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Bluetooth 6.1が発表、デバイスのプライバシー保護機能とバッテリー効率が改善し利便性がアップ

Y Kobayashi

2025年5月12日

Bluetooth SIGが、Bluetoothの最新のコア仕様「Bluetooth® Core 6.1」を発表した。 今回のアップデートは、一見すると地味ながら、私たちのデジタルライフにおけるプライバシー保護とバッテリー効率という、非常に重要な側面を強化するものだ。一体何が新しくなり、私たちのスマートフォンやイヤホンにどんな未来をもたらすのだろうか。

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Bluetoothが抱えるプライバシーの課題

Bluetoothは、1990年代後半の登場以来、ワイヤレスヘッドセットから始まり、今やスマートウォッチ、フィットネストラッカー、IoTデバイスに至るまで、私たちの身の回りのあらゆる機器を繋ぐ、なくてはならない技術へと成長した。しかし、その利便性の裏で、常にプライバシーに関する懸念が指摘されてきた。

Bluetoothデバイスは、通信相手を見つけるために常に電波を発信している。この電波には、デバイスを識別するための情報が含まれており、悪意のある第三者がこれを傍受することで、特定のデバイス、ひいてはその持ち主の行動を追跡できてしまう可能性があったのだ。

これまでの対策として、Bluetoothデバイスは「Resolvable Private Address(RPA)」と呼ばれる、一時的に使用されるランダムなアドレスを生成し、定期的に変更することで、固定のMACアドレスを秘匿し、追跡を困難にする仕組みを持っていた。 しかし、このRPAの更新間隔が、例えば「15分ごと」といった具合に固定的な場合、その予測可能性が悪用され、時間をかけて照合することで、結局はデバイスが特定されてしまうという課題が残っていたのである。

新機能「Randomized RPA Updates」とは何か?追跡をより困難にする巧妙な一手

今回のBluetooth Core 6.1における最大の目玉は、このプライバシー問題を解決するための新機能「Bluetooth® Randomized RPA (resolvable private address) Updates」の導入である。 これは、文字通りRPAの更新タイミングを「ランダム化」するということだ。

具体的には、これまで固定だったRPAの更新間隔が、デフォルトでは8分から15分の間でランダムに決定されるようになる。 さらに、デバイスメーカーは必要に応じて、この更新間隔を1秒から1時間の範囲でカスタム設定することも可能だ。 このランダムなタイミングでRPAを更新するために、コントローラーはNIST(アメリカ国立標準技術研究所)承認の乱数生成器を使用するとされており、その信頼性も担保されている。

これにより、第三者がRPAの変更タイミングを予測することが格段に困難になり、長期間にわたるデバイスの追跡や、行動パターンの相関分析が大幅に難しくなることが期待される。 まさに、プライバシー保護に向けた巧妙かつ効果的な一手と言えるだろう。

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バッテリーの長持ちも実現か?省電力化への嬉しい副作用

Randomized RPA Updates」は、プライバシー保護だけでなく、もう一つ嬉しい「副作用」をもたらす。それが、デバイスの省電力化である。

従来、RPAの更新処理は、デバイスのメインCPUが担当していた。しかしBluetooth 6.1では、このアドレス変更操作をBluetoothコントローラー(チップ)自体にオフロードできるようになる。 つまり、Bluetoothチップが自律的にRPAの生成と更新を行うため、その都度メインCPUを起動させる必要がなくなるのだ。

メインCPUがスリープ状態を維持できる時間が長くなるほど、バッテリー消費は抑えられる。特に、フィットネスバンドやワイヤレスイヤホン、各種IoTセンサーといった、バッテリー容量が限られる小型デバイスにとっては、このCPUサイクルの節約は無視できないメリットとなるだろう。 Bluetooth SIGは具体的な省電力効果の数値を公表していないが、ハードウェアの設計によっては、体感できるレベルでのバッテリー持ち改善に繋がる可能性も秘めている。

私たちのデバイスはいつ賢くなるのか ― 普及までのロードマップ

さて、この魅力的なBluetooth 6.1は、いつ頃私たちのデバイスに搭載されるのだろうか。Bluetooth SIGによる仕様発表は2025年5月だが、実際にこの技術を搭載したチップが登場し、製品として市場に出回るまでには、もう少し時間が必要である。

業界の観測では、Bluetooth 6.1に対応したチップの第一陣が登場するのは、早くても2026年以降と見られている。 その後、スマートフォンやPC、各種アクセサリーメーカーがこれらのチップを採用し、製品化を進めることになるだろう。早ければ2025年秋にリリースが噂されるiPhone 17のラインナップが、Bluetooth 6.0、あるいはこの6.1アップデートをサポートする可能性もありそうだ。。

また、一部の既存デバイスでは、ファームウェアのアップデートによってBluetooth 6.1の新機能に対応できる可能性もあるが、これはデバイスのハードウェア設計に依存するため、限定的と考えられる。 残念ながら、Bluetooth 6.0以前の規格にしか対応していない古いデバイスは、この新しいプライバシー保護機能の恩恵を受けることは難しく、潜在的な脆弱性が残る可能性がある点には注意が必要だ。

Bluetooth SIGは、コア仕様を年2回のペースで更新していく方針を明らかにしており、次の「Bluetooth 6.2」は2025年末に登場予定とのことだ。 この迅速なアップデートサイクルにより、Bluetooth技術は今後も継続的に進化していくことであろう。

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「バージョン6.1」より「何ができるか」が重要 ― Bluetooth SIGのメッセージ

興味深いのは、Bluetooth SIGがデバイスメーカーに対し、「Bluetooth Core 6.1対応」といったバージョン番号を製品パッケージやマーケティング資料で前面に出すことを避けるよう推奨している点だ。 その代わりに、製品が提供する具体的な機能、例えば「プライバシー保護の強化」や「バッテリー寿命の向上」といった、ユーザーにとって直接的なメリットを明確に伝えることを推奨しているのだ。

これは、技術仕様の複雑なバージョン番号よりも、ユーザーが実際に享受できる価値を分かりやすく伝えることで、より良いコミュニケーションを目指すという、Bluetooth SIGの賢明な判断と言えるだろう。

今回のBluetooth Core 6.1は、決して派手な機能追加ではない。しかし、日々高まるプライバシーへの意識と、モバイルデバイスのさらなる省電力化という現代のニーズに応える、非常に堅実で重要な進化である。この「見えない進化」が、私たちのワイヤレス体験をより安全で快適なものにしてくれることを期待したい。


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「Bluetooth 6.1が発表、デバイスのプライバシー保護機能とバッテリー効率が改善し利便性がアップ」への1件のフィードバック

  1. 最近、隣の部屋から飛んでくるBluertoothの電波が、わしの腹に刺さって仕方がないんぢゃが。

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