中国による台湾への軍事侵攻が懸念される中、世界経済への大きな打撃となり得るのが中国による半導体製造施設の制圧だ。TSMCの最先端施設は台湾にしか存在せず、台湾有事に備え、設備の無効化スイッチを備えているとは言え、生産が中止されることには変わりはなく、iPhoneをはじめとした多くのスマートフォン、PCなどに大きな影響が出ることが予想される。
TSMCは過去にこうした脅威に備え、工場を台湾外に移転することを顧客も含めて検討したが、多くの困難が伴うため移転を断念したという。
台湾以外に工場は移転できない
TSMCのCEOであるC.C. Wei氏は、年次株主総会の席で、「一部の顧客」と中国が島の周辺で軍事演習を行った際に、台湾侵攻という最悪のシナリオに備え、同社の工場を移転させる可能性について議論したが、TSMCは生産能力の80〜90%が台湾にあるため、半導体工場を島外に移転することは不可能であるとの結論に至った、と述べている。
この顧客は恐らくTSMCにとって最も重要な顧客であるAppleだろう。
ロシアによるウクライナ侵攻に対し、世界各国が決定的な制裁を科すことが出来ず、武力による制圧の利点を浮き彫りにしてしまったことから、この行動が中国による台湾侵攻という野心を助長するのではないかという懸念が近年高まっている。
米国および英国の安全保障機関は後に、これが現実の可能性であるという「前例のない警告」を発した。こうした懸念は、中国が実際に台湾の軍事封鎖を実際に練習するという事態により、侵攻のための最初のステップと位置づけているのではとの憶測に繋がり、さらに中国が人民解放軍の100周年となる2027年までに新たな軍事的高みに達する計画を発表したときに懸念は再び高まった。
米国統合参謀本部議長のMark Milley将軍は、北京はその年までに台湾侵攻の準備を整えることを望んでいる可能性があると述べた。
中国が近年、金の保有残高を積み上げ、過去最高を更新し続けていることも憶測に繋がっている。軍事的侵攻に対する制裁に備えてのドル離れを画策しているのではというのだ。
そして実際に台湾侵攻が行われた場合、世界経済への打撃は計り知れない。商務長官のGina Raimondoは先月、中国が台湾を掌握すれば「絶対に壊滅的」な影響を及ぼすと述べている。
「それが起こるかどうか、どのように起こるか、いつ起こるかについてコメントするつもりはないが、今言えるのは、米国は現在、最先端のチップの92%を台湾のTSMCから購入しているということだ」とRaimondo氏は下院歳出委員会で述べている。
TSMCは米国や日本など他の国でも製造工場を建設しているが、Wei氏は台湾が同社の生産と技術の両面で最優先であると述べた。
「第一優先は台湾、第二優先も台湾、第三優先も台湾だ。最先端のチップ生産はすべて台湾に維持し、まずここでその生産をスムーズに行い、その後でその技術を用いて海外での生産を考慮する」と、Wei氏は述べている。
「台湾海峡の不安定さは確かにサプライチェーンにとって考慮すべき事項であるが、我々は戦争が起こることを決して望んでいない」。
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