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Intel、18Aプロセスの「Panther Lake」は2026年発売へ – 新CEOが変革ビジョンを公表

Y Kobayashi

2025年4月2日

Intelが開催した「Vision 2025」イベントで重要発表が相次いだ。新CEOのLip-Bu Tan氏が就任後初の基調講演を行い、エンジニアリング主導の企業文化への回帰を宣言。同時に次世代プロセッサ「Panther Lake」の詳細と発売時期が明らかになり、Intel 18Aプロセスノードがリスク生産段階に入ったことも発表された。

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新CEOが示すIntelの変革ビジョン

就任からわずか14日のLip-Bu Tan CEOは、「Intel Vision 2025」の基調講演で自身のビジョンを初めて公に語った。「私のリーダーシップの下、Intelはエンジニアリング重視の企業となります」と述べ、過去にIntelが失ってきた技術的才能を取り戻す決意を表明した。

Tan氏は「Intelはイノベーションで遅れを取り、結果として顧客のニーズに適応するのが遅すぎました。皆さんはより良いサービスを受ける価値があり、私たちは改善する必要があります」と率直に語った。

マレーシア生まれでシンガポールで育ち、MITで原子力工学の学位を取得したTan氏は、ベンチャーキャピタリストとして251件の半導体関連投資を手がけた経験と、Cadence Designの12年間のCEO経験を持つ。この経歴が、現在のIntelの課題解決に生かされるとしている。

「私たちの製品開発アプローチを根本的に変えます」とTan氏は強調。「過去のIntelは『内から外』でした。ハードウェアを設計し、それを機能させるためのソフトウェアを開発する形でした。これからはその順序を逆にし、解決すべき問題から始めて、そこから逆算していきます」

Panther Lake CPUの詳細が明らかに

Intelの次世代クライアントCPUプラットフォーム「Panther Lake」について、当初2025年後半の発売が予定されていたが、Vision 2025イベントでは2026年発売に変更されたことが確認された。Jim Johnson氏(Client Computing Group上級副社長)は「Panther Lakeは、Lunar Lakeのパワー効率とArrow Lakeのパフォーマンスを組み合わせ、18Aプロセスでスケーリングするように構築されています」と説明した。

重要なのは、生産については「今年後半に開始」と述べており、計画に遅れがないことを強調している点だ。これは、2025年後半に限定的な「ソフトローンチ」を行い、2026年初めにより大量の出荷を行うという当初の計画に沿ったものだと理解できる。

これまでの情報では、Panther LakeのCPUは以下の特徴を持つ予定だ:

  • 新しいCougar Cove PコアとSkymont Eコアを搭載
  • 6つのPコアと8つのEコアの構成(H-シリーズ)
  • 新しいXe3「Celestial」グラフィックスアーキテクチャ(最大12個のXe3コア)
  • チップレット方式でのパッケージング(コンピュート、GPU、IO、SOCコントローラーなど合計5つのダイで構成)
  • 15〜45Wの電力範囲でスケーリング

Panther LakeはIntelにとって、「パフォーマンス」重視のArrow Lakeと「電力効率」重視のLunar Lakeの長所を組み合わせた製品として位置づけられている。また、Tan氏の発言によれば、Panther Lakeの次に「Nova Lake」が2026年後半に登場する予定だ。

Johnson氏は「我々のクライアントロードマップはこれまでで最も革新的であり、まだ道半ばです」と、今後の製品展開への自信を見せた。

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Intel 18Aプロセス、リスク生産段階に

イベントで最も技術的に重要な発表の一つが、Intel 18Aプロセスノードが「リスク生産段階」に入ったという発表だ。Kevin O’Buckley氏(Intel Foundry Services上級副社長)がこのマイルストーンを発表した。

「リスク生産とは、技術を凍結する段階に達したことを意味します」とO’Buckley氏は説明。「顧客は『18Aは私の製品に十分だ』と確認しています。次は『リスク』部分、つまり1日数百ユニットから数千、数万、そして数十万へと生産をスケールアップすることです」

リスク生産は、研究開発、設計、プロトタイピングの後、実際の製品設計を用いた少量生産を通じて、製造フローの調整やPDK(プロセスデザインキット)の検証を行う重要なステップである。歩留まりなどのリスクは伴うものの、顧客にとっては競合に先駆けて最新ノードへのアクセスを得られる利点がある。Intelは今後、2024年後半にかけて量産に向けたスケールアップを進めていくことになる

Intel 18A(1.8nm)チップは、次の革新的な技術を組み合わせた最初の商用テクノロジーとなる:

  1. PowerViaバックサイド電力供給: パフォーマンスとトランジスタ密度を改善する最適化された電力ルーティング
  2. RibbonFETゲートオールアラウンド(GAA)トランジスタ: より小さな面積でより高速なトランジスタスイッチングと高いトランジスタ密度を実現

これらの技術革新は、元CEOのPat Gelsinger氏が掲げた「4年間で5つのノード」(5N4Y)計画の集大成として位置づけられている。さらにTan氏は、より高度な「14A」ノードの開発も進行中であることに言及している。

IntelのAI戦略と3つの優先事項

Michelle Johnston Holthaus氏(Intel製品事業CEO)は、2025年に向けて3つの主要な優先事項を示した:

  1. AIPC市場での勝利: エッジからオートモーティブ、PC、ワークステーションまでのAIクライアント機会の活用
  2. データセンター機能の強化: 既存の投資を最大化するための従来のデータセンターとワークロード対応の強化
  3. AIイノベーションの継続: 次世代のソフトウェアとハードウェアを可能にし、フルスタックソリューションを通じてAIの力を活用するインフラ整備

Intelはこれらの優先事項に沿って、異なる市場セグメントで具体的な製品を展開している。例えばClient Computing Groupは、Lunar Lakeの長時間バッテリーライフとCore Ultra製品ラインを強調。AIPCアプリケーションを見つけやすくするためのショーケースを立ち上げ、エンタープライズ向けの商用バージョンも数週間内に提供予定だ。

データセンター部門では、Xeon 6ポートフォリオが「正しい方向への一歩」として紹介され、業界をリードするパフォーマンスと最大50%低いTCO(総所有コスト)、競合よりも1/3少ないコアで最大50%優れたAI推論性能を提供するとしている。

Intel Foundryの戦略とサービス業としての進化

Tan CEOはIntel Foundryの重要性も強調し、「ファウンドリーはサービス業であり、それは信頼という基本原則の上に構築されています」と述べた。彼は、各顧客が独自の設計手法を持っていることを認識し、Cadenceでの経験から顧客のニーズに合わせた適応の重要性を学んだと語った。

ファウンドリー事業については「私は長期的にビジネスを構築することが好きです」と述べ、「非常に重要な2〜3社の顧客が必要で、彼らが私たちのパフォーマンスと歩留まりを向上させるのを助けてくれるでしょう」と語った。

また、米国企業として高度なチップを設計・製造する唯一の企業としての役割も強調し、4月末に開催予定のIntel Foundry Direct Connectイベントでさらなる詳細を共有する予定だとしている。

Intelの再生に向けて:集中と変革

Kristoff Schell氏(最高商業責任者)は、Intelの事業戦略について、「コアに再集中する」という方針を示した。Tan氏が事業の一部のスピンオフを検討していることも明かしたが、具体的な内容はまだ明らかにされていない。

Schell氏は垂直市場でのより良い組織化の重要性を強調し、特に政府部門と自動車部門を成長機会として挙げた。また、マーケティング支出をアカウントベースのマーケティングにシフトさせ、より的を絞ったアプローチを取ることも計画している。

さらに、リベートプログラムを廃止して前払い価格設定に移行するなど、顧客との取引を簡素化する取り組みも進めている。Intel Foundryとの連携についても言及し、カスタムおよび準カスタムの機会でのコラボレーションの重要性を強調した。

Intelの挑戦と今後の展望

新CEO Lip-Bu Tan氏の下、Intelは大きな変革期を迎えている。顧客からの信頼回復、エンジニアリング文化の再興、最先端プロセス技術でのリーダーシップ奪還、そしてAI時代への適応という、いくつもの困難な課題に直面している。特に、TSMCが支配的な地位を築いているファウンドリ市場で成功を収めることができるかは、Intelの将来を左右する重要な要素となる。

Tan CEOは、謙虚さと強い決意を持ってこの挑戦に臨む姿勢を示しており、「Intel Foundry Direct Connect」イベント(4月末開催予定)でファウンドリ戦略についてさらに詳しく語るとしている。Intelが再び半導体業界の頂点に返り咲くことができるか、その道のりは容易ではないが、Vision 2025で示されたビジョンと具体的な進捗は、今後のIntelの動向を占う上で注目に値する。


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