韓国政府が、移動通信料金の設計を大きく変える方針を打ち出した。科学技術情報通信部は4月9日、SK Telecom、KT、LG Uplusの3社と連携し、すべてのLTE・5Gデータ料金プランで、高速データの月間上限を使い切った後も400Kbpsの低速通信を継続できるようにすると発表した。メッセージアプリや地図アプリなど、最低限の通信を止めないことを「基本通信権」の保障として位置付けている。
聯合ニュースによると、対象は無制限データプランに入っていない717万人で、年間3221億ウォンの節約効果を見込む。実施目標は2026年6月末までだ。韓国ではこれまで、月間容量を使い切った後に追加料金を払うか、低速オプション付きのプランへ移るかが必要になる場面があった。今回の改編は、その仕組みを個別オプションではなく標準仕様へ寄せる点に特徴がある。
今回の施策は、ユーザーが「無制限プランか、容量超過後はほぼ使えないプランか」を選ぶ構図を崩す内容でもある。韓国政府は同時に、2万ウォン台の5G料金プラン、高齢者向けの音声・SMS拡充、料金プランの統廃合、利用実績に応じた最適料金プラン通知制度も打ち出しており、単発の値下げではなく料金体系全体を組み替える方針として示した。
変わるのは「使い切った後」の扱い
今回の料金改編で中核になるのは、すべてのLTE・5Gデータ料金に「データ安心オプション」を組み込むことだ。聯合ニュースは、韓国科学技術情報通信部が3社との合意に基づき、月間の高速データ上限に達したあとも全加入者に400Kbpsの低速通信を提供すると伝えている。この速度では動画視聴や大容量通信は難しいが、メッセージ送信や地図検索などの基本的な用途は維持できるという。
韓国メディアのChosun Bizは、既存のデータ安心オプションが月5500ウォン(590円)相当だったと報じている。今回の改編では、その機能を追加料金なしで広く行き渡らせる構図になる。政府が717万人、年間3221億ウォンという数字を出しているのも、現行では低速継続のために別料金や上位プランが必要だった利用者が少なくなかったことを示している。
ここで重要なのは、今回の施策が高速通信の無制限化ではない点だ。400Kbpsはあくまで最低限の接続を切らさないための速度であり、動画や重いファイル転送を前提にしたものではない。つまり韓国政府は「すべてのユーザーに大容量通信を無料化する」のではなく、「容量を使い切ったあとも生活に必要な通信を残す」方向に政策目的を絞っている。
2万ウォン台5Gと高齢者向け拡充を同時に進める
今回の改編は、低速通信の標準化だけで終わらない。Chosun Bizによると、韓国政府は現在3万ウォン台後半にある5G料金プランの最低価格帯を2万ウォン台まで引き下げる方針も示した。LTEと5Gで分かれている約250の料金プランは、統合と簡素化を経て半分以下に減らすとしている。
高齢者向け施策も大きい。聯合ニュースは、65歳以上で音声・テキスト利用量に制限があるプランに入っている利用者の許容量拡大を政府が求めると伝えた。Chosun Bizは、対象が約140万人、年間節約額が約590億ウォンになると報じている。さらに、これまで年齢別特典を受けるには専用料金プランを探して加入する必要があったが、今後は一般プランでも年齢に応じた特典を自動適用する方向だという。
料金プラン選びの負担を下げる措置として、2026年10月からは「最適料金プラン告知制度」も始まる。これは、通信会社が利用実績を分析し、より安く適したプランを定期的に知らせる制度だ。韓国政府は、低速継続、低価格5G、高齢者向け拡充、料金プラン整理、最適プラン通知をまとめて進めることで、利用者が複雑な料金表を読み解かなくても基本的な通信を確保しやすい状態を目指している。
「基本通信権」を料金設計に落とし込む動き
韓国科学技術情報通信部は、この施策を単なる料金値下げではなく、通信データへのアクセス権の問題として説明している。聯合ニュースは、同省リリースの文言として「AI・デジタル時代に移動通信データは必需品になった」「すべての人に日常的なコミュニケーションと基本的な情報アクセスを確保するため、通信データへのアクセス権を高めることが重要になった」と伝えた。記事本文では抽象的な理念だけでなく、400Kbps、717万人、6月末、2万ウォン台、140万人といった実装条件も同時に出している点が今回の特徴だ。
The Registerは、この方針を「universal basic mobile data access」と表現し、韓国通信各社がセキュリティ事故後の信頼回復を迫られている文脈にも触れている。ただし、4月9日の韓国政府説明で中核にあるのは、まず料金制度の再設計だ。海外向けには通信各社の社会的責任や信頼回復の話として読みやすいが、事実報道として先に押さえるべきなのは、どの速度を、どのプランに、いつまでに組み込むのかという実施条件になる。
今回の動きは、韓国の移動通信政策が「月額をいくら下げるか」だけでなく、「容量を使い切った後に何が残るか」を政策対象にし始めたことを示している。高速通信の上限を超えた瞬間に接続体験がほぼ途切れる設計から、低速でも連絡と情報取得は維持する設計へ移すなら、通信料金の競争軸も変わる。6月末までの実装が予定通り進めば、韓国のLTE・5G料金は、データ容量そのものよりも、上限到達後の最低保障を含めて比較される局面に入ることになる。
Sources
- Yonhap News Agency: Seoul to guarantee access to basic mobile data after caps
- Chosun Biz: 데이터 다 써도 추가 과금 없이 무제한… 5G 요금제 2만원대 낮아지고 어르신은 음성·문자 무제한
- The Register: South Korea introduces universal basic mobile data access