AMDは2026年10月20日、機械学習を使ってゲーム映像を高解像度に再構成する「FSR Upscaling 4.1」の対応機器を、Radeon RX 6000シリーズや一部のRyzen搭載PCへ拡大した。これまでRadeon RX 9000シリーズを中心に提供されてきたAIベースの超解像技術が、旧世代のGPUや内蔵GPUでも正式に利用できるようになる。ただし、新しいFSRを使えば必ずゲームが高速化するわけではない。機械学習による画像再構成には従来方式より多くの計算が必要になる場合があり、同じ画質設定ではフレームレートが低下する可能性もある。旧世代GPUでの実用性を判断するうえでは、画質がどれほど改善するかに加え、内部解像度を下げても十分な画質を維持できるかが重要となる。
RX 6900 XTでは約13%の性能低下、画質向上とのトレードオフ
Tom's Hardwareが実施した簡易テストでは、Radeon RX 6900 XTで『Cyberpunk 2077』を4K解像度、FSRのBalancedモードで動作させたところ、FSR 4を使用すると性能が約13%低下したという。同媒体はFSR 3との比較を説明するなかでこの数値を示しており、フレームレートが下がる一方、特に動きのある場面では映像がより鮮明になり、描写の安定性も改善したと評価している。
ただし、このテストには変更前後の具体的なfpsが掲載されておらず、比較対象となったFSRの詳細なバージョンも明示されていない。CPUやレイトレーシングの設定、フレーム生成の有無といった条件も不明だ。したがって、約13%という性能低下は、特定のGPUとゲームにおける簡易テストの結果として捉えるべきであり、RX 6000シリーズ全体や携帯ゲーミングPCにも同様の傾向が当てはまるとは限らない。
新しいFSRでフレームレートが下がること自体は、技術的に不自然ではない。アップスケーリングは、ゲームを表示解像度より低い解像度で描画し、その画像を高解像度に再構成することで描画負荷を減らす技術だ。GPUOpenの開発者向け文書によると、FSR 4は複数フレームにまたがる時間的・空間的な情報を解析し、機械学習によって画像の細部を再構成する。最終的なフレームレートは、低解像度で描画することで削減できる負荷と、画像を再構成するために追加される負荷の両方に左右される。
例えば、同じBalancedモードを維持したままFSRの世代だけを変更しても、ゲームが内部で描画する画素数は基本的に変わらない。このため、新しい再構成処理の計算負荷が増えれば、画質が改善してもフレームレートは低下し得る。ネイティブ解像度で描画する場合との比較と、すでにFSRを有効にしている状態から新しいFSRへ切り替えた場合の比較では、評価している性能差が異なる点に注意が必要だ。
AMDの公式発表によると、RX 6000シリーズへの対応に当たっては、RX 7000シリーズ向けに開発したINT8モデルを最適化したという。INT8は8ビット整数を使った演算形式で、機械学習モデルの計算負荷を抑えるために利用される。AMDは既存GPUでも実行できるようモデルと処理を調整することで、FSR 3.1からの画質改善を提供すると説明している。ただし、実際の画質改善の程度や性能への影響については、AMDの説明とゲームごとの実測結果を分けて評価する必要がある。
内部解像度を下げられれば、画質向上が性能改善につながる可能性
FSR 4.1の価値は、同じ画質設定での比較だけでは判断できない。新しい機械学習モデルによって、従来より少ない画素情報から高品質な画像を再構成できるなら、アップスケーリングの設定を変更して描画負荷をさらに減らせる可能性がある。例えば、従来のFSRではBalancedモードが必要だったゲームでも、FSR 4.1ならPerformanceモードで十分な画質を維持できるかもしれない。この場合、画像再構成の計算負荷が増えたとしても、内部解像度を下げることによる負荷削減で相殺できる可能性がある。
GPUOpenの「Scaling modes」によると、FSRの標準的な拡大倍率はBalancedモードが縦横それぞれ1.7倍、Performanceモードが2.0倍に設定されている。2026年10月21日時点の標準値に基づき、出力解像度を固定して比較すると、内部で描画する画素数は次のようになる。
| モード | 縦横それぞれの拡大倍率 | 表示画素数に対する内部描画画素数 |
|---|---|---|
| Balanced | 1.7倍 | 約34.6% |
| Performance | 2.0倍 | 25% |
内部描画画素数の割合は、拡大倍率の2乗で100%を割ることで求められる。BalancedからPerformanceへ変更した場合の削減率は「[1−(1.7÷2.0)の2乗]×100=27.75%」となり、内部で描画する画素数は約27.8%減少する。これは標準倍率に基づく理論値であり、ゲーム側の動的解像度や描画サイズの整数への丸めなどは考慮していない。
ただし、描画画素数が約27.8%減ったからといって、フレームレートが同じ割合で向上するわけではない。CPU側の処理や、表示解像度で実行される各種処理の負荷は同じ割合で減少せず、アップスケーリングそのものにも計算時間が必要となる。GPUOpenも、入力解像度を下げると再構成処理は多少高速化するものの、その負荷は主に出力解像度に左右されると説明している。
それでも、FSR 4.1によって低い内部解像度でも十分な画質を維持できれば、ユーザーが選べる設定の幅は広がる。Tom's Hardwareも、アップスケーリングのモードを変更することで、新しい再構成処理による性能低下を補える可能性を指摘している。ただし、これは画質と速度のバランスを改善できる可能性を述べたものであり、同等の画質を維持できることや、今回のテストで性能低下を相殺できたことが実証されたわけではない。
実際に比較する場合は、まず同じアップスケーリングモードでFSRの新旧による画質とフレームレートの違いを測定し、次に内部解像度を下げた場合の変化を確認するとよい。これにより、再構成処理の負荷増加と、低解像度で描画することによる負荷削減を区別できる。静止画の鮮明さだけでなく、カメラを動かした際のちらつきや輪郭の安定性なども比較すれば、新しいFSRによって得られる画質上の利点を判断しやすくなる。
Ryzen搭載携帯機にも軽量モデルを投入、Xboxは近日対応
AMDは、Ryzen AI 9シリーズと一部のRyzen Z2シリーズ向けに、RX 6000シリーズとは別の、より効率的なFSR 4.1モデルを用意した。これは対象となるハードウェアの処理能力に合わせて設計されたもので、携帯ゲーミングPCや一般的なノートPCでも実用的な性能を確保することを狙っている。CPUとGPUを一つのチップに統合したAPUにも、それぞれの性能特性に応じた最適化を施すことで、機械学習ベースのアップスケーリングを利用できる機器を増やしている。
携帯ゲーミングPC向けでは、Ryzen AI Z2 Extreme、Ryzen Z2 Extreme、Ryzen Z2 Aが対象となる。また、Ryzen AI Maxシリーズも正式な対応製品に加わった。ただし、AMDはRyzen AI Maxに対しても同じ軽量モデルを使用するのかについては明らかにしていない。FSR 4.1という名称が共通でも、すべてのGPUやAPUで同じ機械学習モデルが動作するとは限らず、処理に必要な時間も異なる可能性がある。このため、RX 6900 XTで報告された約13%の性能低下を、そのまま携帯ゲーミングPCの性能予測に使うことはできない。
対応ドライバの提供状況にも注意が必要だ。AMD Software: Adrenalin Edition 26.10.1のリリースノートでは、Radeon RX 6000シリーズに加え、Ryzen AI Max 300/400シリーズ、Ryzen AI 9 300/400シリーズへの対応が新機能として記載されている。一方、AMD.comで配布される同ドライバは携帯ゲーミング機器をサポート対象に含んでおらず、端末メーカーが提供する専用ドライバを確認するよう案内している。対象となるZ2プロセッサーが発表に含まれていても、実際に使用している携帯機で直ちに利用できるとは限らないため、メーカーごとの更新状況を確認する必要がある。
Xbox Series X|Sについても、AMDは今後対応する方針を明らかにした。ただし、2026年10月20日時点では「近日対応」と案内されている段階で、具体的な提供日や対象ゲームは発表されていない。PC向けドライバが公開されたことと、Xboxで機能を利用できるようになることは別だ。コンソールにおける実際の画質や性能への影響については、対応ゲームへの実装後に評価する必要がある。
FSR 4.1を使えるゲームと、対応機能の制限
新しいFSR 4.1を利用するには、ゲーム側の対応状況も確認しなければならない。AMDの日本語公式FAQでは、機械学習ベースのFSR Upscalingを有効にする方法として、二つの経路を案内している。一つは、機械学習版のFSRが直接組み込まれたゲームで、ゲーム内の設定メニューから有効にする方法だ。もう一つは、FSR 3.1以降に対応したゲームで、AMD Softwareを通じてアップスケーリング用DLLを置き換え、機械学習版に切り替える方法である。
後者の場合は、ゲームを終了した状態でAMD Softwareの「Gaming」内にある「Graphics」設定を開き、FSR Upscalingを有効にする。その後、ゲーム側でもFSR 3.1を有効にし、希望する画質プリセットを選択する必要がある。つまり、新しいドライバをインストールしただけで、あらゆるゲームの映像が自動的にFSR 4.1へ切り替わるわけではない。実際に利用できるかどうかは、ゲームが対応するFSRのバージョンや、利用するGPU、ドライバの組み合わせによって決まる。
また、今回Radeon RX 6000シリーズや各種APUに対応が広がったのは、あくまでアップスケーリング機能である。中間フレームを生成する機械学習ベースのフレーム生成や、レイトレーシングの結果を再構成するレイ再生成まで、同時に対応したわけではない。AMDの公式対応表でも、これらのGPUやAPUについては「アップスケーリングのみ」と明確に区別している。FSR 4.1への対応を、関連するすべての機能が利用可能になったという意味に捉えないことが重要だ。
今回の対応拡大によって、旧世代GPUや携帯ゲーミングPCのユーザーも、機械学習による新しい画像再構成技術を試せるようになる。ただし、導入の価値は最高フレームレートだけで決まるものではない。同じゲームの同じ場面で画質と速度を比較し、携帯機では消費電力の設定もそろえたうえで、どの程度の改善が得られるかを確かめる必要がある。FSR 4.1によって、これまでより低い内部解像度でも満足できる画質を維持できるなら、GPUを買い替えずに画質と性能のバランスを改善できる可能性がある。
