2024年第3四半期、AMDはデスクトップCPU市場でシェア28.7%に急成長を遂げ、モバイルCPUやサーバー分野でも着実に収益を拡大している。この急伸はIntelを筆頭とする競合他社への対抗力を強化し、今後の市場シェア争いにおいて重要な転換点となるかも知れない。
デスクトップCPU市場で28.7%のシェアを獲得、Ryzenシリーズが成長を牽引
市場調査結果を公表しているMercury Researchによると、AMDの躍進は特にデスクトップ事業でめざましい進展が見られたという。
AMDのデスクトップCPU市場シェアが28.7%に達したことは、近年の同社の躍進を象徴するものだ。この成長の主因は、最新の「Ryzen」シリーズが消費者と企業ユーザーの間で高い評価を得ている点にある。特に、コストパフォーマンスに優れたRyzen 5およびRyzen 7シリーズが、中価格帯から高価格帯の幅広いユーザー層を惹きつけている。Ryzenシリーズは、性能面でIntelの同価格帯製品に匹敵し、さらには消費電力や発熱性能の改善が顕著であることが、プロユーザーやゲーマー層の支持を集める一因となっている。
だが、それに加えた敵失も忘れてはならない。Intelが2022年に発売した「Raptor Lake」シリーズが一部の技術的問題や市場の批判を受けたことも、AMDのシェア増加に寄与したと考えられる。特に「Raptor Lake」の発熱問題が一部のユーザー間で懸念され、長時間の高負荷運用が要求される環境ではRyzenシリーズが好まれる傾向がある。この状況下で、AMDは積極的な価格戦略を採りつつ、パフォーマンスと信頼性を両立した製品として認知を広げ、信頼性重視の層へのアピールを強化した。この結果、同社はデスクトップ市場での存在感を高めており、今後の追加シェア獲得が見込まれる。
モバイルCPU市場:Ryzenシリーズの性能向上でノートPC市場にも進出
AMDはノートPC向けのモバイルCPU市場においても存在感を拡大している。特に「Ryzen 7000」シリーズが、性能と電力効率の両立を実現し、ゲーミングラップトップやクリエイター向けノートPC市場での需要を押し上げている。同シリーズの優れたマルチコア性能とバッテリー持続時間の最適化は、多くのOEM(Original Equipment Manufacturer:他社ブランドの製品を生産するメーカー)パートナーから支持を得ており、2024年の新製品ラインアップに採用される事例が増加している。
また、AMDのモバイルCPUが支持を集める背景には、コストパフォーマンスの高さがある。これまでIntelの独壇場だったノートPC市場でも、消費者が求める性能と価格のバランスにおいてRyzenが強みを発揮している。加えて、低消費電力であることから、熱処理に適した薄型・軽量ノートPCの製造が容易であり、これがバッテリー持続時間を求めるユーザー層からの評価を高めている要因である。こうした点が評価され、AMDはモバイル市場でのシェアを徐々に拡大しつつあり、今後もその成長が続く見通しだ。
サーバーCPU部門:EPYCシリーズがデータセンター市場で支持を獲得
サーバー向けCPU市場では、AMDの「EPYC」シリーズがデータセンター市場で急速に普及し、収益の大幅な増加を記録している。EPYCプロセッサは高性能なマルチコア性能を誇り、クラウドプロバイダーや企業ユーザーにとって魅力的な選択肢として注目を集めている。2024年第3四半期には、データセンター分野の収益が前年同期比で大幅に増加しており、これはサーバー業界全体の成長トレンドと共鳴している。
EPYCシリーズの最大の特徴は、エネルギー効率の高さとスケーラビリティである。これにより、運用コストを削減しつつ、システム拡張に対応できる点が、多くのデータセンター運営者やエンタープライズユーザーから評価されている。また、AIやビッグデータ処理など、負荷の高いワークロードを処理する環境においても、EPYCの高いスループット性能が有効であり、これがインテルのサーバーCPUとの競争において強みとなっている。
Xenospectrum’s Take
AMDの2024年第3四半期における業績は、デスクトップ、モバイル、サーバー各市場での成長がもたらしたものであり、特にRyzenおよびEPYCシリーズの競争力が浮き彫りになっている。デスクトップ市場では、IntelのRaptor Lakeに関する問題も一因となり、AMDがシェアを急速に拡大する結果となったが、ユーザーのパフォーマンスと信頼性への関心が高まる中で、Ryzenがその需要に応えられる点も見逃せない。
モバイルCPU市場においては、Intelの強い優位性が依然として存在するものの、コスト効率と性能の両立を求める層にはRyzenが魅力的な選択肢として浮上している。また、サーバー分野では、EPYCシリーズが持つ優れたエネルギー効率とマルチコア性能が市場でのシェア拡大を後押ししており、クラウド・エンタープライズのワークロード増加に伴い、今後も成長が期待される。
今後の課題として、Intelが製品の改良を図り、信頼性向上と消費電力低減に成功した場合、AMDのシェア拡大がどの程度維持されるかが焦点となるだろう。AMDとしては、引き続きRyzenおよびEPYCの改良を重ね、消費者と企業ユーザー双方のニーズに応えるための革新を進める必要がある。AMDの今後の成長には、市場の変化に対する柔軟な対応と継続的な技術向上が鍵となる。
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