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AMD、Radeon RX 9060 XT発表:RTX 5060 Tiを凌駕するコスパでゲーミング市場に殴り込みか

Y Kobayashi

2025年5月21日

Computex 2025において、AMDがミドルレンジGPU市場に強力な新製品を投入した。同社はRDNA 4アーキテクチャを採用する新型グラフィックスカード「Radeon RX 9060 XT」を正式に発表。16GBモデルを349ドル、8GBモデルを299ドルという戦略的な価格設定で、NVIDIAのGeForce RTX 5060シリーズに対抗する構えだ。特に16GBモデルは、競合よりも安価でありながら優れた1440pゲーミング性能を謳い、コストパフォーマンスを重視するゲーマーにとって注目の選択肢となりそうだ。発売は2025年6月5日を予定している。

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ミドルレンジ市場の覇権を狙うAMDの刺客、Radeon RX 9060 XT

AMDにとって、Radeon RX 9060 XTは、先に発表された上位モデル「Radeon RX 9070」シリーズに続く、RDNA 4世代の重要なラインナップとなる。特にボリュームゾーンであるミドルレンジ市場において、NVIDIAの牙城を切り崩すための戦略製品と位置づけられているのは間違いないだろう。

NVIDIAはGeForce RTX 5060 TiおよびRTX 5060を市場に投入しているが、特にRTX 5060の8GB VRAMモデルに関しては、最新ゲームの要求スペックに対して十分とは言えないという声も一部からは上がっている。AMDは、この状況を好機と捉え、RX 9060 XTでは8GBモデルに加え、より大容量な16GBモデルを用意することで、ゲーマーのニーズに応えようとしている。

リファレンスモデルの提供はなく、ASRock、ASUS、Gigabyte、PowerColor、Sapphire、XFX、Yestonといったパートナー企業からカスタムデザインモデルが登場する見込みだ。

Radeon RX 9060 XT 詳細スペック徹底解説:Navi 44の実力は?

Radeon RX 9060 XTの心臓部には、新開発の「Navi 44」GPUが搭載される。これは、Radeon RX 9070シリーズに採用された「Navi 48」よりも小型のシリコンだ。

新アーキテクチャ「RDNA 4」と「Navi 44」GPU

Navi 44 GPUは、TSMCのN4P (4nm) FinFETプロセスで製造され、トランジスタ数は297億、ダイサイズは199mm²とされている。前世代のNavi 33(Radeon RX 7600 XTに搭載)がTSMC N6プロセス、133億トランジスタ、204mm²であったのと比較すると、プロセスの微細化によりトランジスタ密度が大幅に向上していることがわかる。

主な仕様は以下の通りだ。

  • コンピュートユニット (CU): 32基
  • ストリームプロセッサ (SP): 2,048基
  • AIアクセラレータ: 64基
  • RTアクセラレータ (レイトレーシングコア): 32基 (第3世代)
  • テクスチャマッピングユニット (TMU): 128基
  • レンダーアウトプットユニット (ROP): 64基
  • ブーストクロック: 最大3,130MHz (3.13GHz)
  • ピークFP32性能: 25.6 TFLOPS
  • AI性能: 最大821 INT4 TOPS (スパース性ありの場合、Wccftechによれば1557 INT4 TOPS)

特筆すべきは、3.13GHzという非常に高いブーストクロックだ。これはRDNA 4アーキテクチャの電力効率と性能向上の賜物と言えるだろう。RTアクセラレータも第3世代へと進化し、レイトレーシング性能の向上が期待される。

メモリ構成 – 8GBと16GB、2つの選択肢

Radeon RX 9060 XTは、2つのメモリ構成で提供される。

  • 16GB GDDR6 モデル: 349ドル
  • 8GB GDDR6 モデル: 299ドル

いずれのモデルもメモリインターフェースは128-bit幅で、メモリチップの速度は20Gbpsだ。これにより、帯域幅は320GB/sとなる計算だ。

近年、高解像度テクスチャやレイトレーシングの普及により、ゲームが要求するVRAM容量は増加傾向にある。その中で16GBモデルの存在は、特に1440p解像度での快適なゲーミングや、将来的な要求スペックの上昇を見据えるユーザーにとって心強い。

一方、8GBモデルについては、NVIDIAのRTX 5060 8GBモデルが一部で批判を浴びた経緯もあり、そのパフォーマンスと価格のバランスが注目されるところだ。

消費電力と接続性

Total Board Power (TBP) は、8GBモデルが150W、16GBモデルが182Wとされており、前世代のRX 7600 XT (190W) と比較して同等か、若干低減されている。電源コネクタは標準的な8ピンPCIe電源コネクタ1つで済むようだ。

インターフェースは、最新のPCIe 5.0 x16に対応。ディスプレイ出力もDisplayPort 2.1aとHDMI 2.1bをサポートし、高リフレッシュレートモニターや将来のディスプレイ規格にも対応する。DisplayPort 2.1aは2基、HDMI 2.1bは1基搭載されるとのことだ。

AI性能と新機能「FSR 4」「FSR Project Redstone」

RDNA 4アーキテクチャではAI処理能力も強化されており、RX 9060 XTは64基のAIアクセラレータを搭載。AMDは、アップスケーリング技術「FidelityFX Super Resolution (FSR)」の最新版である「FSR 4」をサポートし、RX 9060 XTのローンチ時には30タイトル以上、その後60タイトル以上に拡大するとしている。

さらに注目すべきは、機械学習を活用した新技術「FSR Project Redstone」だ。これは2025年後半のローンチが予定されており、「ニューラルラディアンスキャッシング」「機械学習レイリジェネレーション」「機械学習フレームジェネレーション」といった高度な機能を含むとされ、画質とパフォーマンスのさらなる向上が期待される。

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性能比較 – RTX 5060 Tiとの直接対決、AMDの主張は?

AMDは、Radeon RX 9060 XT 16GBモデルの性能について、NVIDIA GeForce RTX 5060 Ti 8GBモデル(MSRP 379~380ドル)と比較したデータを公開している。

これによると、40のゲームタイトルにおける1440p解像度・Ultra設定での平均性能で、RX 9060 XT 16GBがRTX 5060 Ti 8GBを6%上回ると主張。価格差(RX 9060 XT 16GBが30~31ドル安い)を考慮すると、価格あたりの性能では15%優位になるとしている。

特にVRAMを多く消費する傾向のあるレイトレーシング環境や高解像度では、16GBのVRAMが有利に働く場面が多いと予想される。このAMDの比較対象の選び方については、8GBのVRAMでは不足しがちな現代のゲーム環境において、16GBモデルの優位性を際立たせる戦略と見られる。

ただし、これらはあくまでAMDによる公式発表の数値であり、実際のゲームにおけるパフォーマンスは独立した第三者によるレビューを待つ必要がある。AMDは、NVIDIAのRTX 5060ローンチ時にレビューが遅れた状況とは異なり、RX 9060 XTに関しては発売日にレビューが解禁されることを示唆しており、その透明性には期待したい。

価格と発売日 – 「350ドル以下最速」は実現するか

  • Radeon RX 9060 XT 16GB: メーカー希望小売価格 (MSRP) 349ドル (日本円換算 約50,000円 ※1ドル145円で計算)
  • Radeon RX 9060 XT 8GB: メーカー希望小売価格 (MSRP) 299ドル (日本円換算 約43,000円 ※同上)
  • 発売日: 2025年6月5日

AMDはこの価格設定により、RX 9060 XT 16GBモデルを「350ドル以下の現行世代GPUで最速」と位置づけている。NVIDIA GeForce RTX 5060 Ti 16GBモデルが429~430ドルであることを考えると、RX 9060 XT 16GBは実に80ドル以上安価であり、価格競争力は非常に高いと言えるだろう。

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RX 9060 XTが市場に与える影響と課題

今回のRadeon RX 9060 XTの発表は、ミドルレンジGPU市場に大きな波紋を投げかける可能性を秘めている。

まず、16GB VRAMモデルの戦略的価格設定は注目に値する。NVIDIAがRTX 5060 Tiで16GBモデルを高めの価格帯に設定したのに対し、AMDはより手頃な価格で大容量VRAMを提供することで、明確な差別化を図ってきた。これは、VRAM不足がボトルネックとなりやすい最新ゲーム環境において、多くのゲーマーに響く選択となるだろう。

一方で、8GB VRAMモデルの存在意義は、引き続き議論の的となるかもしれない。299ドルという価格は魅力的だが、将来性や特定の高負荷ゲームでの快適性を考えると、多くのユーザーは追加投資をしてでも16GBモデルを選択する可能性が高いのではないだろうか。AMDがこのモデルを投入した背景には、エントリーミドル層へのアピールや、NVIDIAのRTX 5060 8GBモデルへの直接的な対抗といった狙いがあると考えられる。

レビュー解禁の透明性も、AMDがNVIDIAとの違いをアピールする上で重要なポイントだ。NVIDIAがRTX 5060のレビュー解禁を遅らせたことで憶測を呼んだのに対し、AMDが発売日当日のレビュー公開を積極的に進めるのであれば、製品に対する自信の表れと受け取られ、消費者の信頼を得やすくなるだろう。

そして、「FSR Project Redstone」への期待は大きい。NVIDIAのDLSSが先行するAIアップスケーリングおよびフレーム生成技術において、AMDがどこまでキャッチアップし、独自の価値を提供できるかが、今後の競争の鍵を握る。

総じて、Radeon RX 9060 XTは、特に16GBモデルにおいて、価格と性能のバランスに優れた非常に競争力のある製品となる可能性を秘めている。ミドルレンジGPU市場の勢力図を塗り替えることができるのか、6月5日の発売と、その後の独立レビューに大きな注目が集まる。ゲーマーにとっては、選択肢が増えることは歓迎すべき状況であり、市場の活性化に繋がることを期待したい。


Sources

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