米司法省(DOJ)と全米の州当局は2026年2月3日、Googleによるオンライン検索市場の独占を巡る裁判で、是正措置(レメディ)の内容を不服として控訴を申し立てた。2024年に下された「Googleは独占企業である」という歴史的な判決に対し、2025年9月に示された是正策が「生ぬるい」と判断された形だ。この法廷闘争は、単なる一企業の商慣習への介入を超え、AI時代の検索エコシステムそのものを再定義する瀬戸際に立たされている。

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牙を抜かれた是正勧告への反旗

事態が動いた背景には、U.S. District JudgeのAmit Mehta地方判事が下した2025年の是正命令がある。Mehta判事はGoogleによる独占維持を認めたものの、当局が求めていた最も厳しい措置——ブラウザ「Chrome」の売却や「Android」OSの分離、そしてAppleへの巨額の支払いを伴うデフォルト設定契約の全面禁止——を退けていた。

代わりに命じられたのは、デフォルト検索やAIアプリの契約を毎年入札にかけること、および競合他社との検索データ共有といった、比較的マイルドな措置に留まっていた。これに対し、Yelpのパブリックポリシー担当バイスプレジデントであるDavid Segalは、こうした措置では競争を回復するには不十分だと指摘する。Segalによれば、Googleがデバイスメーカーに支払う対価こそが競争を阻害する「主要なメカニズム」であり、それが温存される限り、真の公平な競争環境は訪れないという懸念がある。

生成AIという「免罪符」の妥当性

裁判の行方を左右する大きな不確定要素が、生成AIの台頭だ。Mehtaは2024年の判決以降、OpenAIなどの新興勢力がGoogleにとっての脅威となりつつあることを認め、急速に変化する市場への過度な介入を避ける姿勢を見せていた。

しかし、規制当局の視点は異なる。生成AIが登場したからといって、Googleが長年培ってきたChrome経由のトラフィック制御や、膨大な検索データセットによる優位性が消失したわけではないという主張だ。実際、Googleが現在検索インデックスやランキングの支配力を利用して、GenAI分野でも支配を強めようとしているとの批判も根強い。

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泥沼化する法廷闘争と業界への影響

Google側も手をこまねいているわけではない。同社はそもそも「独占」と認定されたこと自体を不服として控訴しており、さらに競合他社とのデータ共有命令についても、製品品質の低下やユーザーエクスペリエンスの毀損を理由に、控訴期間中の執行停止を求めている。

今後の焦点は、D.C. Circuitの米連邦控訴裁判所が、構造的分離(事業売却)という劇薬が必要であると判断するかどうかに集約される。もしChromeの分離やAppleとの提携禁止が現実のものとなれば、Web広告の収益構造や、スマートフォンにおけるデフォルト検索のあり方は根底から覆る。

この長期化する争いは、技術の進歩に法執行が追いつけないというジレンマを露呈させている。判決から是正措置、そして控訴に至る数年の間に、検索の定義そのものがAIによって変容し続けているからだ。当局が求める「構造的な外科手術」が、果たして競争の促進につながるのか、あるいは単に市場の混乱を招くだけに終わるのか。その答えが出るまでには、まだ多くの月日を要することになるだろう。


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