『Fortnite』を手がけるEpic Gamesが、AIを軸に開発体制を組み替える。Tim Sweeney CEOは2026年10月12日、AIによる開発加速に備えて開発者を再配置する大きな転換が進んでいるとXで表明した。同日には、Disneyと共同で開発する未発表ゲームで、コードとアートの制作をAI中心に変える社内指示が出たとBloombergが報じた。Sweeney氏が掲げるのは、各開発者が作れる量と品質を高め、その成果をUnreal Engineを使うチームにも届けることだ。
EpicはすでにAIを開発に使ってきた。今回の変化は、導入するかどうかを越え、誰が何を作り、AIの出力をどう作品へ仕上げるかという制作体制に及ぶ。社内の転換を、外部スタジオも使える制作基盤へ移せるかが鍵になる。
Disney新作で報じられた「手書きコード終了」
BloombergのJason Schreier記者による10月12日の報道では、対象はMarvelとStar Warsのキャラクターが登場する未発表のシューティングゲームだ。翌3月の発売を予定していたが、新たな日程を示さず延期されたという。
同記者が確認した社内メッセージには、手作業でコードを書くことをやめ、アート素材も全面的にAIを使う制作工程で生成するという指示があった。Claudeなどのツールを使い、人間が作業を管理して方向を与える形だとされる。ここで報じられたのは、この新作の制作方針である。既存の『Fortnite』全体に同じ指示が出たことを示すものではない。
延期とAIへの転換を、単純な原因と結果で結ぶこともできない。Bloombergは、必要な人員と制作時間をEpicが過小評価し、進捗が想定より遅れていたと関係者の説明を伝えている。Epic広報のJake Jones氏はBloombergへの回答で、開発者が創造の方向を担うAIによる開発加速を採用すると説明した。AIで作品を完成させられるかは、これから確かめられる。
Disneyとの提携は、この新作より広い構想を持つ。2024年2月7日の共同構想では、Fortniteと相互接続し、遊びや視聴に加え、買い物やユーザーによる創作もできる持続的な娯楽世界をUnreal Engineで作るとしていた。Disneyが発表した15億ドルは、Epicの株式を取得するための出資額である。新作1本の開発費と読み替えると、事業の規模と制作上の問題を取り違える。今回の延期報道も、提携全体の中止を意味しない。
6月から10月、何が変わったのか
Epicの開発責任者Marcus Wassmer氏は、6月22日に公開したUE6の説明で、バックエンドからエンジン、ゲームまでの開発チームでコード生成とAI解析を広く使えるようにしたと述べていた。成果の例は、社内用の補助ツールや障害の原因調査、テストの生成などで、多くはUnreal Engine本体の主要コードを生成する用途ではなかったという。
Epicの公開方針は、6月の補助業務でのAI活用から、10月の開発者再配置へ進んだ。
| 公表日・発言者 | 説明されたAI活用 | 読み取れる変化 |
|---|---|---|
| 2026年6月22日・Marcus Wassmer氏 | コード生成と解析を広く利用。成果例の多くは補助業務 | 日々の開発作業を助ける用途を展開 |
| 2026年10月12日・Tim Sweeney氏 | 開発者を再配置し、各人の制作量と品質向上を目指す | 人員配置を伴う開発体制の転換を表明 |
この表は、6月の公式文書と10月の本人投稿から、公表日と対象業務を取り出して並べたものだ。異なる範囲の説明を比較しており、全社で移行が完了したことや、生産性が上がったことを示す年表ではない。
それでも、開発者の配置まで変えるという説明には意味がある。補助ツールで既存の作業を短くする段階から、AIを前提に仕事を分担する段階へ進もうとしているからだ。Disney案件の内部指示は、その変化が制作現場でどこまで踏み込むのかを伝える独自報道として位置づけられる。
Unreal Engineへの波及は、制作ツールとの接続が鍵
UE6の公式計画では、AIモデルをエンジンの機能へ接続するためにMCPを使う。MCPは、AIと外部のツールがやり取りするための共通の接続方式だ。Epicはエンジンの幅広い機能をこの方式で扱えるようにし、開発者が好みのモデルを組み合わせられるようにする方針を示している。
ゲームの制作では、コードを書くだけで作品は完成しない。たとえば照明の調整なら、モデルが提案した数値を実際のシーンに反映し、画面を確かめて修正する作業がある。モデルとエンジンをつなぐ構想は、こうした制作ツールの操作までAIの支援を広げようとするものだ。Epicが公式に挙げる対象にも、レベルの設定やキャラクターの骨格、照明の調整が含まれる。
これは外部のスタジオにとって、使いたいモデルと既存の制作環境をどう組み合わせるかという話になる。Epicが社内やFortnite向けエディターのUEFNで試した手法を、他のチームも使える機能へ移せれば、独自に接続を作る負担を減らせる可能性がある。ただし、外部利用者に特定のAIを使うよう義務づける計画ではなく、モデルを選べる制作環境を目指している。
提供には時間もかかる。Epicが6月に示したUE6の早期アクセス目標は2027年末だ。10月の人員再配置の表明をもって、外部スタジオが同じ制作工程をすぐ使えるようになったとはいえない。社内で得た成果を、実際に操作できるツールと再現可能な手順にする工程が残る。
人員削減とは別の説明、それでも残る財務上の圧力
Epicは3月24日の社内向けメモで、1,000人超の削減を発表していた。2025年からFortniteの利用が低調になったことで、支出が収入を大きく上回っていると説明した。外注やマーケティングに加え、採用予定の空きポストも見直し、5億ドル超の費用削減を特定したとしている。この額はAIによる節約額ではない。
Sweeney氏は同じメモで、人員削減はAIと関係がないと明記した。10月の投稿でも、少ない人数で同じものを作ることより、在籍する開発者がより多く、より良いものを作れるようにする目的を強調している。両方の説明を読む限り、3月の削減をAIによる代替だったと断定する根拠はない。
一方、財務を立て直す企業が制作体制を変える以上、制作量を増やした先で収益をどう戻すかは避けて通れない。AIが素材を早く作れても、作品として組み合わせ、問題を直し、利用者が遊び続ける体験に仕上げる必要がある。これは今回の方針から導かれる経営上の課題であり、Epicがすでに解決したと示した成果ではない。
Disney新作について報じられた人員と時間の見積もり不足も、この判断に関わる。制作工程を変えるなら、AIが生成する速さと、人が検証・修正する時間の両方を見積もり直さなければ、納期を立て直せるか分からない。
生産性「3倍」の見通しをどう確かめるか
Sweeney氏はXでの追加返信で、効率の変化は技術領域によって大きく異なると説明し、翌年の同時期には2026年1月比で3倍未満の領域は少なくなると予想した。これは将来への期待であり、ゲームを完成させる時間がすでに3分の1になったという測定結果ではない。投稿には、効率を何で測り、品質や修正の負担をどう数えるかは示されていない。
開発者の生産性を測る難しさは、研究団体METRの調査にも表れている。2025年7月の研究ブログで説明された実験では、熟練したオープンソース開発者16人が、自分たちのリポジトリの246課題に取り組んだ。AIを使えるかを課題ごとに無作為に割り当てたところ、使える条件の方が完了までの時間は19%長かった。対象は2025年2〜6月のツールで、主にCursor Proと当時のClaudeを使っていた。
ただし、この結果を現在のEpicに当てはめることはできない。ゲーム制作を測った実験ではなく、ツールの世代も違う。METR自身も2026年2月の更新で、新しいツールによって開発者が速くなっている可能性を認めている。その一方、AIなしでは働きたくない開発者や課題が試験から抜け落ちる偏りと、複数の作業を並行する場合の時間測定が、改善幅を確かめにくくしていると説明した。
Epicの転換を判断するにも、生成したコードの量だけでは足りない。検証や修正を含めて完成までの時間が短くなり、作品の品質を保てるか。さらに、その手法をUnreal Engineの外部利用者が自分のチームでも再現できるかが問われる。Disney新作で納期と品質を両立し、その経験を使える制作ツールへ移せれば、EpicのAI転換は他のスタジオの制作にも役立つものになる。



