AMDはビジネスユーザー向けに、AI性能を向上させた新たなデスクトップ向け「Ryzen Pro 8000」チップとモバイル向け「Ryzen Pro 8040」チップシリーズを発売した。
ProシリーズはAMDの既存のコンシューマー向けプロセッサー・モデルをベースに、商用市場向けに調整され主にセキュリティ・オプションやリモート管理が強化されている。
目玉は16TOPSを誇るというXDNA NPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)の採用だろう。これにより、競合するIntelのMeteor Lakeアーキテクチャが搭載するNPUの11TOPSを上回る性能を誇るとAMDは主張している。また、総合的なAI処理能力でも、AMDは39TOPSを実現し、Meteor Lakeの34TOPSを上回り、リードを保っているとのことだ。
AMD Ryzen Pro 8000
デスクトップPC向けのRyzen Pro 8000シリーズは、コンシューマー市場向けのパワフルな8000G APUシリーズの基盤の上に構築されている。AMDの次世代Ryzen CPUはまだ存在していないため、これらはZen 5アーキテクチャをベースにしておらず、Zen 4と4nmプロセスに基づいている。全てのモデルは、XDNA NPU AIアクセラレーション・エンジンを内蔵している。
また、Ryzen Pro 3、5、7ファミリーは、4コア8スレッドから8コア16スレッドまで、すべての関連スペックはコンシューマー向けモデルと同じものだ。標準的な8000GモデルのTDPは45~65Wで、GEモデルはより低消費電力のTDP35Wとなる。
全体として、AMDは競合するIntelのCore i7-14700に対して平均19%の性能向上を主張しており、統合GPU能力は、IntelのCore i7-14700と比較して最大47%の性能向上を約束している。AMDはまた、さまざまな構成で消費電力を33%から76%削減できるとしている。
加えて、DDR5 RAMとPCIe 4.0をサポートし、一部のモデルではWi-Fi 7も搭載している。
AMD Ryzen Pro 8040
Ryzen Pro 8040シリーズに搭載されているHawk Pointアーキテクチャは、Ryzen Pro 7040シリーズに搭載されていたPhoenixアーキテクチャーとほぼ同じものだ。どちらもTSMC 4nmプロセスを採用しており、CPUコアと統合GPUのコア数や周波数に関しては変化はない。唯一の顕著な違いは、前述の通り、より高速なXDNAニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)の採用だ。
AMDは、競合のIntelチップとの比較ベンチマークを公開したが、ベンダーが提供するベンチマークと言う事で注意してみて欲しい。AMDは、マルチタスク、レンダリング、生産性、グラフィックス、コンテンツ制作など、さまざまなワークロードにおいて、15WのRyzen 7 Pro 8840Uが15WのIntel Core Ultra 7 165Uに対して平均30%の優位性があるとしている。また、28WのCore Ultra 7 165Hに対しても平均18%の優位性があるとしている。
AMDはまた、ワークステーション向けの45W Ryzen 9 Pro 8945HSが、Topaz LabsのAI搭載ビデオ・アプリケーションにおいて、45W Intel Core Ultra 9 185Hと比較して50%以上の優位性を発揮し、Llama 2 LLMでは最初のトークンまでの時間が最大77%短縮されるとしている。AMDはまた、顔認識や物体認識など、より広範なAIモデルによるベンチマークも公開した。より一般的なCPUを中心としたアプリケーションにおいて、5%から23%の性能の優位性が主張されている。
同社はまた、Teamsのワークフローにおいて、Intel Core Ultra 7 165Hに対して46%のバッテリー寿命の優位性があり、Apple M3 Pro CPUに対してわずかな優位性があるとしている。ただし、AMDの直接的な性能比較では、Appleシリコンは登場してこない。
AMD Ryzen Pro特有の機能
Ryzen Proチップには統合されたAMDプロ・テクノロジーズ・スイートが含まれており、AMD独自のOEMソリューションと内蔵のWindows 11機能を活用した複数のセキュリティ・レイヤーを含むAMDプロ・セキュリティ、AMDメモリー・ガード、Microsoft Pluton、AMDセキュア・プロセッサーなど、ビジネスレベルで必要となる高度な機能にアクセス出来る。また、8000シリーズ・ファミリーは、Microsoft Plutonセキュリティ機能とクラウドベースのリモート管理機能を統合した初のデスクトップPCとなる。PlutonはTPM(Trusted Platform Module)はバスインターフェイスのスニッフィング攻撃に弱いため、チップレベルのセキュリティ保護をさらに強化することを目的として、Microsoftが設計した物だ。
AMD Pro Manageability機能は、プロビジョニング、システム・イメージング、導入作業を簡素化し、AMD Pro Business Readyスイートは安定性を確保し、品質と信頼性の保証を含む。AMDは、Intelがセグメンテーションの目的でサポートを分割しているのに対し、プロセッサー・モデルのすべてでProテクノロジー・スイートを提供していると指摘している。
AMDのOEMプラットフォームには、8040シリーズおよび8000シリーズ・プロセッサーの基盤上に構築された、リフレッシュされた製品群がある。Ryzen Proシリーズは現在、AMDのOEMパートナーに提供されている。
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