AMDの2024年第2四半期決算は、半導体業界の急速な変化を如実に反映する結果となった。総収益58億3500万ドルという数字の裏には、AIブームによる恩恵と、ゲーム市場の成熟化による影響が色濃く表れている。この数字は前年同期比9%増、前四半期比7%増と一見順調な成長を示しているが、その内訳を見ると、AMDの事業構造が大きく変容していることがわかる物となっている。
売上の半分をデータセンター部門が占めるまでに
AMDの今期の成長の牽引役はデータセンター部門の躍進だ。同部門の売上は前年同期比115%増の28億3400万ドルと、過去最高を記録した。この驚異的な成長の主役となったのが、NVIDIAのH100に対抗するAI向けGPU「Instinct MI300X」である。AMDのCEO、Lisa Su氏は、MI300Xの売上が単一四半期で10億ドルを超えたことを明かし、市場の期待を上回る好調ぶりを示した。この結果を受けて、AMDは2024年通期のデータセンターGPU売上予想を45億ドル以上に引き上げ、AI市場での存在感を高める姿勢を鮮明にした。
一方で、かつてAMDの主力事業であったゲーム部門は苦戦を強いられているようだ。同部門の売上は6億4800万ドルと、前年同期比で59%も減少した。この急減の主因は、MicrosoftのXboxやSonyのPlayStation向けプロセッサの出荷減少にある。ゲーム機の新モデル発売から約4年が経過し、需要が一巡したことが背景だ。しかし、Su氏は同部門の今後について、Radeon 6000シリーズGPUの販売が前年比で増加したことを挙げ、PCゲーム市場での回復の兆しを強調している。
クライアントプロセッサ部門も好調で、売上は14億9200万ドルと前年同期比49%増を記録した。Ryzenプロセッサの堅調な販売が寄与しており、PC市場全体の回復傾向を裏付ける結果となった。
これらの業績変化により、AMDの事業構造は大きく変容している。データセンター部門の売上が全体の約半分を占めるようになり、AMDはNVIDIAと同様にAIチップ企業への転換を急速に進めている。Su氏は今後の展開について、「MI325XチップをAI性能でリードし、2025年にはMI350シリーズを投入する」と述べ、年間サイクルでの新製品投入を予告した。さらに、2026年にはMI400シリーズの投入も計画しており、AIチップ市場での競争力強化に向けた長期的な戦略を示した。
しかし、こうしためざましい成長があったとしても、NVIDIAとの差は依然として大きい。NVIDIAのデータセンター部門の四半期売上は226億ドルに達しており、AMDの約8倍の規模を誇る。この差を縮めるべく、AMDは供給体制の強化にも注力している。Su氏は「2025年まで供給は逼迫した状態が続く」と予想しつつも、供給量の段階的な増加を進めていく方針を示した。
AMDは今後、AIチップの供給拡大を進めながら、ゲーム部門の立て直しも図る必要がある。2024年第3四半期の売上予想は67億ドル(±3億ドル)で、前年同期比約16%増を見込んでいる。この予想には、ゲーム部門の「二桁減」が織り込まれており、データセンター部門とクライアント部門の成長がそれを補う形となっている。
また、AMDは次世代のRyzen AIプロセッサの展開も進めており、100以上の「プラットフォーム」がRyzen AI 300「Strix Point」チップを搭載して出荷される予定だ。これにより、AIの恩恵をPCユーザーにも広げる戦略を展開している。
AIブームの恩恵を受けつつも、ゲーム市場の変化に直面するAMD。その今後の戦略と業績の行方に、市場の注目が集まっている。半導体業界全体がAIシフトを加速する中、AMDがいかにしてバランスの取れた成長を実現していくか、そしてNVIDIAとの差をどこまで縮められるかが、今後の重要なポイントとなるだろう。
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