Intelは最新のデスクチップ向けCPU「Arrow Lake-S(Core Ultra 200S)」プロセッサで発生していたゲームパフォーマンスの問題について、5つの根本原因を特定し、そのうち4つについてはすでに修正パッチを公開したと発表した。残る1つについても2025年1月には対応完了の見込みとしている。
期待を下回った発売後レビューの原因が判明
Arrow LakeプロセッサはIntelが10月に発売した最新CPU世代だが、発売直後から予想外の事態に直面した。各メディアのレビューでは、Intelが事前に共有したベンチマーク結果と大きく異なる数値が報告され、さらにメディアごとにゲームパフォーマンスの測定結果が大きくばらついた。特に衝撃的だったのは、一部のゲームタイトルで前世代の第14世代プロセッサよりも低いパフォーマンスを記録したことだ。
この状況を重く見たIntelは、クライアントAIおよびテクニカルマーケティング担当VP兼GMのRobert Hallock氏を中心とした調査チームを編成。徹底的な原因究明の結果、複数の技術的問題が重なっていたことが明らかとなった。
Intelによれば、パフォーマンス低下の原因は以下の5つが特定されたという:
- Performance & Power Management(PPM)パッケージの欠落
- Intel Application Performance Optimizer(APO)の機能不全
- Easy Anti-Cheatサービスによるブルースクリーン
- レビュアー向けBIOSの設定ミス
- 新規BIOS最適化の必要性
中でも性能低下の主要因は、Windows の電源管理を制御する Performance & Power Management(PPM)パッケージにあったようだ。このパッケージは CPU の動作特性を最適化する重要なコンポーネントだが、レビュアー向けの環境では正しいバージョンが提供されていなかった。この不備により、ワークロードの種類や環境によって6%から最大30%ものパフォーマンス低下が発生していたことが判明した。さらに、この PPM パッケージの不備は連鎖的な問題を引き起こしており、ゲームパフォーマンスを向上させる Intel Application Performance Optimizer(APO)が正常に機能しない状況を生んでいた。
マザーボードのBIOS設定に関する問題も深刻だった。Intelは各マザーボードベンダーに対して「VIP設定」と呼ばれる重要なパラメータ群の指定を行っていたが、その実装が適切に行われていなかった。具体的には、PCIe Resizable BARの設定、コンピュートタイルのリング周波数、メモリコントローラー比率、持続的および一時的な電力制限値など、性能に直結する多くのパラメータが不適切な状態だった。この影響により、メモリレイテンシが通常の1.5倍から2倍にまで上昇したり、動的なワークロードでパフォーマンスが大きく変動したりする事態が発生していた。
これらの問題に対し、Intelは段階的な修正を実施している。現在提供されているWindows 11ビルド26100.2314以降のアップデートでPPMパッケージの問題が解決され、各マザーボードベンダーからも修正されたBIOSが配布されている。また、Easy Anti-Cheatサービスとの互換性による Blue Screen of Death(BSOD)の問題についても、Epic Gamesが対応するドライバーアップデートを関連するパブリッシャーやデベロッパーに配布済みだ。
さらにIntelは2025年1月、Intel マイクロコードバージョン0x114とIntel CSME Firmware Kit 19.0.0.1854v2.2(またはそれ以降)を含む最終アップデートをリリースする予定だ。このアップデートには発売後に開発された新しい最適化機能が含まれており、約35のゲームタイトルでの検証において、さらなる一桁台のパフォーマンス向上が期待できるという。最終的な性能改善の詳細については、CES 2025で包括的なA/Bパフォーマンス分析とともに公開される予定となっている。
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