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Amazon、TikTok買収に電撃参入 – 期限迫る中での土壇場入札

Y Kobayashi

2025年4月3日

Amazonが、中国系動画共有アプリTikTokの買収に名乗りを上げた。売却か米国での禁止か、その運命を決める期限が4月5日に迫る中での驚きの動きだ。しかし、関係者はこの土壇場の入札を懐疑的に見ているとの報道もあり、巨大ディールの行方は依然として不透明である。

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期限直前、Amazonがホワイトハウスに入札提案

複数の報道によると、Amazonは今週、TikTok買収の提案書をホワイトハウス高官、具体的にはJ.D Vance副大統領とHoward Lutnick商務長官に送付したことが確認された。これは、TikTokの親会社である中国企業ByteDanceに対し、米国の安全保障上の懸念からTikTokの米国事業を売却するよう求めた2024年の法律に基づく措置である。

当初の売却期限は2025年1月19日であったが、Trump政権はこれを75日間延長し、新たな期限が4月5日に設定されていた。まさにその期限切れを目前にしたタイミングでのAmazonの入札は、多くの市場関係者を驚かせた。このニュースを受け、Amazonの株価は一時的に2%程度上昇し、市場がこの動きに注目していることを示した。

しかし、The New York TimesCNBCなどが報じているように、交渉に関与している関係者は、このAmazonからの提案を真剣には受け止めていない模様だ。CNBCが匿名の情報源を引用して伝えたところによると、その理由の一つとして、期限が目前に迫っている状況での提案であることが挙げられている。土壇場での参入が、交渉プロセスを複雑化させる可能性も指摘されている。

なぜAmazonはTikTokに関心を示すのか?

AmazonがTikTokに関心を示す背景には、長年にわたるソーシャルメディア分野への野心があると考えられる。Amazonはこれまでにも、若年層へのアピールや自社ECサイトへの送客強化を狙い、いくつかの試みを行ってきた。

2013年には書評サイトGoodreadsを、2014年にはライブ動画配信サイトTwitchを約10億ドルで買収。さらに、TikTokのような短編動画・写真フィード機能「Inspire」を自社アプリ内で開発・テストしたが、今年初めにサービスを終了している。

TikTokは、特に「TikTok Shop」と呼ばれるオンラインマーケットプレイス機能に注力し、eコマースのハブとしても急成長している。1億7000万人以上とも言われる米国内の膨大なユーザーベースと、その購買意欲を刺激するプラットフォームは、eコマースの巨人であるAmazonにとって非常に魅力的な資産となり得る。

実際に、両社は昨年8月、TikTokユーザーがアプリを離れることなくAmazonで商品を購入できる連携機能を発表している。この提携は当時、データプライバシーや安全保障上の懸念から一部議員の注目を集めた経緯もある。今回の買収提案は、このような連携を一歩進め、TikTokの持つ強力なユーザーエンゲージメントとコマース機能を自社に取り込もうとする戦略の一環と見ることもできるだろう。

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他の候補者と有力視される代替案

Amazonの参入以前から、TikTokの買収には複数の企業や投資家グループが関心を示してきた。

  • Oracle連合: IT大手Oracleは、会長Larry Ellison氏がTrump大統領と近しい関係にあることもあり、有力候補の一つと目されてきた。Financial Timesによると、著名ベンチャーキャピタルAndreessen Horowitz(a16z)が、Oracle主導の米国投資家グループによる買収案への参加を協議中である。
  • Blackstone連合: Reutersの報道によれば、大手プライベートエクイティファンドBlackstoneは、ByteDanceの既存の非中国系株主(Susquehanna International GroupやGeneral Atlanticなど)と連携し、TikTokの米国事業買収のための新たな資金拠出を検討している。
  • AppLovin: モバイルテクノロジー企業AppLovinも入札を行ったとCNBCが報じている。同社はデータとAIを活用した広告ターゲティング技術を持つ。
  • その他の候補者: 元LAドジャースオーナーのFrank McCourt氏による「The People’s Bid for TikTok」、AIスタートアップPerplexity、人気YouTuberのMrBeast(本名: Jimmy Donaldson)氏、OnlyFans創業者Tim Stokely氏率いるコンソーシアム(スタートアップZoopと仮想通貨財団)、Reddit共同創業者Alexis Ohanian氏なども、関心を示している、あるいは候補として名前が挙がっている。

また、The Informationが報じたところによると、Trump大統領は「TikTok America」と呼ばれる新会社設立構想を発表する可能性もある。この構想では、新たな米国の投資家が50%、ByteDanceの既存投資家が約33%、そしてByteDance自身が19.9%の株式を保有し、TikTokのアルゴリズムはByteDanceからライセンス供与を受ける形になるという。これが実現すれば、米国の法律が定める外国資本の保有比率制限(20%未満)をクリアできる可能性がある。

今後の見通しと課題

Trump大統領は、4月5日の期限までにByteDanceとの間で売却に関する合意がまとまることに自信を示していると伝えられる一方、期限の再延長の可能性も示唆しており、最終的な決断は依然として不透明である。水曜日(報道があった時点)には、Trump大統領が関係閣僚とTikTokの今後について協議する予定だと報じられていた。

仮に売却の方向で話が進んだとしても、いくつかの課題が残る。まず、ByteDance自身が売却に前向きではないとされている点である。米国でのサービス継続のためには、最終的にByteDanceの同意が不可欠となる。

さらに、いかなる売却案であっても、中国政府の承認が必要となる可能性が高い。The Wall Street Journalの報道によれば、中国政府はTrump政権が発表する可能性のある新たな対中関税計画の詳細を見極めてから、TikTokに関する判断を下す構えであるとも伝えられている。Trump大統領は、売却承認の見返りとして関税引き下げを交渉材料にする可能性にも言及している。

Amazonによる土壇場での入札は、TikTokを巡る複雑な交渉劇に新たな要素を加えた。しかし、関係者の懐疑的な見方や、他の有力な候補者・代替案の存在、そして米中両政府の意向など、多くの不確定要素が絡み合っており、4月5日の期限に向けて予断を許さない状況が続いている。米国で約半数の国民が利用するとも言われる巨大プラットフォームの運命は、依然として岐路に立たされているのである。


Sources

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