James Webb Space Telescope(JWST)は、NASA、ESA(欧州宇宙機関)、CSA(カナダ宇宙庁)が共同開発した赤外線観測専用の宇宙望遠鏡である。2021年に打ち上げられ、宇宙誕生初期の銀河形成から系外惑星の大気組成に至るまで、幅広い天文学的課題の解明を目的として運用されている。主鏡の直径は6.5メートルに達し、先代のHubble Space Telescopeと比較して格段に高い感度と解像度を赤外線域で実現している。
技術的位置づけ
JWSTはKorsch望遠鏡の設計を採用しており、18枚の六角形金鏡を組み合わせた主鏡を持つ。赤外線観測に特化した設計により、可視光では塵やガスに遮られて見えない領域や、宇宙膨張によって赤方偏移した遠方銀河の光を捉えることができる。観測波長域は近赤外線から中間赤外線にわたり、宇宙の初期状態にある天体の観測に特に有効である。太陽・地球系のラグランジュ点L2付近に配置されることで、安定した熱的環境と観測条件を確保している。
主要な動向
JWSTは運用開始以降、数々の観測成果を上げてきた。2026年6月に報告された成果によれば、国際研究チームは2025年5月、宇宙誕生からわずか2億8000万年後に存在する銀河「MoM-z14」を分光学的に確認し、観測史上最遠の銀河として記録した。これはJWST自身がそれ以前に保持していた記録をさらに更新するものである。
同じく2026年6月には、JWSTがフォーマルハウト(25光年先の恒星)周囲の原始惑星系円盤において、頻発する巨大衝突の現場を直接捉えることに成功したと報告された。この観測は太陽系形成初期の過程を理解する上で重要な知見をもたらすとされている。
また、JWSTが提供するデータは宇宙論における基本的な問題の検証にも活用されており、宇宙の膨張速度をめぐる「ハッブル張力」と呼ばれる問題や、ビッグバンから14億年という初期宇宙に存在する銀河団での超高温ガス検出など、標準的な宇宙論モデルに疑問を投げかける観測結果の蓄積に貢献している。さらに、地球外知的生命体の探索という観点からも、系外惑星の大気成分分析を通じてJWSTへの期待は大きい。
なお、2026年6月にはNASAが後継・補完的な広視野宇宙望遠鏡であるNancy Grace Roman Space Telescopeの完成を発表した。ローマン望遠鏡はHubble Space Telescopeと同等の2.4メートル主鏡ながら視野を100倍に広げ、年間500テラバイト級のデータ取得を見込む設計となっており、JWSTの深宇宙高解像度観測を補完する広域統計観測の役割を担うとされる。2026年秋の打ち上げが予定されており、JWSTとの協調運用によって宇宙観測の新たな段階が開かれると期待されている。