NVIDIAは2025年のCESで次世代GPUとなるGeForce RTX 50シリーズを発表した。最上位モデルのRTX 5090は前世代比2倍の性能を実現しているにもかかわらず、価格は事前の予想を大幅に下回る1,999ドルとなっている。新たに開発されたBlackwell GPU アーキテクチャと第4世代のDLSS技術により、大幅な性能向上を達成している。
次世代フラグシップGPU RTX 5090の詳細
フラッグシップモデルとなる「RTX 5090」は、NVIDIAの次世代アーキテクチャ「Blackwell」を採用した最上位モデルとして設計された。その中核となるGB202-300-A1 GPUコアは、全192SMのうち170SMを有効化しており、これにより21,760基のCUDAコアを実現している。この構成は、理論上の最大24,576コアから約11.4%の削減となるが、これは前世代のRTX 4090における11.1%の削減率と比較して、わずかな差異に留まっている。
メモリシステムにおいても、RTX 5090は大きな進化を遂げている。32GBのGDDR7メモリを採用し、512ビットメモリインターフェイスと組み合わせることで、30Gbpsという驚異的なメモリ速度を実現。これにより、1,792GB/sという膨大なメモリ帯域幅を達成している。さらに、拡張されたL3キャッシュと新しいメモリ圧縮技術の採用により、実効的な帯域幅はさらに向上している。
冷却設計においても革新的なアプローチが採用されている。Founders Editionモデルは、デュアルスロット・デュアルファンの冷却ソリューションを採用し、ダブルフロースルーデザインによる効率的な排熱を実現。RTX 4090と比較してよりコンパクトな設計となっており、全長304mm、高さ137mmに収まっている。さらに、液体TIMの採用と3層構造のPCBという、GeForce GPUとしては初となる革新的な設計も特徴となっている。
電力管理の面では、TBP(Total Board Power)が575Wと設定されているものの、NVIDIAは実際のゲーミング時の消費電力はこの値を大きく下回ると説明している。また、最新のPCIe Gen 5.0規格に対応し、DisplayPort 2.1b UHBR20をサポートすることで、8K解像度で165Hzという高リフレッシュレート出力にも対応している。これは、最新のQD-OLEDパネルの性能を最大限に引き出すことを可能にする仕様となっている。
性能面では、DLSS 4対応タイトルにおいて、前世代のRTX 4090と比較して2倍以上の性能を発揮する。「Cyberpunk 2077」「Alan Wake 2」「黒神話:悟空」などの最新タイトルでこの性能向上が実証されており、DLSS非使用時でも30-40%の性能向上を達成している。これらの性能向上は、第5世代Tensorコア、新設計のストリーミングマルチプロセッサユニット、第4世代レイトレーシングコアなど、Blackwellアーキテクチャの革新的な技術の統合によって実現されている。
RTX 5080:コストパフォーマンスを追求したハイエンドモデル
続くハイエンドモデルである「RTX 5080」は、GB203-400-A1 GPUダイを採用し、84SMと10,752基のCUDAコアを備えている。この設計は、GB203 GPUダイの全コアを有効化した構成となっており、完全なダイ構成を活かした設計となっている。ただし、RTX 5090との性能差は約51%となり、これは前世代の4090と4080間の40%という差よりも大きな開きとなっている。
メモリ構成は16GBのGDDR7を256ビットバスで接続し、業界最速となる30Gbpsのメモリ速度を実現。これにより960GB/sのメモリ帯域幅を確保し、RTX 4080 SUPERの736GB/sと比較して約31%の向上となっており、高解像度テクスチャの処理やレイトレーシング時の性能向上に貢献している。TBPは360Wと設定され、前世代の4080 SUPERの320Wから12.5%の増加となっているが、実際の消費電力は使用状況により大きく変動する。
性能面では、DLSS 4を活用したゲームにおいて、RTX 4080と比較して2倍の性能向上を達成している。これは特に高解像度ゲーミングにおいて顕著な差となって表れており、4Kゲーミングにおける主力モデルとしての地位を確立している。AIパフォーマンスにおいても1,800 TOPSを実現しており、これは前世代と比較して約3倍の処理能力を意味する。価格面では、RTX 4080の発売時価格1,199ドルから200ドル引き下げられた999ドルでの提供となり、性能あたりのコストパフォーマンスは大幅に改善されている。
RTX 5070 Ti:ミドルレンジの新たな基準
ミドルレンジモデルの「RTX 5070 Ti」は、GB203 GPUの削減版を採用し、8,960基のCUDAコアを搭載している。メモリには16GBのGDDR7を採用し、最新のメモリ技術により、前世代の4070 Ti比で78%増となる896GB/sの帯域幅を実現している。動作クロックは2.45GHzのブーストクロックを実現し、高い動作周波数を維持している。
性能面では、RTX 4070 Tiと比較して2倍の性能向上を達成。749ドルという価格設定は、性能向上とDLSS 4対応を考慮すると、4070 TiおよびSUPERモデルと比較して優れた価値を提供している。特にDLSS 4を活用したゲームタイトルでの性能向上は顕著となっている。
RTX 5070:革新的な性能と価格のバランス
「RTX 5070」は、新設計のGB205 GPUを採用し、6,144基のCUDAコアを搭載。メモリ構成は12GBのGDDR7を192ビットバスで接続し、28Gbpsの高速なメモリ動作により672GB/sの帯域幅を実現している。これは前世代の4070および4070 SUPERと比較して33%の帯域幅向上となる。
電力効率も向上しており、TBPは250Wと設定され、4070 SUPERの220Wから14%の増加に抑えられている。特筆すべきは、549ドルという価格帯でRTX 4090を上回る性能を実現している点だ。これは1440pゲーミング市場において強力な選択肢となり、AMDの新発表されたRX 9070シリーズに対して大きな競争力を持つ。
さらに、AI処理性能においても1,000 TOPSを実現し、これは4090クラスの性能を3分の1の価格で提供することを意味する。PCIe 5.0規格への完全対応と、DP2.1aによる80Gbpsの帯域幅サポートも特徴となっている。2月の発売時には、NVIDIAの定評あるFounders Editionモデルとともに、パートナーメーカーによるカスタムモデルも同時に展開される予定となっている。
テクノロジーの進化と市場への影響
新開発のBlackwellアーキテクチャでは、第5世代Tensorコアと第4世代レイトレーシングコアの統合により、AI処理性能は前世代と比較して3倍の向上を達成している。特にシェーダー性能に対するAI処理性能の比率が2倍になったことは、次世代のゲーミング体験に大きな影響を与える可能性を示している。
新世代のGPUアーキテクチャでは、FP4アルゴリズムのサポートが実装され、AIの処理速度が大幅に向上している。これはDLSS 4などの高度なAI技術の性能向上に直接的な影響を与えており、ゲーミング体験の質的向上に貢献している。特に注目すべきは、RTX 5070が1,000TOPSものAI処理性能を実現し、前世代のフラグシップモデルRTX 4090と同等の性能を3分の1の価格で提供できる点は大きいだろう。
技術革新の中でも特に重要なのが、Neural Texture Compression(NTC)の実装だ。これは従来のBlock Truncation Coding(BTC)と比較して、画質を維持しながらVRAM使用量を3分の1に削減することを可能にする革新的な技術だ。18ヶ月前には従来のBTCの半分以下の速度でしか動作しなかったNTCが、新世代のAI処理性能の向上と追加のトレーニングにより、実用的な速度での動作を実現している。
しかし、この革新的な技術の普及には課題も存在する。多くのゲームがクロスプラットフォームで展開される現在、AMD GPUを搭載したコンソール機器との互換性が問題となる可能性がある。NTCの恩恵を受けるためにはRTX対応のグラフィックスカードが必要となり、さらにRTX 50シリーズ限定の機能となった場合、対応タイトルは更に限定される可能性がある。
ただし、NVIDIAはゲーム市場において強力な影響力を持っており、AMDやIntelには真似できない方法でゲーム開発の方向性を変える力を持っている。これは、メモリ使用量の最適化が課題となっている現代のゲーム開発において、特に重要な意味を持つ。8GBのVRAMを搭載したグラフィックスカードでも、より高解像度のテクスチャや複雑なグラフィックス処理が可能になる可能性を示している。
さらに、PCB製造プロセスにおいても進化が見られる。GPUとGDDR7 VRAM間の信号整合性を向上させるためのバックドリル加工プロセスが改良され、14層のPCB設計が採用されている。電源供給においても、12V-2×6電源コネクタを標準採用し、一部の高性能モデルのみがデュアル16ピンコネクタを採用する設計となっている。これらの改良により、高性能化と信頼性の向上の両立を実現している。
RTX 50シリーズの日本での価格と発売日
米ドル価格ではかなり割安な印象を受けるRTX 50シリーズだが、日本での価格は円安や輸入代理店の手数料などが加味され、1ドル200円程度と、以下の様にかなり割高な価格設定になっている。
- GeForce RTX 5090:393,800円より
- GeForce RTX 5080:198,800円より
- GeForce RTX 5070 Ti:148,800円より
- GeForce RTX 5070:108,800円より
特に最上位のRTX 5090は、全モデルのRTX 4090が発売当時298,000円だったことを考えると、10万円近くとかなり大きな値上がりの印象だ。
発売日に関しては、RTX 5090及びRTX 5080は1月30日の発売が予定されている。RTX 5070 TiとRTX 5070は少し遅れて2月以降に順次発売の予定だ。
Sources
コメント