Googleの次期フラッグシップ「Pixel 11」が前世代より少ないRAM構成で出荷される——このリークが相次いで流れた。AIアシスタントの常駐やオンデバイス処理が競争軸になるなか、RAM容量を「増やして当然」という前提が崩れつつある。リーカーのMysticLeaksが流したとされる大規模スペックリークを複数メディアが報じており、RAM市場の構造的な問題がGoogleのフラッグシップラインにまで波及した形だ。一方でTensor G6TSMC N2(2nm)プロセスへの移行やMediaTek製モデムへのシフトという大きな変化を抱えており、この世代のPixelが何を得て何を失うかが鮮明になってきた。

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RAM不足直撃:前世代より少ない選択肢が生まれる理由

LPDDR5X(スマートフォン向け高速メモリ)の価格が前年比60%超の上昇を記録した背景には、AIデータセンター向けHBM(高帯域幅メモリ)需要の爆発がある。TrendForceのデータによれば、Q1 2026の前年比約60%上昇に続き、Q2にはさらに100%上昇が予測されている。Samsung・SK hynix・Micronの主要3社がHBM生産を優先してコンシューマ向けLPDDR生産を縮小しており、供給の圧迫が続く構図だ。

リーク情報によれば、Pixel 11(ベースモデル)は8GBと12GBの2構成になる。現行Pixel 10が12GB固定であるのに対し、低RAM版が選択肢に加わる。Pixel 11 ProおよびPro XL、Pro Foldでも12GBと16GBの2構成が報告されており、現行の16GB固定から下位構成が加わることになる。Googleに限らず、XiaomiもDRAMコストが約25%増加すると見込んでおり、これは業界規模の問題だ。

IDCは2026年のスマートフォン出荷台数が前年比12.9%減と10年以上で最大の落ち込みになると予測している。それでもGoogleフラッグシップでこの変化が起きる象徴的な意味は大きい。Pixelはソフトウェア最適化を強みとするブランドだが、AIモデルの常駐を前提にした市場で8GBという構成は、快適性への疑問符を残す。SamsungやAppleとの比較においても、このスペックは評価を分ける可能性がある。

Tensor G6の全貌:2nmとSamsung脱却が意味するもの

TSMC N2(2nm)プロセスへの移行は、前世代Tensor G5の3nmから1世代の進化にあたる。プロセス微細化は消費電力あたりの性能向上に直結するため、RAM削減の影響を電力効率の改善で部分的に補う設計方針が透けて見える。リーク情報から判明しているTensor G6の主要スペックは以下の通りだ。

CPU構成

  • 最高性能コア: ARM C1-Ultra × 1(4.11GHz)
  • 高性能コア: ARM C1-Pro × 4(3.38GHz)
  • 効率コア: ARM C1-Pro × 2(2.65GHz)

ARMの最新世代コアを採用した1+4+2構成で、前世代からのコアアーキテクチャの刷新が確認されている。

GPU・セキュリティチップ

  • GPU: PowerVR C-Series CXTP-48-1536(Imaginationのグラフィックスアーキテクチャを継続採用)
  • セキュリティチップ: Titan M3(前世代Titan M2からの世代更新)

モデム

  • 搭載モデム: MediaTek M90(型番MT6986D)
  • 規格: 5G-Advanced(3GPP Release-17準拠)
  • 最大ダウンリンク: 12Gbps
  • 対応周波数帯: Sub-6GHzおよびmmWave両対応
  • 衛星接続: 業界初(同社主張)の5Gモデム内衛星接続機能
  • 消費電力: 前世代比最大18%削減(MediaTek公式発表)

なぜGoogleがこのタイミングでMediaTekへ切り替えるかを理解するには、Tensor開発の経緯が重要だ。GoogleはTensor G1からSamsungのファウンドリを活用し、モデムもSamsung Exynosを内包してきた。Exynosモデムは5G性能と電力効率への批判を長年受け続け、Tensor G4でTSMCファウンドリに切り替えた後もモデムはSamsung製が残っていた。この批判への具体的な答えがM90の仕様、すなわち5G-Advanced対応、ダウンリンク12Gbps、消費電力18%削減だ。チップ設計の最適化における最後の変数をGoogleが埋めようとしている、という解釈が自然だろう。

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カメラハードウェアの刷新:新センサーコードネームが示す構成差

Pixel 9から始まったPro系列とベースモデルの差別化戦略は、Pixel 11でもセンサー自体を全面刷新する形で継続される。ベースモデルのメインカメラには"chemosh"という新センサーが採用されるとされ、このセンサーはPixel 11 Pro Foldにも共通して使われるとみられている。Pro系列のメインカメラには"bastet"という別の新センサー、望遠カメラには"barghest"が充てられる構成だ。

Android Authorityはこのカメラセンサー更新を今世代の注目点として指摘している。既存センサーの改良ではなく新設計への全面移行であれば、画質改善の余地は積み上げ型の変更より大きくなりうる。ただし上記のカメラセンサー情報はMysticLeaks単独のリークに基づいており、"bastet"・"barghest"のMP数やセンサーサイズを含め、複数ソースからの確認はまだとれていない。

Pixel Glowとその他の変更点

Pixel 11シリーズにはカメラバーのRGB LEDアレイ、「Pixel Glow」とも呼ばれる新機能が搭載されるとリークされている。通知の受信やGemini起動時に点滅する仕組みで、Nothing PhoneのGlyph機能に類似した設計だ。Pixel 9 Proシリーズに搭載されていたIRサーモメーターの廃止を受けた変更とも報告されているが、機能的な代替ではなく完全に異なる用途での採用となる。

バッテリーについては、流通している数値(Pixel 11が4840mAh、Pixel 11 Proが4707mAh、Pixel 11 Pro XLが5000mAh、Pixel 11 Pro Foldが4658mAh)はいずれも「最小容量(minimal capacity)」表記であり、実際の公称スペックはこれらを上回る。発売時期は2026年8月とAndroid Policeが伝えているが、これを含めバッテリー数値・IR顔認識(Project Toscana)の搭載可否など、本記事の情報はリーク段階にあり、公式発表で変更される可能性がある点には注意が必要だ。

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RAM削減の先に何が残るか

8GBオプションの追加で下位構成の価格帯を引き下げつつ、コアのチップ性能とカメラでフラッグシップとしての地位を保つ——RAM不足という制約のなかでGoogleが取れる選択肢を明確にすれば、そういう構造になる。2nmプロセスの電力効率改善と、Exynosへの批判を根拠に選ばれたMediaTek M90の通信性能がその支柱だ。

具体的な懸念として、現行の主要な端末向けLLM(大規模言語モデル)推論ランタイムは12GBを推奨する設定が多い。8GBモデルでリアルタイムのAI処理を行うには、モデルの量子化圧縮が前提となり、精度とのトレードオフが生じる。Tensor G6の2nmプロセスがオンデバイス処理の効率を高めても、RAMの物理的な上限は処理できるモデルサイズを直接制約する。この点でPixel 11の8GBモデルは、競合が12GB以上を標準にする流れのなかで評価の割れる仕様になると見られる。Exynosモデムの汚名をM90で返上できるかと並び、実機での検証が待たれるポイントだ。