中国のGPU(Graphics Processing Unit)開発企業、Xiangdixian Computing Technology(象帝先)が経営危機に陥り、大規模なリストラを実施していることが明らかになった。同社は中国政府が推進する半導体産業の自給自足政策の一環として期待されていた企業だけに、この事態は中国のハイテク産業に大きな打撃を与えそうだ。
期待の星から経営危機へ
Xiangdixian Computing Technologyは2020年9月に設立された比較的新しい企業だ。設立当初から「中国のNVIDIA」として注目を集め、デスクトップ、サーバー、データセンター向けの高性能GPUチップの開発を目指していた。創業からわずか数年で25億元(約515億円)もの資金を調達し、国内の半導体業界では異例の急成長を遂げていた。
しかし、2024年8月末、同社の従業員がSNS上で会社の解散を告発したことで、その経営危機が表面化した。Xiangdixianは8月31日に声明を発表し、完全な解散や清算には至っていないとしながらも、「国産GPUの開発が会社の期待を十分に満たしておらず、一定の市場調整圧力に直面している」と認めた。
同社は「組織構造と人員配置の最適化」を進めていると説明しているが、実質的には大規模なリストラを行っているとみられる。報道によれば、約400人の従業員との契約が突如終了され、9月30日までに退職金を支払う約束がされたものの、多くの従業員がその実現性に疑問を抱いている。
技術的課題と資金難:中国半導体産業の現実
Xiangdixianの経営危機の背景には、技術的な課題と資金調達の困難さがある。同社は2023年に120億元(約2470億円)の企業価値評価で資金調達を試みたが失敗。その後、評価額を80億元(約1640億円)に下げても新規投資を獲得できなかった。
技術面では、同社は「Tianjun」シリーズのGPUを開発し、一定の成果を上げていた。しかし、これらのGPUは主にクラウドデスクトップやCAD/CAE、メタバース、デジタルツインなどの応用に限られており、中国政府が経済成長と国家安全保障に不可欠とする人工知能(AI)分野での活用には至っていなかった。
Xiangdixianの挫折は、中国の半導体産業が直面する課題を浮き彫りにしている。米国の輸出規制により、NVIDIAやAMDなどの最先端GPUが入手困難になる中、中国政府は国内企業に多額の資金を投じてきた。しかし、その成果は限定的で、一部では補助金の不正利用疑惑まで浮上している。
中国には他にもHuaweiやMoore Threadsなど、AI向けチップの開発に取り組む企業がある。しかし、これらの企業が開発したGPUも、性能面でNVIDIAのH100 GPUには遠く及ばないのが現状だ。
Xiangdixianの事例は、技術的なブレークスルーと持続可能なビジネスモデルの構築の難しさを示している。中国の半導体産業が真の意味で「自給自足」を達成し、国際競争力を持つには、まだ長い道のりが待っているようだ。
Sources
- South China Morning Post: Chinese chip start-up Xiangdixian said to collapse amid cash crunch and legal woes
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