AMDが待望の最上位ゲーミングCPU、Ryzen 9 9950X3Dと9900X3Dの正式発売日と価格を発表した。2025年3月12日に両モデルを699ドルと599ドルでグローバル発売する。Zen5アーキテクチャと3D V-Cache技術を組み合わせた新モデルは、ゲーマーとクリエイター双方のニーズに応える製品となる見込みだ。
AMD新型CPUの発売日・価格・スペック詳細が確定
AMDの最上位ゲーミングCPUとなるRyzen 9 9950X3DとRyzen 9 9900X3Dは、2025年3月12日にグローバル市場へ投入される。日本での発売は、例年の傾向を見る限り、3月14日（金）の11時に発売開始となりそうだ。
価格はそれぞれ699ドル（約10万円）と599ドル（約9万円）に設定され、前世代の7950X3Dおよび7900X3Dと同価格となる。一方、同世代の非X3Dモデルと比較すると、9950X3Dは9950Xより約100ドル、9900X3Dは9900Xより120ドル高い価格設定だ。
フラッグシップモデルのRyzen 9 9950X3Dは、最新のZen5アーキテクチャを採用した16コア32スレッドプロセッサ。最大5.7GHzのクロック速度と144MBという大容量のL3キャッシュを誇る。これは標準モデルのRyzen 9 9950Xより64MB多く、ゲームパフォーマンスの大幅な向上が期待できる。TDPは170Wとなっている。
中堅モデルのRyzen 9 9900X3Dは12コア24スレッド構成で、最大5.5GHzのクロック速度、140MBのL3キャッシュを搭載。TDPは120Wと抑えめながら、非X3Dモデルの約2倍のキャッシュ容量を実現している。
3D V-Cache技術とゲーミング性能の優位性
これらの新型CPUの最大の特徴は「3D V-Cache」技術だ。この技術は、CPU上に高速キャッシュメモリを立体的に積層することで、特にゲームのような大量のデータアクセスが必要なアプリケーションで性能を大幅に向上させる。
今回の9000シリーズX3Dでは、前世代では安定性の問題から制限されていたオーバークロックが可能になった点も大きな進化となっている。キャッシュの改良によって安定性が向上し、より高いクロック周波数の実現が可能になったとAMDは説明している。
AMDのCES 2025での内部テストによれば、9950X3Dは競合するIntelのフラッグシップ「Core Ultra 9 285K」と比較して1080p高設定ゲーミングで20%高速だという。また、前世代のRyzen 9 7950X3Dからも8%のパフォーマンス向上を実現している。
興味深いことに、9950X3DのゲームパフォーマンスはRyzen 7 9800X3D（8コア16スレッド）とほぼ同等（1%以内の差）とされる。これは、ゲームが必ずしも多数のコアを活用せず、むしろキャッシュ量に影響される傾向があることを示している。
生産性ワークロードについては、9950X3DがCore Ultra 9 285Kと比較して約10%のリードを持つという。特にマルチコアを活用する作業では16コアの強みが発揮される。ただし、シングルコア性能を重視する一部アプリケーションでは、必ずしも最適とは言えない可能性もある。
市場での位置づけと供給見通し
これらの新CPUは、2024年11月に発売されたRyzen 7 9800X3D以来の新型プロセッサとなる。注目すべきは、9800X3Dが発売以来、正規価格での入手が困難な状況が続いており、実際の小売価格は大幅に高騰している（日本では9万円から10万円程度）点だ。新しいX3Dモデルの追加により、AMDのゲーム最適化技術搭載プロセッサの選択肢が広がることが期待される。
AMDは特に、ゲーミングPCで他の重い非ゲーム作業も行うユーザーやストリーマー向けにこれらのCPUを推奨している。しかし、専門家の間では9800X3Dの入手性の問題がこれらの新モデルにも同様に発生する可能性が指摘されている。
ユニークな点として、両モデルともAMDのCPUチップレットの片方のみに3D V-Cacheを搭載している。AMDのチップセットソフトウェアは、ゲームなどキャッシュの恩恵を受けるアプリケーションにはV-Cache搭載コアを割り当て、非ゲームワークロードには高速なクロック速度を持つ通常のCPUコアを優先的に割り当てる。
最適な性能を得るためには、AMDは最新のWindows、マザーボードBIOS、チップセットドライバーを推奨している。別のRyzen CPUからX3Dモデルへの交換時には、適切なコア割り当てを確保するためにWindowsの再インストールが推奨される場合もある。
Intel Arrow Lakeが大幅に遅れをとっている現状では、これらのチップはこの世代のベストゲーミングCPUの座を獲得する可能性が高い。AMDによるゲーミングCPU市場でのリードは今後もしばらく続きそうだ。
Sources
- Jack Huyhn (X)
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