。しかし、時間的制約がネックとなった可能性が高い。この協力関係の破綻は、近年様々な挫折を経験しているIntelにとって、さらなる悪材料となりそうだ。
一方で、SoftBankはTSMCへの製造委託に舵を切ることになった。TSMCは世界最大の半導体ファウンドリーであり、Apple、NVIDIA、AMD、Intelなどの主要顧客の需要で、先端ノードの生産能力はすでに逼迫している。そのため、SoftBankの野心的な計画に対応できる余剰生産能力を確保できるかどうかは不透明だ。
SoftBankのProject Izanagiは、ArmやGraphcoreの買収で得た技術を活用し、NVIDIAのCUDAに匹敵するソフトウェア環境の構築も目指している。ArmのCPU設計とGraphcoreのAIチップ製造ノウハウを組み合わせることで、競争力のある製品を生み出そうとしている。
しかし、この計画には多くの課題が存在する。まず、チップ設計の専門知識の不足が挙げられる。SoftBankは半導体設計の経験が乏しく、短期間でNVIDIAに匹敵する製品を開発できるかは疑問が残る。また、TSMCの生産能力の制約も大きな障壁となる可能性がある。
さらに、巨額の資金調達の必要性も課題だ。孫正義氏は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦の投資家に資金提供を打診しているとされるが、具体的な合意には至っていない。GoogleやMetaなどの大手テック企業にも協力を呼びかけているが、これらの企業との協力関係は、将来的な競合関係になる可能性もあり、複雑な様相を呈している。
加えて、ArmのクライアントとSoftBankの関係悪化リスクも指摘されている。Armが直接チップ設計と製造に乗り出すことで、現在のArmベースのデータセンタープロセッサ開発企業との関係に軋轢が生じる可能性も考えられそうだ。
Source
- Financial Times: SoftBank discussed AI chips tie-up with Intel to rival Nvidia
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