AMDが先日Computexにて発表した、コードネーム「Strix Point」こと「Ryzen AI 300」ファミリーは、AI PC時代に向けたNPUを備えた全く新たなノートPC向けAPUであると同時に、新たなCPUアーキテクチャ「Zen 5」を備えた点でも期待の新星だ。その詳細は別記事に譲るとして、ユーザーとしては最も気になるのは実際の性能がどうなるのかだ。
今回発売前ではあるが、「Ryzen AI 9 HX 370」のGeekbench 6でのベンチマークテスト結果が判明した。まだ発売前の製品ということで、今回リークされた物はあくまでも発売前のデータではあるが、前モデルと比較して大きな性能向上が確認出来るないようとなっている。
Ryzen AI 9 HX 370は前モデルと比較して、CPUは20%、GPUは40%の性能向上
「Ryzen AI 9 HX 370」は、今回発表された2つのAPUの内の上位のモデルとなる。下位モデルの「Ryzen AI 9 365」とは、ブーストクロックやCPUコア数、GPUのCU(Compute Unit)数で差が付けられているのもとなる。
Ryzen AI 9 HX 370は、Zen 5コアが4つ、省電力のZen 5Cコアが8つで構成された12コア24スレッドのCPUで、最大5.1GHzのブーストクロックで動作し、36MBのキャッシュ(24MB L3 + 12MB L2)と16個のCU(Compute Unit)(1024コア)を備えたRadeon 890M iGPUで構成されている。
構成だけで比較すると、前モデルのフラッグシップ「Ryzen 9 8945HS」に比べて、コア/スレッド数が50%、コンピュート・ユニット数が33.3%増えている。これがどのような結果をもたらすのだろうか。
Geekbench 6のベンチマークテストは以下の通りとなる。CPU名が「AMD Ryzen AI 9 HX 170」となっているが、これはAMDがIntelがLunar Lakeを「Core Ultra 200V」と名付ける事が判明した事から、ネーミングの面でも上回る印象を与えようと“300”と言う数字に変更したが関係してそうだ。
Ryzen AI 9 HX 370のGeekbench 6テスト結果は、シングルコア・スコアが「2544」ポイント、マルチコア・スコアが「14158」と、Ryzen 9 8945HSのシングルコア「2380」、マルチコア「11775」と比較して、シングルコアで6.8%、マルチコアで20%の向上と、大きな伸びを見せている。
Ryzen AI 9 HX 370のGeekbench 5のスコアは、シングルコア・スコアが「1847」ポイント、マルチコア・スコアが「14316」だ。
特筆すべきは、このテスト数値がサイレント電源プランを使用して行われ、最高クロック周波数が3,670Mhzで達成されている点だ。Ryzen AI 9 HX 370はブーストクロック5.1GHzで動作可能であり、電力消費を抑えた状態で実行されたテストと言う事で、実際の製品版が登場してテストされれば、最終的には更に好調なパフォーマンスが期待出来そうだ。
また、グラフィックテストについては以下の通りだ。
Ryzen AI 9 HX 370のRadeon 890M GPUは、OpenCLスコアで「41995」ポイントを記録しており、 AMD Ryzen 9 8945HSに搭載されているRadeon 780Mの「30151」ポイントと比較して、40%近い大幅な向上を見せている。これは、ディスクリートGPUのRTX 2050にも肉薄するものだ。
ちなみに、Ryzen AI 300シリーズチップは、これまでの固定TDPが廃止され、15Wから54WまでメーカーがTDPターゲットを決定して出荷することが出来る。そのため、このベンチマークがどのTDPで実行されたのかもまた重要だ。Ryzen AI 9 HX 370はデフォルトTDPが28Wだが、 Ryzen 9 8945HSは45WのTDPとなっており、もし同じTDP同士の比較だった場合これは更に印象的な結果となるだろう。
Ryzen AI 300チップを搭載したノートPCは2024年7月から発売の予定だ。ただし、AMDとIntelのAI PCは条件を「Copilot+ PC」としての条件を満たすにもかかわらず、発売当初はCopilot+ PC専用のAI機能「Recall」や「Automatic Super Resolution」などの機能が利用できないことが伝えられている。
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