AMDが2025年初頭に投入予定の次世代3D V-Cache搭載プロセッサ「Ryzen 9 9950X3D」および「Ryzen 9 9900X3D」において、従来モデルで見られた性能制限を排除した設計を採用することが明らかになった。信頼性の高いリーカーのHXL氏による情報では、これらの新型プロセッサは非X3Dモデルと同等のクロック周波数を実現するという。
革新的な設計変更がもたらす性能向上
AMDの新しいZen 5アーキテクチャに基づく9000シリーズX3Dプロセッサは、3D V-Cache技術の実装方法を根本から見直している。従来のRyzen 7000シリーズX3Dプロセッサでは、3D V-CacheをCCD(Core Complex Die)の上部に積層する設計を採用していた。この構造では、追加された3D V-Cacheが熱伝導の障壁となり、効率的な放熱を妨げていた。その結果、Ryzen 9 7950X3Dなどの従来モデルでは、ベースクロックを300MHz程度引き下げることを余儀なくされていた。
しかし9000シリーズでは、この構造を完全に刷新し、3D V-CacheをCCDの下部に配置する革新的な設計を採用している。CCDを直接ヒートスプレッダーに接触させることで、熱伝導効率を大幅に改善することに成功した。具体的には、CCDからSTIM(Solder Thermal Interface Material)、そしてIHS(Integrated Heat Spreader)への熱伝導経路が最短化され、余分な導熱シリコンの層を排除することができた。この結果、Ryzen 9 9950X3Dは非X3D版と同じ4.3GHzのベースクロックと5.7GHzのブーストクロックを実現できる見込みとなった。
さらに注目すべき点として、この新設計により、3D V-Cache搭載CCDの熱特性が通常のZen 5 CCDとほぼ同等のレベルまで改善されている。これは、従来のX3Dモデルで必要とされていたような厳格な熱設計上の制約から解放されたことを意味する。その結果、プロセッサはより柔軟な動作周波数の制御が可能となり、ワークロードに応じて最適なパフォーマンスを引き出せるようになった。Cinebench R23のベンチマーク結果が示すように、この設計変更は特にマルチスレッド性能において大きな進展をもたらしている。
キャッシュ構成と性能特性
Ryzen 9 9950X3Dのキャッシュ構成は、AMDの高度なメモリアーキテクチャの集大成とも言える設計を採用している。このプロセッサは、デュアルCCD構成を基本としながら、そのうちの1基のCCDにのみ3D V-Cacheを搭載する非対称な設計となっている。具体的には、標準的な64MBのL3キャッシュ(各CCD上に32MB)に加えて、一方のCCDに追加の64MB L3キャッシュを積層する構成だ。この結果、合計で128MBという大容量のL3キャッシュを実現している。
この非対称なキャッシュ構成は、ワークロードに応じた最適化を可能にする。AMDは、オペレーティングシステムのスケジューラー管理を通じて、ゲーミングワークロードを3D V-Cache搭載のCCDに優先的に割り当てる仕組みを実装している。これは前世代のRyzen 9 7950X3Dで採用された手法を踏襲したものだが、9950X3Dでは両CCDが同等のクロック周波数で動作可能となったことで、より柔軟なワークロード配分が可能になっている。
性能面では、業界標準のベンチマークソフトウェアであるCinebench R23における検証結果が注目に値する。HXL氏によると、9950X3Dは非X3D版である9950Xと同等のシングルスレッドおよびマルチスレッド性能を示している。これは特筆すべき進展だ。というのも、前世代のRyzen 9 7950X3Dでは、3D V-Cache搭載CCDのクロック周波数制限により、非X3D版と比較して若干の性能低下が見られたからである。
市場投入時期と関連製品
両プロセッサは2025年のCES(Consumer Electronics Show)での発表が予定されている。同イベントではFSR 4テクノロジーやRadeon RX 9070 XTなども同時に発表される見込みだ。12コア24スレッド構成のRyzen 9 9900X3Dも、9950X3Dと同様の設計思想に基づいて開発されている。
Xenospectrum’s Take
今回の設計変更は、AMDが長年抱えていたX3Dシリーズの弱点を克服する画期的な進展だ。ゲーミング性能と生産性を両立させる新アプローチは、デスクトップCPU市場に新たな価値基準を創出する可能性を秘めている。ただし、シングルCCD構成での3D V-Cache採用は依然としてスケジューリングの課題を残しており、OSレベルでの最適化が実性能を左右する重要な要素となるだろう。Intelの対抗製品も控える中、価格設定と実際の冷却性能が市場での成功を決定づける鍵となりそうだ。
Sources
コメント