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中国UNIS、世界最速クラスのPCIe 5.0 SSDを発表:DRAMレスで最大14,900MB/sの驚異的速度を実現

Y Kobayashi

2025年3月30日

中国の清華紫光(Tsinghua Unigroup)の子会社である中国のUNIS Flash Memory(紫光閃存)が、コンシューマー向けPCIe 5.0 NVMe SSDの新製品「UNIS SSD S5」および「UNIS SSD S5 Ultra」を発表した。特に「S5」モデルは、DRAMキャッシュを搭載しない設計ながら、最大14,900MB/sという驚異的なシーケンシャルリード速度を公称しており、既存の最速クラス製品であるSamsung 9100 ProやCrucial T705などの競合製品を上回る性能を実現している。

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中国UNIS、PCIe 5.0 SSD市場への挑戦状

UNISが今回発表した「S5」および「S5 Ultra」は、いずれもM.2 2280フォームファクタを採用し、最新のPCIe 5.0 x4インターフェースに対応するNVMe SSDだ。

搭載されるNANDフラッシュメモリは「高品質な3D TLC NAND」とされており、両モデルともに5年間のメーカー保証が付帯する。保証期間内の総書き込み容量(TBW: Terabytes Written)は、容量1TBあたり600TBWと標準的な耐久性を持つ。

また、高速なPCIe 5.0 SSDの発熱に対応するため、厚さ1mmのグラフェン製ヒートシンクが標準で付属する。これにより、高負荷な書き込み時でもドライブ全体の温度を78℃未満に抑えるとしているが、実際の運用においてはマザーボード標準のヒートシンクや、より冷却性能の高いサードパーティ製ヒートシンクの利用が推奨されるだろう。

驚異のDRAMレス性能:UNIS S5 詳細スペック

今回の発表で特に注目を集めているのが、ベースモデルとなる「UNIS S5」である。このSSDは、近年の高性能SSDでは一般的となっている外付けDRAMキャッシュを搭載しない、いわゆる「DRAMレス」設計を採用している点が最大の特徴だ。

UNIS S5 スペック概要

  • インターフェース: PCIe 5.0 x4 (NVMe)
  • フォームファクタ: M.2 2280 (シングルサイドPCB)
  • コントローラー: 12nmプロセス メーカー不明
  • DRAMキャッシュ: なし (HMB対応)
  • NAND: 3D TLC NAND
  • シーケンシャルリード: 最大 14,900 MB/s
  • シーケンシャルライト: 最大 12,900 MB/s
  • ランダムリード: 最大 1,800K IOPS
  • ランダムライト: 最大 1,700K IOPS
  • 容量: 1TB, 2TB
  • 冷却: 1mm グラフェンヒートシンク付属
  • 保証: 5年間 (1TBあたり600TBW)

通常、DRAMレス SSDはコストを抑えられる反面、特にランダムアクセス性能や高負荷時の持続性能においてDRAM搭載モデルに劣る傾向がある。しかし、UNIS S5はHMB (Host Memory Buffer) 技術を活用することで、この弱点を克服しようとしている。HMBは、PCのメインメモリの一部をSSDのキャッシュ領域として借用する技術であり、近年のNVMe SSDでは広く採用されている。

驚くべきは、その公称スペックだ。シーケンシャルリードは最大14,900MB/s、ライトは最大12,900MB/sに達し、ランダムアクセス性能もリード1,800K IOPS、ライト1,700K IOPSと、DRAMレス設計でありながら現行のDRAM搭載ハイエンドPCIe 5.0 SSDに匹敵、あるいは部分的に凌駕する数値を叩き出している。

ITHomeの情報によれば、この性能は既存のDRAMレス向けPCIe 5.0コントローラーとして知られるPhison PS5031-E31Tなどでは達成困難であり、UNISが独自開発、あるいは未発表の高性能コントローラーを採用している可能性が示唆されている。この12nmプロセスとされるコントローラーの詳細は不明だが、DRAMレス SSDの性能限界を押し上げる存在となるかもしれない。

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DRAM搭載の安定志向:UNIS S5 Ultra 詳細スペック

一方、「UNIS S5 Ultra」は、よりハイエンドなユーザーや、持続的な高性能が求められるワークロードを想定したモデルと位置づけられる。こちらは外付けのDRAMキャッシュを搭載しており、基板設計も両面実装(ダブルサイドPCB)となっている。

UNIS S5 Ultra スペック概要

  • インターフェース: PCIe 5.0 x4 (NVMe)
  • フォームファクタ: M.2 2280 (ダブルサイドPCB)
  • コントローラー: 6nmプロセス メーカー不明 (Silicon Motion SM2508等の可能性)
  • DRAMキャッシュ: あり (外付け)
  • NAND: 3D TLC NAND
  • シーケンシャルリード: 最大 14,200 MB/s
  • シーケンシャルライト: 最大 13,400 MB/s
  • ランダムリード: 最大 1,700K IOPS
  • ランダムライト: 最大 1,600K IOPS
  • 容量: 2TB, 4TB
  • 冷却: 1mm グラフェンヒートシンク付属
  • 保証: 5年間 (1TBあたり600TBW)

興味深いことに、S5 Ultraの公称スペックは、シーケンシャルリード(14,200MB/s)とランダムアクセス性能(リード1,700K IOPS、ライト1,600K IOPS)において、ベースモデルのS5を下回っている。一方で、シーケンシャルライト性能は13,400MB/sとS5よりも高速である。

このスペックの逆転現象は、両モデルの設計思想の違いを反映している可能性がある。S5は瞬間的な最大性能、特にリード性能を追求しているのに対し、S5 UltraはDRAMキャッシュの恩恵により、より安定した書き込み性能や、高負荷が連続するような状況(例:大容量ファイルのコピー、ビデオ編集、データベース処理など)でのパフォーマンス維持に優れている可能性があり、生産性向上を目的としたマシンに適しているだろう。

S5 Ultraに搭載されるコントローラーは、より微細な6nmプロセスで製造されているとされ、Micron 4600 SSDなどにも採用されているSilicon Motion(慧栄)のSM2508や、Phison(群聯)のPS5028-E28といった既存の高性能コントローラーである可能性を指摘されている。

容量ラインナップは2TBと4TBのみであり、比較的大容量を求めるユーザーがターゲットとなる。

スペック比較:S5 vs S5 Ultra、そして市場の猛者たち

ここで、UNIS S5、S5 Ultra、そして現在のPCIe 5.0 SSD市場をリードする製品のスペックを比較してみよう。

モデル名コントローラー (プロセス)DRAMシーケンシャル リード (GB/s)シーケンシャル ライト (GB/s)ランダム リード (K IOPS)ランダム ライト (K IOPS)容量 (TB)
UNIS S5不明 (12nm)なし14.912.91,8001,7001, 2
UNIS S5 Ultra不明 (6nm, SM2508等?)あり14.213.41,7001,6002, 4
Samsung 9100 ProSamsung Presto (不明)あり14.813.42,2002,600(OEM向け?)
Crucial T705Phison E26 (不明)あり14.512.71,5501,8001, 2, 4
Micron 4600Phison E26 (不明)あり(情報なし)(情報なし)>2,000>2,000(OEM向け?)

表中のスペックは各社公称値に基づく。太字は比較対象内で最も高い数値(UNIS製品間、および主要競合製品との比較)。

表から明らかなように、UNIS S5の公称シーケンシャルリード速度14.9GB/sは、Samsung 9100 Pro (14.8GB/s) や Crucial T705 (14.5GB/s) を上回り、現時点で発表されているコンシューマー向けM.2 SSDとしては最速となる。ランダムリード性能も1,800K IOPSと非常に高い。

一方で、ランダムライト性能ではSamsung 9100 Pro (2,600K IOPS) やMicron 4600 (>2,000K IOPS) が頭一つ抜けており、UNIS S5/S5 Ultra (1,700K/1,600K IOPS) やCrucial T705 (1,800K IOPS) はそれに次ぐ形となる。

S5 Ultraのシーケンシャルライト性能13.4GB/sはSamsung 9100 Proと同等であり、S5 (12.9GB/s) やCrucial T705 (12.7GB/s) を上回っている。

この比較からも、S5がリード性能とランダムリード性能に特化し、S5 Ultraがライト性能と(おそらくは)持続性能に強みを持つという、異なる性格付けがなされていることがうかがえる。

技術的背景:謎多きコントローラーとHMBの可能性

UNIS S5が搭載するとされる12nmプロセスのコントローラーは、依然として多くの謎に包まれている。DRAMレス設計で14.9GB/sという速度を実現するためには、NANDフラッシュメモリとのインターフェース速度、エラー訂正能力、そしてHMBの実装効率など、コントローラーアーキテクチャ全体で高度な技術が投入されている必要がある。これがUNISの完全自社開発品なのか、あるいは他のコントローラーベンダーとの協業によるカスタム品なのかは現時点では不明だ。

PCIe 5.0世代におけるHMB技術の進化も、S5の高性能を支える要因の一つと考えられる。より高速なPCIeバスとCPU性能の向上により、メインメモリへのアクセス遅延の影響が相対的に低減し、DRAM-lessでも高性能を引き出しやすくなっている可能性がある。

一方、S5 Ultraの6nmコントローラーがSilicon Motion SM2508など既存のチップである場合、性能特性はある程度予測可能だが、UNISがファームウェアのチューニングなどで独自の味付けを加えている可能性もある。

冷却に関する注意点

PCIe 5.0 SSDは、その高速性ゆえに消費電力と発熱が大きいという課題を抱えている。UNIS S5/S5 Ultraには1mm厚のグラフェンヒートシンクが付属するが、これは最低限の冷却策と考えるべきだろう。

特にS5のようなDRAMレスモデルでは、コントローラーが高負荷時にNANDフラッシュとホスト(CPU/メモリ)の間で頻繁なデータ転送を行う必要があり、発熱が大きくなる傾向がある。公称スペック通りの性能を安定して引き出すためには、マザーボードに付属する大型ヒートシンクや、ファンを搭載したアクティブクーラーなど、より強力な冷却ソリューションの導入を検討するのが賢明だ。

市場へのインパクトと今後の展望

UNIS S5およびS5 Ultraの登場は、PCIe 5.0 SSD市場、特にハイエンドセグメントにおける競争をさらに激化させる可能性を秘めている。中国メーカーが、公称スペックとはいえ、世界最速クラスの性能を持つ製品を投入してきたことは注目に値する。

特にUNIS S5は、その高性能とDRAMレスによってコスト競争力を両立できれば、市場に大きな影響を与える破壊的な存在となり得る。もしアグレッシブな価格設定で登場すれば、既存のハイエンドSSDにとって強力なライバルとなるだろう。

しかしながら、現時点では価格や具体的な発売時期、そして日本を含むグローバル市場での展開については明らかにされていない。まずは中国国内のECサイトでの販売が開始される見込みだ。

最も重要なのは、これらの公称スペックが実際の使用環境でどの程度再現されるかである。メーカー発表の数値は、特定の条件下での最大値であることが多く、実際のパフォーマンスは使用するシステム構成やワークロードによって変動する。信頼できる独立した第三者によるレビューとベンチマークテストの結果が待たれるところだ。

UNIS S5/S5 Ultraは、PCIe 5.0 SSDの性能競争における新たなマイルストーンとなる可能性を秘めた興味深い製品だ。今後の続報、特に価格と実性能に関する情報に注目していきたい。


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