Appleが発表した新型iPad mini 7は、2023年のiPhoneハイエンドモデルに搭載された「A17 Pro」を搭載して発売される。これまでの傾向からも、iPad miniへの前世代のiPhoneチップが搭載される事は予想されていたものであったが、実際のベンチマークテスト結果が登場し、このチップのより詳細な情報や、iPad miniの大幅なRAM搭載量の増加が明らかになった。これらのスペックアップは、Appleが進めるApple Intelligenceへの対応を考えれば予想された物ではあるが、実際に確認された内容はやはり大きな性能向上を示す物だ。
ベンチマーク結果が明らかに – 前世代から飛躍的進化
iPad mini 7の発売を前に、Geekbench 6によるベンチマーク結果が公開され、その驚異的な性能向上が明らかになった。A17 Proチップを搭載した新モデルは、前世代のiPad mini 6と比較して、シングルコア・スコアで約32%、マルチコア・スコアで約27%の向上を示している。
具体的な数値を見てみよう。iPad mini 7のGeekbench 6スコアは、シングルコア・テストで2,817ポイント、マルチコア・テストで6,982ポイントを記録した。これに対し、A15 Bionicチップを搭載した前モデルのiPad mini 6は、シングルコアで約2,100ポイント、マルチコアで約5,400ポイントだった。
GPUパフォーマンスにおいても、iPad mini 7は大きな進化を遂げている。Metalスコアは平均25,716ポイントを記録し、iPad mini 6の20,200ポイントから約27%の向上を示した。
この結果は、Appleが発表時に謳った「30%のCPU性能向上と25%のGPU性能向上」という主張をほぼ裏付けるものとなっている。iPad mini 7は、コンパクトなボディに秘めた高い処理能力で、ユーザーの期待に応える準備が整っていると言えるだろう。
iPhone 15 Pro Maxとの意外な性能差 – 同じA17 Proでも異なる結果に
興味深いことに、iPad mini 7とiPhone 15 Pro Maxは同じA17 Proチップを搭載しているにもかかわらず、ベンチマーク結果に若干の差が見られた。iPad mini 7の性能は、シングルコアおよびマルチコアテストの両方で、iPhone 15 Pro Maxよりも約4%低い結果となっている。GPUスコアについても、iPhone 15 Pro Maxが平均27,200ポイントを記録しているところ、iPad mini 7は25,700ポイントとなっている。
この差異は、一見すると謎めいて見えるが、実はいくつかの要因が考えられる。まず、iPad mini 7に搭載されたA17 Proチップは、iPhone 15 Pro Maxのものと比べてGPUコアが1つ少ない5コア構成となっている。GPUスコアが低いのはこれを考えれば納得だ。
しかし、CPUコアの構成は同一で、パフォーマンスコアも同じ3.78GHzで動作している。では、なぜCPU性能に差が出たのか。その答えは、ソフトウェアの違いにあるようだ。ベンチマークテスト時、iPad mini 7はiOS 18を、iPhone 15 Pro MaxはiOS 18.0.1を実行していた。以前のGeekerwan氏のレビューによると、iOS 18ではCPUのブースト周波数に若干の遅延が導入され、Geekbench 6のスコアが低下する一方で、電力効率が向上し、バッテリー持続時間が改善されたという。
この結果は、Appleがソフトウェア最適化を通じて、性能とバッテリー持続時間のバランスを微調整していることを示唆している。iOS 18.0.1以降のバージョンでは、この調整が若干変更された可能性がある。今後、iPad mini 7がiOS 18.0.1にアップデートされた際の再テストで、この差が縮まる可能性も十分にあるだろう。
RAM倍増とApple Intelligence対応 – さらなる性能向上の秘密
iPad mini 7の性能向上を支える重要な要素として、RAMの大幅な増強が挙げられる。新モデルは8GBのRAMを搭載しており、これは前世代のiPad mini 6の4GBから、なんと倍増だ。
これまでRAMをケチってきたAppleが、6GBではなく一気に8GBまで倍増させるという、ここまで思い切ったスペックアップを行ったのはAppleが新たに導入したApple Intelligence機能をサポートするための最低要件がこのRAM容量であるという、必要に迫られてのことに外ならない。Apple Intelligence は、機械学習や AI 処理を活用した高度な機能群を指し、デバイス上でより複雑なタスクをスムーズに実行することを可能にする。
RAMの増加により、iPad mini 7 はマルチタスキング性能が大幅に向上し、複数のアプリを同時に実行する際のレスポンスが格段に改善されることが期待される。また、大容量のファイルや高解像度の画像、動画編集などのリソース集約型タスクにおいても、よりスムーズな処理が可能になるだろう。
Apple Intelligence対応により、iPad mini 7 は音声認識、自然言語処理、画像認識などのAI駆動機能を、より高速かつ効率的に実行できるようになる。これは、ユーザーインターフェースの改善やアプリケーションの機能拡張につながり、ユーザーエクスペリエンスを新たな次元に引き上げる可能性を秘めている。
さらに、この RAM 増強は将来的なソフトウェアアップデートやアプリケーションの進化にも対応できる余裕を持たせており、iPad mini 7の長期的な価値を高めていると言えるだろう。
しかし、この高性能化には課題も潜んでいる。電力効率の向上は見られるものの、コンパクトな筐体内でのA17 Proの熱管理は困難を極めるはずだ。特にA17 Proは熱問題が取り沙汰された過去もある。長時間の高負荷タスク時のパフォーマンス維持が、実際の使用シーンでどこまで可能かは注目すべきポイントとなるだろう。
Sources
- Geekbench Browser:
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