半導体大手のIntelが、米国国内で2,200人を超える大規模な人員削減を実施することが明らかになった。この動きは、同社が掲げる全従業員の約15%(およそ15,000人)を削減する計画の一環である。
2,200人以上の従業員が解雇対象に、研究開発の中心地オレゴン州で1,300人削減
最も大きな影響を受けるのは、同社の研究開発の中心地であるオレゴン州の事業所だ。ここでは1,300人が解雇の対象となり、同州の Intel従業員の約5.6%に相当する。これは、オレゴン州の歴史の中でも最大規模の人員整理の一つとなる見込みだ。
その他の地域では、アリゾナ州で385人、カリフォルニア州で319人、テキサス州で251人が職を失うことになる。これらの解雇は11月15日から14日間にわたって実施される予定だ。
Intelの人事部門ディレクターであるJames Warner氏は、連邦政府に提出が義務付けられている従業員調整・再訓練通知(WARN)で、「影響を受けるすべての従業員に少なくとも4週間前の通知を行った」と述べている。
NVIDIAとの競争激化、AIチップ市場での苦戦が背景に
この大規模なリストラの背景には、Intelが高性能AI(人工知能)チップ市場でNVIDIAに後れを取っていることがある。Intelは、大規模なAIモデルのトレーニング用チップ市場での競争を一時的に断念し、より小規模で特定の用途に特化したAIソリューションを必要とする企業向けに注力する戦略に転換したようだ。
Intelは最近、自社のGaudi 3アクセラレータチップについて、NVIDIAのH100 GPUと比較して推論タスクにおいて「価格性能比の優位性」があると主張している。特に、Llama 3やLlama 2モデルの異なるサイズでの実行において、Gaudi 3がH100よりも高速かつコスト効率が良いとしている。
しかし、全体的な浮動小数点演算のスループットでは、Gaudi 3はH100に及ばない。bfloat16と8ビット浮動小数点精度の行列演算では、Gaudi 3が各フォーマットで1,835 TFLOPSを達成するのに対し、H100はBF16で1,979 TFLOPS、FP8で3,958 TFLOPSを記録している。Blackwellの登場でこの差は更に大きくなることだろう。
コスト削減と事業再構築、2025年までに100億ドルの節約を目指す
今回の人員削減は、Intelが2024年第2四半期に16億ドルの純損失を計上したことを受けて発表された、大規模なコスト削減計画の一部である。同社は、この施策により2025年までに100億ドル以上の節約を見込んでいる。
コスト削減策には、人員削減の他にも、研究開発費やマーケティング費用の削減、設備投資の20%カット、そして2025年までに非変動原価を約10億ドル削減することなどが含まれている。
Intel のCEOであるPat Gelsinger氏は先月、8月の発表以降、すでに7,500人以上が自主的な早期退職や退職金付き退職を選択したと述べている。今週の解雇を含めても、同社の目標とする人員削減数にはまだ達していないため、さらなる人員整理が避けられない状況だ。
米国国内での半導体製造拠点拡大は継続、CHIPS法の恩恵に期待
大規模な人員削減を進める一方で、Intelは米国内での半導体製造拠点の拡大には引き続きコミットしている。同社は、CHIPS(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors)法に基づく85億ドルの資金提供を受ける見込みで、さらに軍事用の高性能チップを生産する「Secure Enclave」プロジェクトには30億ドルの追加資金が提供される予定だ。
これらの資金を活用し、Intelはオレゴン州の事業拠点に360億ドル、アリゾナ州に300億ドル、オハイオ州に200億ドルを投資し、新たな製造施設(ファブ)を建設する計画を進めている。
一方で、ヨーロッパでの拡大計画については慎重な姿勢を見せている。ポーランドとドイツでの事業は「約2年」延期されており、European Chips Act(欧州チップ法)に基づく資金提供を受けられない可能性を懸念しているとみられる。
Sources
- The Oregonian: Intel will lay off 1,300 in Oregon as part of broader companywide cuts
- via Data Center Dynamics: Intel to lay off more than 2,200 workers across Oregon, Arizona, California, and Texas
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