Samsung Electronicsの第5世代高帯域幅メモリ(HBM3E)チップが、NVIDIAのAIプロセッサ向け品質検査を通過したことがReutersによって報じられている。これにより、AIチップ市場における競争が新たな局面を迎えることになるかもしれない。
HBM3Eが認証を通過したと報じられSamsungの株価は上昇
Samsungの開発する8層構造のHBM3Eチップが、NVIDIAのデータセンター製品向けテストを通過したことが確認された。これにより、SamsungはNVIDIAのGPUやAIアクセラレータ向けに高帯域幅メモリチップを供給できる立場を確立した。両社間の正式な供給契約はまだ締結されていないものの、複数の情報筋によると、2024年第4四半期からSamsungがNVIDIAにHBM3Eチップの供給を開始する見込みだという。
HBM3Eチップの性能向上は注目に値する。従来のHBM3と比較して、メモリ速度を6.4Gb/sから9.6Gb/sに向上させ、メモリ帯域幅を819GB/sから1200GB/s以上に増加させる。この性能向上により、AI、機械学習、データ分析などの高度な処理を要するワークロードにおいて、より高いパフォーマンスと効率性が期待できる。
しかし、競争は激しさを増している。SamsungのライバルであるSK hynixは既に一歩先を行っており、12層のHBM3Eチップの出荷を開始している。SK hynixは2024年第3四半期の需要を完全に確保していると主張し、5月には80%という目標歩留まりを予想よりも早く達成した。現在、SK hynixはNVIDIAの現行H200および次世代Blackwell B100 GPU向けにHBM3Eチップを供給している。
この状況について、SemiAnalysisの創設者Dylan Patel氏は「Samsungはまだ追いつこうとしている段階だ」と分析している。しかし、HBM市場全体の急速な拡大を考慮すると、Samsungの立ち位置はそれほど悲観的ではない。SK hynixの予測によると、HBM市場は2027年まで年率82%で成長すると見込まれている。さらに、2024年第4四半期までにHBM3Eが全HBMチップ販売の60%を占めるようになると予想されている。
Samsungの今回の成果は、同社が直面していた技術的課題を克服したことを示している。以前の報道では、SamsungのHBM3EチップがNVIDIAのテストに合格できなかった理由として、発熱や消費電力の問題が指摘されていた。しかし、Samsungはこれらの問題を否定し、HBM3Eの設計を見直すことで、AIプロセッサが要求する電力効率と優れた熱特性を実現したという。
HBM市場には、Samsung、SK hynix、Micronの3社の主要メーカーが存在する。MicronもNVIDIAにHBM3Eチップを供給することを発表しており、競争は一層激化している。この状況下で、SamsungのHBM3E認証取得は同社にとって重要なマイルストーンとなる。
今後の展開として注目されるのは、Samsungの12層HBM3Eチップの開発状況だ。現時点では、この12層版はまだNVIDIAのテストを通過していない。また、NVIDIAとの正式な供給契約の締結も待たれている。これらの進展如何によっては、AI半導体市場の勢力図が大きく変わる可能性があるだろう。
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