Samsung Electronicsの高帯域幅メモリ(HBM3)チップが、ようやくNVIDIAの厳格な検査基準をクリアした。しかし、この承認は手放しで喜べる物ではなく、大きな制限が課された、条件付きの物のようだ。
ようやくHBM3チップが承認されたがHBM3Eチップはいまだ検査が継続中
Reutersの報道によると、SamsungのHBM3チップはNVIDIAのAIプロセッサ用の適合性テストに合格した。しかし、この承認は現時点でNVIDIAのH20 GPU、つまり米国の輸出規制に準拠して中国市場向けに設計された比較的低性能なプロセッサに限定されているとのことだ。
Samsungは世界最大のメモリチップメーカーでありながら、NVIDIAのHBMチップ認証取得に苦戦していた。これまでの報道では、Samsungのチップが発熱や電力消費の問題でNVIDIAのテストに不合格だったとされていたが、Samsungはこれらの主張を否定していた。
今回の承認は、AIチップに不可欠な高性能メモリの供給不足という背景がある。HBMチップは、複数のメモリチップを積層することで高速かつ大容量のメモリを実現し、複雑なAIタスクの処理に必要とされている。現在、HBMチップの主要製造者はSK hynix、Micron、そしてSamsungの3社のみだ。
NVIDIAにとってもSamsungのHBM3チップ承認は重要な意味を持つ。MicronとSK hynixのHBM3チップはすでに認証を受けているものの、需要の急増により供給不足が続いているためだ。サプライチェーンの多様化は、NVIDIAの生産能力拡大に寄与する可能性がある。
一方で、Samsungの次世代HBM3Eチップは依然としてNVIDIAの基準を満たしておらず、テストが継続中だという。これに対し、競合するSK hynixのHBM3Eチップはすでにテストに合格し、出荷が始まっているとされる。
H20 GPUは、2023年に強化された米国の対中輸出規制に対応して設計された3種のGPUの中で最も高性能なモデルだ。しかし、非中国市場向けの最上位モデルH100と比較すると、計算能力は大幅に制限されている。当初は販売が低調だったものの、中国の技術大手Huaweiが独自開発したAIチップより低価格で提供されたこともあり、最近では販売が好調だという。
この展開は、急成長するAI市場における半導体企業間の激しい競争と、国際的な技術覇権争いの複雑な様相を呈する物だ。Samsungにとっては一歩前進だが、HBM市場でのリーダーシップを確立するには、さらなる技術革新と品質向上が求められるだろう。
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