TrendForceが2026年9月22日、2025年のグローバルDRAMモジュール市場の売上を212億ドル、前年比59%増と公表した。前年の133億ドル、7%増から一気に加速した数字である。ただし、その伸びは市場を率いてきた企業にそのまま流れ込んだわけではなかった。首位Kingstonの成長率は48%にとどまり、シェアは66%から62%へ落ちている。市場が6割近く膨らんだ年に上位の取り分が縮んだのはなぜか、そして増えた売上は誰の手に渡ったのか。
133億ドルが212億ドルになった年
2025年のDRAMモジュール市場は、1年で79億ドル分の売上を上積みした。2023年は前年比28%減、2024年は7%増と、回復してきたとはいえ緩やかな足取りだったところへ、桁違いの伸びが乗った格好になる。212億ドルは執筆時点の為替(1ドル157円41銭、2026年9月22日)で約3兆3400億円にあたる。
ここで数字が動いた企業群は、メモリチップを作っている会社ではない。モジュールメーカーはSamsungやSK hynix、Micronといったチップメーカーからダイやチップを買い、DIMMやSO-DIMM、RDIMMの形に組み立てて売る中間層にあたる。自社に製造能力を持たないぶん、売上と利益は「いつ、いくらでチップを押さえられたか」にほぼ直結する。安いときに仕込めた在庫を高いときに出せば利益は膨らみ、逆なら調達価格の上昇をそのままかぶる。
2025年前半、一部のモジュールメーカーは第2四半期にDDR4チップの在庫を積み増した。動機は二つあり、一つは関税、もう一つはDRAMサプライヤーが予定していたDDR4のEOL(生産終了)計画である。同じ時期、関税を見越して調達を前倒ししたPC OEMやコンシューマー機器の顧客にも供給が回った。
後半になると、需要の主役が入れ替わる。北米と中国のCSP(クラウドサービスプロバイダー)が、エージェンティックAIアプリケーションの計算需要に対応するためサーバーDRAMの発注を増やした。この急増がDRAMサプライヤーのPC向け、コンシューマー向けの配分を絞り、DRAM価格全体を押し上げた。出荷量と価格が同時に上がった結果、下期に上期比で大幅な増収を記録するモジュールメーカーが相次いだ。
つまり2025年は、安く仕込んだ在庫を高値の局面で吐き出せた企業ほど伸びる年だった。その条件を満たせたかどうかで、順位表の中の伸びは大きく割れた。
59%成長の裏で下がった集中度
首位Kingstonの2025年売上成長率48%は、モジュール市場全体の成長率59%を11ポイント下回った。業界最大の調達規模を背景に2024年から2025年を通じて潤沢な在庫を積み、下期の価格上昇局面ではチャネル市場へ積極的に供給したとTrendForceは説明している。それでも市場平均には届かなかった。
結果として、市場が59%拡大した2025年に、上位5社の合算シェアは81%から77%へ、首位Kingstonのシェアは66%から62%へ、いずれも4ポイント低下した。シェアはどちらも整数に丸められた公表値なので、4ポイントという差にも丸め誤差は含まれる。それでも方向ははっきりしている。市場が膨らんだ年に、上位の取り分は薄くなった。
誤読しないでおきたいのは、Kingstonが縮んだわけではないという点だ。48%増は立派な増収であり、62%という数字は依然として2位以下を大きく引き離す水準にある。市場の伸びがそれを上回っただけのことである。
では、平均を押し上げたのは誰か。TrendForceが公表した9社の前年比成長率を並べると、3位Ramaxelの153%が9社中で最も高く、7位Innodiskが132%、8位Apacerが96%、6位Patriot Memoryが89%、2位ADATAが82%と続く。一方で4位Kimtigoは20%、9位AGIは26%にとどまった。市場平均の59%を挟んで、上と下にきれいに割れている。
伸びた側の説明を突き合わせると、共通点が二つ浮かぶ。一つは在庫を押さえた時期だ。ADATAは前サイクルで積んだ低コスト在庫が上流逼迫時の収益性に効き、DRAMサプライヤーとの提携で比較的安定したチップ配分を確保していた。Apacerは、DDR4のEOLと下期の需給悪化を見て第2四半期から追加供給の確保に動いている。
共通点のもう一つは売り先である。Innodiskは産業用市場に注力し、価格上昇に加えてエッジAI案件の伸びを取り込んだ。Patriot Memoryはコンシューマーやゲーミング、産業用、エッジコンピューティングへ分散展開していたことが供給不足下で奏功した。逆に伸びが鈍かったAGIは、自社ブランドでコンシューマー小売市場を中心に据え、越境ECを海外展開の主要チャネルにしている。
チップの配分が絞られる局面では、どれだけ売りたいかよりも、どれだけ確保できているかが売上を決める。2025年の成長率の散らばりは、その差がそのまま出たものだ。
動いたのは3位だけだった
シェアがこれだけ動いたのだから序列も入れ替わったはずだと考えると、順位表は肩透かしを食わせてくる。2024年に上位8社だった顔ぶれは2025年も同じ8社で、相対順位は一社も入れ替わっていない。動いたのはRamaxelが3位に新たに入った一点だけで、Kimtigo以下の6社はそろって順位を1つずつ下げた。Kingstonが1位、ADATAが2位という上二つに至っては、シェアが4ポイント動いてなお不動である。
そのRamaxelは、9社中で最も高い153%の成長を記録した。TrendForceが挙げる背景はPC OEMとCSPとの戦略的提携で、中国国内のDRAMサプライヤーおよびCSPとのRDIMM提携を拡大し、中国国産RDIMMサプライチェーンの規模拡大と品質改善に寄与したと記している。提携先は"domestic DRAM suppliers"としか書かれておらず、個別の社名は特定されていない。
念のため補足しておくと、Ramaxelが2024年に市場にいなかったわけではない。TrendForceの2024年版リリースが本文で名前を挙げたのは上位8社までで、そこにRamaxelは登場しない。ただし2025年版は上位9社まで公表しており、同社が前年に9位以下にいたのか、それともTrendForceが公表社数や集計対象を広げたのかは、公表資料からは判別できない。確実に言えるのは、2024年版が示した上位8社の枠内にはいなかった企業が、2025年版では3位に置かれた、という一点である。
各社の売上金額はKingstonを除いて公表されていないため、序列がどれほどの差で維持されたのかは外からは見えない。しかし成長率の開きが153%から20%まであってなお順位が動かなかった以上、上位と中位の規模差は1年ぶんの成長率差では埋まらない大きさだったことになる。シェアの集中は緩んだが、勢力図の骨格は動いていない。2025年の変化を一枚の図にするなら、線が引き直されたのは3位のところだけだ。
TrendForceが書かなかった1社
9社の紹介文を順に読んでいくと、1社だけ記述の形が違うことに気づく。TrendForceは2025年ランキングの9社のうち8社について前年比成長率をリリース本文に明記しているが、5位のTeam Groupだけは成長率に触れていない。
同社について書かれているのは、下期のDRAM価格急騰局面で北米のチャネル市場にDDR5製品を供給した、という事業内容の記述だけである。Kingstonの48%、ADATAの82%、Ramaxelの153%と、他社には一律に添えられている数字が、ここにはない。
この空白をどう読むかは慎重になったほうがいい。二次媒体のEvertiqは同社のDRAM売上を前年比5%減と報じているが、この数値はTrendForceのリリース本文には現れず、Evertiq自身もTrendForceを唯一の出典として独自取材を加えていない。リリースには図表が添付されており、本文に書かれていない数値がそこに含まれている可能性もある。本文に記載がないという事実は、数値が悪いことの証明ではない。
もう一つ、混同しやすい数字がある。Team Groupの全社売上は、金融データサイトstockanalysis.comの集計では2025年通期で204.3億台湾ドル、前年比2.46%増であり、通期純利益は過去最高を記録している。こちらはSSDなどDRAM以外の製品を含む全社指標で、TrendForceが集計しているDRAMモジュール売上とは対象範囲が違う。全社が増収だったことと、DRAMモジュール事業がどう動いたかは、別々に扱う必要がある。
読者の立場で確認できるのは、TrendForceの集計上、同社の順位が2024年の4位から2025年の5位へ下がったこと、そしてその1つの繰り下がりがRamaxelの参入によるものだということまでだ。成長率の実数は、同社自身の開示か、次年度の集計を待つしかない。
13〜18%の値上げは、誰の店頭価格まで届くのか
2025年に起きたことは、2026年の価格にまだ尾を引いている。TrendForceは2026年第3四半期のサーバーDRAM契約価格が前四半期比で13〜18%上昇するとの見通しを示している。ただしこれは予測であり、確定した値上げ幅ではない。
複数の米CSPは、サプライヤーと複数年の長期契約(LTA)を結んでいる。LTA対象の顧客への値上げは制限されるため、2026年第3四半期以降の値上げは、LTAを持たない顧客とLTA枠外の追加供給が主な源泉になるとTrendForceは見ている。
長期契約を結べる規模の顧客と、そうでない顧客。この線引きは、モジュール市場で見たチップ配分の格差とほぼ同じ構図である。日本の読者が店頭やECサイトで目にするメモリモジュールの価格は、その線のどちら側で調達された製品かに左右される。9位のAGIは越境ECを海外展開の主要チャネルとし、日本を販売地域の一つに挙げている。212億ドル、約3兆3400億円という市場の膨張は、上流のチップ配分から中間層の在庫戦略を経て、最後に店頭価格として日本の購入者に届く。
供給側にも逃げ道が残っている。DDR4はSamsungやSK hynix、Micronが2025年後半から2026年初めのEOLを計画していたが、需要と価格の高騰を受けて終息が2026年まで先送りされた。旧世代のラインが動き続ければ、最新世代の配分から外れた産業機器メーカーやPCメーカーにも調達先が残る。時期については媒体によって幅があり、流動的な情報として見ておく必要がある。
2026年の集計で確かめるべきなのは、首位が誰かではない。上位5社の合算シェアが77%からさらに下がるのか、それとも77%で下げ止まるのか、そしてRamaxelのようにランキングの外から割り込む企業がもう一社現れるかどうかである。中堅が安い在庫と安定したチップ配分を確保し続けられるなら、価格が上がる局面でも買い手は調達先を分散でき、上位1社の在庫判断が市場全体の供給を左右する構図から一歩離れることになる。
