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Perplexity AI、TikTok買収計画を発表―アルゴリズムのオープンソース化やAI検索統合を構想

Y Kobayashi

2025年3月23日

AI検索エンジンのスタートアップ、Perplexity AIが、米国での規制回避を迫られるTikTokの買収に意欲を示し、透明性のあるアルゴリズム構築と検索技術の統合による新たなビジョンを公表した。

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TikTok買収の背景と他の買収候補者

米国で施行されたTikTok禁止法により、中国企業ByteDanceはTikTokの売却か米国市場からの完全撤退という厳しい選択を迫られている。Trump大統領は先日、「4つの異なるグループと交渉中」であり、「多くの関係者がこの買収に関心を寄せている」と、大統領専用機エアフォースワンの機内で取材陣に明かした。

TikTok禁止法は、中国政府がこのプラットフォームを利用してアメリカ国民を監視したり、米国の世論に密かに影響を与えたりする安全保障上の懸念から2025年1月19日に発効。禁止法の適用に伴い、TikTokは一時的に米国でのサービスを停止し、アプリストアからも消滅した。その後、Trump大統領が就任後に2か月半の猶予期間を設定し、北京との解決策を探っている最中だ。

現在浮上している買収希望者には、不動産・スポーツ界の実業家Frank McCourtのProject Libertyが立ち上げた「The People’s Bid for TikTok」、テック大手のMicrosoft、クラウド企業Oracle、そして人気インターネットクリエイターのMrBeast(本名:Jimmy Donaldson)を含むグループなどが名を連ねる。

現状としては、Financial Timesの報道によると、ByteDanceの既存米国投資家たちがOracleと連携し、Trump政権を「納得させる」取引構造を模索中とのことで、ByteDance自身も「強く」この方式を望んでいるという。

Perplexityが描くTikTok改革構想

そんな中、Perplexityが公式ブログでTikTok買収後のビジョンを発表した。同社は2022年にAI研究者集団によって創設された比較的新興のテック企業だ。Perplexityは、自社のAI検索技術を「世界最高のアンサーエンジン」と位置づけ、TikTokの動画プラットフォームとの融合により「世界最高の検索体験」を実現できると強調している。

「Perplexity独自のアンサーエンジンとTikTokの膨大な動画ライブラリを融合することで、他に類を見ない検索体験を構築できる」とサンフランシスコを拠点とする同社は説明している。

Perplexityは「ByteDanceによるアルゴリズム支配を継続させることなく、また短時間動画や情報空間における独占状態も創出せずに、TikTokのアルゴリズムを再構築できる唯一のポジションにある」と主張。「コンテンツフィードが外国政府やグローバル独占企業の操作から解放されるとき、社会全体が恩恵を享受できる」との見解を示した。

同社は具体的に以下の改革プランを提示している:

  1. アルゴリズムの透明化と刷新:現状では「ブラックボックス」と形容されるTikTokのレコメンデーションアルゴリズムを「根本から再設計」し、「For You」フィードの仕組みをオープンソース化する。これにより、どのような基準で動画がユーザーに推奨されるかが透明になり、外部からの検証も可能になる。
  2. ファクトチェック機能の拡充:Perplexityの検索エンジンで実績のある引用機能をTikTokプラットフォームに拡張し、視聴者が動画を見ながらリアルタイムで情報の信頼性を確認できる仕組みを導入。さらに、コミュニティベースの情報検証システム「Community Notes」を実装することで、「TikTokを世界で最も中立かつ信頼性の高いプラットフォームへと変革する」と宣言している。
  3. クロスプラットフォーム連携:TikTokの検索機能をPerplexityの高度なアンサーエンジンで強化する一方、Perplexityの検索結果をTikTokの関連動画で補完する双方向の統合を企図。両プラットフォームのユーザーが、テキストと動画を組み合わせたより包括的な情報体験を獲得できる環境を構築する。
  4. AI技術による体験向上:自動翻訳やコンテキスト理解などの先進AI機能を活用し、クリエイターのグローバルリーチを拡大。視聴者が気になる動画から直接、より深い調査クエリを開始できる機能も構想しており、「単なる時間つぶし」から「価値ある情報探索」へとプラットフォームの位置づけを変えることを目指している。
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PerplexityによるTikTok買収の技術的側面と実現可能性

Perplexityは技術面での優位性として、NVIDIA Dynamo(2025年のNVIDIA GTCで発表され、同社を「主要パートナー」として紹介)を基盤とした高度なAI基盤を挙げている。この基盤を活用することで、TikTokの推奨アルゴリズムを「現状の100倍のスケールに拡張しつつ、処理速度も向上させる」ことが可能だと論じている。

インフラ面では、米国内のデータセンターにTikTokのシステム基盤を全面移行し、米国当局の監視下で運用することを約束。これにより、国内のプライバシー規制や安全保障上の懸念に対応するとしている。

ただし、Perplexityが設立から約3年の新興企業であることを踏まえると、10億人以上のユーザーを抱えるTikTokのような巨大プラットフォームのインフラとアルゴリズムを再構築する技術力と資金力については疑問符が残る。また、「For You」フィードのオープンソース化は、技術的実装面だけでなく、知的財産やビジネスモデルの観点からも複雑な課題を内包している。

TikTok買収を巡る今後

現時点では、Perplexityの買収提案がどの程度真剣に検討されているかは判然としない。Financial Timesの報道にもあるように、現状では、ByteDanceは既存の米国投資家とOracleによる共同買収案を「強く支持している」とされる。

Trump大統領による一時的なTikTok救済措置は4月5日に失効予定だが、大統領自身は必要であれば「おそらく」延長する意向を示唆している。

Perplexityの提案は技術的に野心的かつ革新的である一方、同社の企業規模や資金力を考慮すると、推定価値数百億ドルとされるTikTokの買収と再構築は容易ではないだろう。また、アルゴリズムの透明化やコミュニティベースのファクトチェック機能など、Elon MuskしがXプラットフォーム(旧Twitter)で導入を進めている要素と類似点も多く、それらの実効性については賛否両論がある。

TikTokの未来を左右する判断はTrump政権の手に委ねられており、技術的側面だけでなく、米中関係や国内政治という複雑な文脈の中で決定が下される見込みだ。


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