SoftBank グループが、データセンター向けプロセッサを開発するAmpere Computingの買収に近づいていると報じられた。実現すれば、データセンター向け半導体市場における競争がさらに激化する可能性がある。
買収交渉は最終段階、数週間以内に発表の可能性
Bloombergの報道によると、SoftBankとAmpereの交渉は最終段階にあり、数週間以内に買収が発表される可能性があるとのことだ。買収額は Ampere の企業価値を約65億ドル(約1兆円)と評価するものになる見込み。ただし、交渉は流動的であり、買収の遅延や中止の可能性も残されている。
Ampereの買収に関心を示しているという報道は昨年9月に浮上した。今年1月には、SoftBankと傘下のArm Holdingsが買収を検討していると報じられていた。
Ampereは、2017年に元Intel社長のRenee James氏によって設立された。同社は、クラウドコンピューティングとAIワークロード向けに、高性能かつ電力効率の高いプロセッサを開発している。主力製品は、「Ampere Altra」と「AmpereOne」プロセッサファミリ。Ampere Altraシリーズはエッジコンピューティングや大規模クラウド環境に、AmpereOneシリーズはクラウドネイティブおよびAIタスクに最適化されている。
SoftBankの狙い:Armとの統合でデータセンター市場の覇権を握る
SoftBankは、半導体設計大手Arm Holdings plc (Arm) の過半数の株式を保有している。Ampere買収が実現した場合、SoftBankはArmのアーキテクチャとAmpereの先進的なチップ設計を組み合わせた統合ソリューションを提供できるようになる。これにより、Intel Corp. (Intel) や Advanced Micro Devices Inc. (AMD) などの競合他社に対する優位性を確立し、データセンターおよびAI市場でのシェア拡大を目指す。
SoftBankは、AIプロセッサを開発する英国のGraphcoreも所有している。Ampereの技術とGraphcoreの技術を組み合わせることで、SoftBankは、GraphcoreのBow IPUとAmpereのCPUを組み合わせたサーバー市場向けの製品を投入することも可能になる。
今回の買収報道におけるAmpereの評価額は約65億ドルだが、これはSoftBankが少数株取得を検討していた2021年時点の評価額80億ドルから下方修正されている。
Oracleとの関係:Renee James氏の取締役退任と今後の展開
Ampereの主要顧客の1社であるOracle は、2023年10月の年次報告書で、Ampereの株式の29%を保有していることに加え、株式転換権付き社債などを通じて、Ampereの経営権を取得できるオプションを保有していることを明らかにしている。これらの合意は、OracleがAmpereや他の投資家と直接行ったものだ。
Oracleは、「当社または共同投資家がそのようなオプションを行使した場合、当社はAmpereの支配権を取得し、その業績を当社の業績に統合する」と述べていた。
また、Oracleは同報告書で、Renee James氏が2023年11月中旬の任期満了をもって取締役を退任することも明らかにしている。Ampereは非公開企業であるため、James氏が現在どれだけの株式を保有しているかは不明となっている。
XenoSpectrum’s Take
SoftBankによるAmpere買収の動きは、データセンター向け半導体市場における競争の激化を象徴している。高性能かつ低消費電力なプロセッサへの需要が高まる中、各社は技術革新とM&Aを通じて競争優位性を確立しようとしている。SoftBankは、ArmとAmpereの統合により、この分野でのリーダーシップを確立することを目指しているが、IntelやAMDなどの既存勢力も黙ってはいないだろう。今後の動向に注目する必要がある。今回の買収交渉が最終的にどのような結果になるにせよ、データセンター向け半導体市場の競争がさらに激化することは間違いない。
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