App Storeの審査に数週間かかるケースがあるとして、複数の中小ゲーム開発者が不満を訴えている。Mobilegamer.bizは2026年10月20日、開発者への匿名取材を基に審査の遅延を報じ、22日にはThe Registerも長期の審査待ちが発生している問題を取り上げた。一方、AppleはMobilegamer.bizの取材に対し、既存アプリの更新を優先していると説明し、全アプリの平均審査時間は1.5日だとしている。数週間待たされている開発者がいることと、全体の平均審査時間が短いことは必ずしも矛盾しない。問題は、新規アプリの公開を予定する開発者が、軽微なアップデートと同じ速さで審査が終わると見込めるかどうかだ。

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App Storeの審査が数週間待ちに、影響は開発者によって異なる

Mobilegamer.bizの取材に応じた開発者によると、新規アプリの公開だけでなく、既存アプリのアップデートでも審査に数週間かかる場合があるという。取材対象となったスタジオは、Appleとの関係が悪化することを懸念して匿名を希望したとされる。審査の長期化によってゲームのリリース予定や開発スケジュールが狂い、追加の費用負担も生じているという訴えだ。

ただし、すべての開発者が同じ問題に直面しているわけではない。Mobilegamer.bizが取材した中規模スタジオの一つは、約5年間配信を続けているゲームのアップデートについて、審査時間に目立った変化は感じていないと回答している。このことから、App Storeの審査が一律に遅くなっているとは考えにくい。また、今回の匿名取材だけでは、全体の何割のアプリで審査が長期化しているのかも判断できない。

The Registerも、Appleの開発者フォーラムで長期間の審査待ちを訴える投稿が相次いでいると報じた。ただし、App Store Connectで表示される「審査待ち」と「審査中」は、異なる工程を指している。Appleの公式ヘルプによると、前者は提出物が受理されたものの、まだ審査が始まっていない状態であり、後者は実際に審査が進められている状態だ。そのため、提出から公開までに何日かかったという情報だけでは、審査開始前の待機と実際の審査のどちらに時間を要したのかは分からない。

今回の報道から確認できるのは、長期間の審査待ちに直面している開発者がいる一方、その影響がすべての開発者に同じように及んでいるわけではないということだ。これはアプリの利用者にとっても無関係ではない。開発者が不具合を修正してアップデートを完成させても、Appleの審査を通過するまでは修正版をApp Storeで配信できないためだ。審査の遅延は、新しいゲームの公開だけでなく、不具合修正が利用者に届くまでの時間にも影響する可能性がある。

Appleは平均1.5日と説明、数週間の審査待ちと矛盾するのか

AppleはMobilegamer.bizに対し、取材時点の直近12週間において、週平均37万8,000件の提出物を処理したと説明している。全アプリの平均審査時間は1.5日で、軽微なアップデートに限れば平均14時間だったという。一方で、一部の新規アプリについては追加の精査が必要となり、通常より長い時間がかかる場合があることも認めている。

膨大な提出件数に対応するため、Appleは既存アプリのアップデートを優先するとともに、審査工程の自動化を拡大しているという。また、不正行為の検出を強化し、指摘された問題を解決しないまま繰り返しアプリを提出する行為への対策も進めている。ただし、Appleが説明する「自動化の拡大」は、審査全体をAIに任せているという意味ではない。どの工程に、どのような自動化技術を導入しているのかについては、今回の説明だけでは明らかになっていない。

Appleの公式App Reviewページでは、通常、提出物の少なくとも50%を24時間未満、90%を48時間未満で審査すると説明している。ただし、これは一定の時間内に審査される提出物の割合であり、平均審査時間とは異なる指標だ。Appleが示した数値を整理すると、次のようになる。

Appleが示した数値 対象・指標 読み取れることと限界
週平均37万8,000件 取材時点の直近12週間に処理した提出件数 審査の処理量を示すもので、審査待ちの件数ではない
平均1.5日 Mobilegamer.bizに説明した全アプリの平均審査時間 新規アプリだけの平均時間ではなく、審査完了までの期限を保証するものでもない
平均14時間 軽微なアップデートの平均審査時間 新規公開や大規模な変更を伴う更新には、そのまま当てはめられない
24時間未満で少なくとも50%、48時間未満で90% Appleの公式ページに記載された通常の時間内審査割合 すべての提出物が48時間以内に審査されるという意味ではない

これらの数字を比較する際には、対象となるアプリや指標の違いに注意が必要だ。週平均の処理件数と平均審査時間は、AppleがMobilegamer.bizに説明した数値であり、第三者が独立して測定したものではない。また、同誌の記事では平均時間の測定開始・終了時点や、新規アプリだけを対象とした審査時間の分布までは示されていない。全体の平均値が1.5日でも、一部のアプリで数週間の待機が発生することは十分にあり得る。

したがって、Appleが示す平均審査時間が短いことを理由に、開発者による長期待機の報告を否定することはできない。反対に、数週間待たされた事例があるからといって、App Store全体の審査に同じだけの時間がかかるようになったとも言い切れない。特にAppleが既存アプリのアップデートを優先しているのであれば、全体の平均値が短くても、新規アプリの審査時間が同じ傾向にあるとは限らない。新しいゲームの公開日を計画するうえでは、新規アプリに絞った審査時間のデータが重要になる。

なお、審査遅延の背景として、AIを使って開発されたアプリの増加を指摘する報道もある。しかし、AppleがMobilegamer.bizに示した説明は、AI製アプリの増加を遅延の原因と認定したものではない。提出件数の多さと、個々のアプリの審査が長引く理由は分けて考える必要がある。

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再提出がかえって審査を遅らせる場合も、開発者が取るべき対応

Appleの公式ヘルプでは、審査履歴の少ないアプリや、許認可・契約関連の資料を確認する必要がある提出物について、通常より審査に時間がかかる場合があると説明している。新しい機能や複雑な問題の確認が必要な場合も同様だ。ただし、これらは審査が長期化し得る一般的な条件であり、今回の報道で取り上げられた開発者が、実際にどの理由で待たされているかが判明したわけではない。

開発者が審査中の問題に対応する際には、Appleからの問い合わせに返信することと、アプリを修正して再提出することを明確に区別する必要がある。例えば、Appleから追加情報を求められただけで、ほかに修正すべき問題がなければ、App Store Connectのメッセージに直接返信すればよい。デモ用アカウントを有効にするなど、アプリのプログラムを変更せずに対応できる場合も、必要な調整を済ませたうえで返信するよう案内されている。

こうした場合にアプリを再提出すると、新たな審査が始まることになる。さらに、再提出後は以前の審査に関するメッセージにApp Review側が返信できなくなるため、追加情報を伝えるだけのつもりで再提出すると、かえってやり取りが途切れる可能性がある。一方、配布するプログラム自体に問題があり、修正が必要な場合は、新しいビルドをアップロードして改めて審査に提出することになる。Appleは、指摘された問題を解決しないまま繰り返し提出すると、審査の遅延や同じ問題による却下につながると説明している。

重大なバグの修正や、特定のイベントに合わせた公開など、急いで審査を終える必要がある場合には、迅速審査を依頼する制度も用意されている。ただし、対象のアプリがすでに審査へ提出されており、必要な情報やデモ用アカウントなどが準備されていることが前提となる。Appleは審査能力と申請状況が許す範囲で対応するとしており、依頼すれば必ず優先的に審査されるわけではない。迅速審査の申請は、即時の承認や特定の期日までの審査完了を保証するものではない。

また、バグ修正を目的としたアップデートの審査中に別の問題が見つかった場合、Appleがその修正を次回の提出まで延期する選択肢を提示することもある。ただし、法的な問題や安全上の懸念がないことなどが条件となる。この対応を受け入れる場合は、App Store Connectで提示されたメッセージに返信する必要がある。あくまで追加の問題への対応を次回に持ち越すための手続きであり、審査の順番を早める迅速審査とは異なる。

今回の問題が示しているのは、App Storeの平均審査時間だけでは、新規アプリの公開に伴う不確実性を十分に把握できないということだ。特に既存アプリの軽微なアップデートと新規公開では、必要な確認や審査の優先度が異なる可能性があり、同じ平均時間を前提に公開スケジュールを組むのは適切ではない。Appleが新規アプリと既存アプリの更新を分けて審査時間の分布を公表すれば、開発者は長期間の待機が発生する可能性をより正確に見積もれるようになる。今後は、Appleが説明する効率化の効果だけでなく、審査が長期化するケースをどこまで減らせるかが重要になるだろう。