NTTなど5社は2026年10月20日、AI向けの光電融合デバイスを安定供給するため、光チップレットの量産技術開発を本格化すると発表した。NTTイノベーティブデバイスを代表とする4社の提案がNEDO事業に採択され、研究開発時点に比べて生産性を10倍以上に高めることを目指す。半導体同士を光でつなぐ実装技術の研究に加え、工場で作るための製造・検査・実装を整える計画だ。各社の分担と生産性目標をたどると、光チップレットの安定供給へ向けて何を検証するのかが見えてくる。

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チップ間通信を光化する部品を、工場で作る技術へ

光チップレットは、CPUやGPUなどの演算チップ間でデータを運ぶ電気信号を、光信号へ置き換える部品である。NTTの説明では、光半導体デバイスを含む光集積回路(PIC)と電子集積回路(EIC)を高密度に実装したものを指す。演算そのものを光で行うという話ではなく、演算チップ同士の通信に光を使う技術だ。

NTTは、生成AIの普及でAIデータセンターや高性能計算システムの情報処理需要が増す一方、チップ間通信に伴う消費電力の増大が課題になっていると説明する。データを大量に処理するには、計算を担う半導体だけでなく、半導体同士を結ぶ通信も高速・大容量化する必要がある。今回の光チップレットは、そのデータ伝送を低消費電力で実現することを狙う。

同社によると、2023年度からNEDO事業で進めてきたのは、半導体パッケージ間や半導体チップ間を光で接続する実装技術の研究開発だ。今回採択されたテーマは「(d8)光チップレット実装技術による半導体デバイスの製造技術開発【GX】」。光チップレットを搭載した半導体デバイスについて、量産に必要な製造技術を開発する。

そのために構築・評価するのが、実工場への適用を見据えたパイロットラインである。NTTは「実工場への適用を見据えたパイロットラインの構築と評価・検証を進めます。」と発表した。研究段階で部品を作る技術から、製造工程をつないで量産へ適用する技術へと、取り組む対象を広げる。

材料から検査・実装までを4社で分担

採択された実施予定先は、NTTイノベーティブデバイス、ジャパンセミコンダクター、古河電気工業、新光電気工業の4社だ。NEDOの実施予定先一覧にも、この4社が記載されている。共同発表に名を連ねるNTTはアドバイザーとして参画し、企業連携とサプライチェーン形成を担う。

採択4社は、光チップレットの材料の量産技術に加え、検査と実装を含む製造プロセスも開発する。次の表は2026年10月20日の共同発表にある役割を、開発する技術ごとにまとめたものだ。

開発する技術・工程 担当企業 発表された役割
製造・検査・実装 NTTイノベーティブデバイス 光チップレットの量産化に必要な技術を開発
シリコンフォトニクス ジャパンセミコンダクター 異種材料集積に適した量産技術を開発
化合物光半導体 古河電工 光チップレット向けの量産技術を開発
実装・量産プロセス 新光電気工業 光チップレット実装と、工程内検査を含む量産プロセスを開発
企業間の連携 NTT(アドバイザー) 量産技術の確立に向けた企業連携と供給網づくりを推進

出典:NTTの共同発表「各社の役割」、NEDO実施予定先一覧。計画上の分担を示しており、各工程の量産技術が完成したことを示す表ではない。

この分担から分かるのは、光デバイスを製造する技術と、作った部品を検査・実装する技術を一緒に整える計画だということだ。ジャパンセミコンダクターが担うシリコンフォトニクスと、古河電工が担う化合物光半導体は、異なる材料を扱う領域である。そこに製造・検査・実装の技術を組み合わせ、光チップレットを半導体デバイスへ組み込む工程まで開発する。

NTTは事業全体について、光デバイスの製造から検査、光接続を経て、半導体パッケージへの実装までを一貫して行う量産技術の確立を目指すとしている。光を扱う素子を作れるだけでは、AI基盤へ安定供給するまでの工程はそろわない。パイロットラインでこれらの工程を評価・検証することが、量産への適用を判断する材料になる。

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「10倍以上」の基準と、事業期間が示す範囲

生産性の目標について、NTTは「研究開発時点と比較して10倍以上の生産性向上をめざします。」と述べている。比較の基準は研究開発時点であり、通信速度やGPUの演算性能が10倍になるという意味ではない。データセンター全体の消費電力が10分の1になるという数値でもなく、製造技術開発の目標として示された倍率だ。

ただし、今回の共同発表には、生産性の算定式や比較元の生産量が記されていない。単位時間に作れる個数を増やすのか、工程時間を短くするのか、良品の割合である歩留まりをどう織り込むのかも、この発表からは判断できない。年間供給量や製造コストの変化を評価するには、生産性の算定条件の開示が必要になる。

時間軸にも条件がある。NEDOが公表した事業期間は「研究開発開始時点から原則5年(60カ月)以内」。起算点は研究開発の開始時点であり、発表日から5年後に量産品を出荷すると約束したものではない。NTTの共同発表とNEDOの採択資料は、具体的な量産開始日や顧客への供給日を示していない。

今回公表されたのは、企業による開発計画と、その提案に対する採択決定である。生産性向上を実測して達成した結果や、商用の供給能力を示す発表とは段階が異なる。低消費電力のデータ伝送も事業の狙いであり、今回の資料にデータセンター全体の電力削減率が示されたわけではない。

今後、パイロットラインの評価結果とともに、生産性を測る条件や生産量が示されれば、10倍以上という目標を実際の供給能力に結び付けて評価しやすくなる。材料から検査・実装までをつなぐ開発が、AI向け光接続部品の安定供給へどこまで近づくかは、その検証結果で見極めることになる。