半導体大手のIntelが、次世代プロセッサ「Arrow Lake」の製造計画を大幅に変更することを発表した。当初予定していた自社の「Intel 20A」プロセスノードの使用を取りやめ、外部ファウンドリー(半導体製造受託会社)に製造を委託することを決定した。業界筋によると、委託先は台湾のTSMCである可能性が高いとされている。
Arrow Lake自社製造からの撤退という苦渋の決断
Intelは今回の発表で、Arrow Lakeプロセッサのチップ製造を外部パートナーに委ね、同社の役割は外部で製造されたチップレットの最終パッケージングのみになると明らかにした。この決定は、2023年のIntel Innovation イベントで20Aノードで製造されたArrow Lakeウェハーをデモ展示した直後だけに、業界に大きな驚きを与えている。
当初の計画では、Arrow Lakeの一部を20Aノードで製造し、残りをTSMCで製造する予定だったが、今回の決定により、Arrow Lake製品ファミリー全体が外部ファウンドリーで製造されることになる。
この決断の背景には、Intelが直面している複数の要因がある。同社は前四半期の業績不振を受けて大規模な組織再編を進めており、15,000人規模の人員削減を実施中である。56年の歴史の中でも最大規模のリストラとなっている。
20Aノードの生産立ち上げにかかる莫大な設備投資を回避することで、Intelはコスト削減目標の達成に貢献できると見られる。また、同社は18Aノードへの早期移行を目指しており、20Aノードの大規模生産は限定的な投資効果しか得られないと判断したようだ。
Intel 18Aに開発資源を集中
一方で、Intelは次世代の「Intel 18A」ノードの開発に注力している。同社によると、18Aノードは2025年の発売に向けて順調に進んでおり、既に研究所でチップの電源投入とオペレーティングシステムの起動に成功している。
Intel Technology DevelopmentのBen Sell副社長は、「Intel 18Aプロセスデザインキット(PDK)1.0を7月にリリースして以来、エコシステム全体から肯定的な反応を得ており、ファブでのIntel 18Aの状況に勇気づけられています。電源が入り、オペレーティングシステムが起動し、健全で良好な歩留まりを示しています。2025年の発売に向けて順調に進んでいます」と述べている。
18Aノードの開発が順調に進んでいることから、Intelは当初の予定よりも早く20Aノードからエンジニアリングリソースをシフトすることを決定した。Sell副社長は、「Intel 20Aで初めてRibbonFETゲートオールアラウンドトランジスタアーキテクチャとPowerViaバックサイド電力供給を統合することに成功し、これらの学びが18Aの商用実装に直接活かされています」と説明している。
また、Intelは18Aノードの欠陥密度(D0)が既に0.40未満に達していると報告しているが、これは新しいプロセスノードの量産準備が整ったとされる0.5を下回る数値である。この早期の成功により、同社は20Aノードを完全にスキップし、より高度な18Aノードへのリソース集中を決断したと見られる。
今回の決定は、Intelの「4年で5つのノード」を実現するという野心的な目標の一環でもある。同社はMicrosoftや米国防総省など、既に18Aノードを使用してチップを製造する顧客を獲得しており、2025年半ばまでに8つのテープアウトを計画している。
Intelのこの戦略転換は、自社製造能力の強化と外部ファウンドリの活用を組み合わせた「IDM 2.0」戦略の一環とも言える。Arrow Lakeの製造をTSMCに委託することで、Intelは最先端ノードの開発に集中できる一方、自社のファウンドリービジネスを通じて外部顧客向けのチップ製造も行う計画だ。
この大胆な決断が、Intelの競争力回復と半導体業界でのリーダーシップ維持にどのようなインパクトを与えるか、業界関係者の注目が集まっている。
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