Google I/O 2025の開幕を翌日に控えた2025年5月19日、GoogleはAIを活用した研究・ノート作成支援ツール「NotebookLM」のモバイルアプリを、AndroidおよびiOS向けに正式リリースしたことを発表した。これまでデスクトップのWebブラウザ経由でのみ利用可能だったこの強力なツールが、ついにスマートフォンやタブレットでも手軽に利用できるようになる。ユーザーからはモバイルアプリ化を望む声が多く上がっており、今回のリリースはまさに待望のアップデートと言えるだろう。
Google I/O直前、待望の「NotebookLM」モバイルアプリが電撃リリース
GoogleのAI技術、特に大規模言語モデル(LLM)の応用は目覚ましいものがあるが、NotebookLMはその中でも特に「情報理解」と「知識創造」の深化に特化したツールとして、2023年の登場以来、研究者や学生、多くの知識労働者から注目を集めてきた。そして今回、Google I/O 2025という絶好のタイミングを前に、その活動範囲をモバイルへと大きく広げることになった。
AndroidとiOSで提供開始 – いつから使える?入手方法は?
Googleの公式ブログによると、NotebookLMアプリは2025年5月19日より、AndroidユーザーはGoogle Playストアから、iPhoneおよびiPadユーザーはApp Storeからそれぞれダウンロード可能となっている。
- Android: Google Play Store [Android 10以降が必要]
- iPhone and iPad: App Store [iOS 17以降が必要]
これにより、場所を選ばずにNotebookLMの強力な機能にアクセスできるようになったことは、多くのユーザーにとって朗報と言える。
なぜ今?ユーザーの熱望とGoogleのAI戦略
モバイルアプリの提供は、NotebookLMユーザーから最も多く寄せられていた要望の一つであったとGoogleは述べている。日常的に持ち運ぶスマートフォンで、いつでもどこでも情報ソースを分析し、アイデアを深められる環境は、生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めている。
筆者は元Google検索エンジン開発者として、Googleがユーザー体験とアクセシビリティをいかに重視するかを肌で感じてきた。今回のモバイルアプリ化は、AI技術をより多くの人々の日常的なツールとして浸透させようとするGoogleの大きな戦略の一環であると考えられる。特に、複雑な情報を扱う機会の多い現代において、NotebookLMのようなAIアシスタントがモバイルデバイスでシームレスに利用できることの意義は計り知れない。Google I/Oを前にこの発表が行われたことも、AI分野における同社のリーダーシップを改めて印象づける狙いがあるのではないだろうか。
モバイル版NotebookLMは何ができる?主要機能とWeb版との違い
では、モバイル版NotebookLMは具体的にどのような機能を提供してくれるのだろうか。基本的には、Web版のコア機能を踏襲しつつ、モバイルならではの利便性が追求されている。
「音声概要」が進化 – オフライン再生とバックグラウンド対応で“ながら学習”が捗る
NotebookLMの目玉機能の一つである「音声概要」は、アップロードした資料に基づいてAIがポッドキャスト風の音声概要を生成してくれるというものだ。モバイルアプリでは、この音声概要がさらに進化する。
- オフライン再生: 生成した音声概要をダウンロードしておくことで、インターネット接続がない環境でも聴くことが可能だ。通勤・通学中の地下鉄や、電波の届きにくい場所での情報収集・学習が格段に便利になる。
- バックグラウンド再生: 他のアプリを使用しながら、あるいはスマートフォンの画面をオフにした状態でも音声概要を聴き続けられる。マルチタスクが求められる現代人にとって、これは非常にありがたい機能と言える。
- AIホストとの対話(ベータ版): 音声概要を聴いている途中で疑問が湧いたり、さらに深掘りしたい点が出てきたりした場合、AIホストに直接質問を投げかけることができる(現在はベータ機能)。
これらの機能強化により、まるで専属のAIチューターが情報を解説してくれるような、新しい学習体験がモバイルで実現する。
スマホならではの利便性 – OS共有シートからのダイレクトな情報ソース追加
モバイルアプリの大きなメリットとして、OSの共有機能を活用した情報ソースの追加が挙げられる。Webサイトを閲覧している時、PDF資料を読んでいる時、あるいはYouTube動画を視聴している時に、気になるコンテンツがあれば、デバイスの共有シートからNotebookLMを選択するだけで、簡単に新しいソースとして追加できる。これにより、情報収集から分析までのワークフローが格段にスムーズになることが期待される。
もちろん、従来通りPDF、Webサイト、YouTube動画、テキストファイルなどを直接アップロードしてソースとして活用することも可能だ。
UIと使い勝手 – ライト/ダークモード対応、ただしMaterial 3は今後の課題か
アプリのインターフェースは、既存のノートブックの一覧表示、ソースリスト、チャット形式でのQ&A、そしてStudio(各種出力オプション)といった、Web版でお馴染みの構成がモバイル向けに最適化されている。デバイスのシステム設定に連動してライトモードとダークモードが自動的に切り替わる機能も搭載されており、ユーザーの好みに合わせた表示が可能だ。
一方で、Googleの最新デザイン言語であるMaterial 3は現時点ではあまり積極的に活用されていないとようだ。とはいえ、これは初期リリース版であり、今後のアップデートでUI/UXがさらに洗練されていく可能性は十分に考えられる。シンプルな電話・タブレットインターフェースは、直感的な操作を可能にしていると言えるだろう。
今回のモバイルアプリリリースは、Google I/O 2025で発表されるであろうAI関連のアップデートのほんの序章に過ぎないのかもしれない。NotebookLMに関しても、さらなる機能強化や、他のGoogleサービスとの連携強化などが発表される可能性も考えられる。例えば、Geminiモデルの最新版がNotebookLMに統合され、より高度な分析や対話が可能になるといった展開も期待できるのではないだろうか。
Sources
Google: Understand anything, anywhere with the new NotebookLM app