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AMD Ryzen 7 9800X3D、ASRock製マザーボードで100件超の故障報告 – 原因究明と対策

Y Kobayashi

2025年4月2日

AMDの高性能ゲーミングCPU「Ryzen 7 9800X3D」において、予期せぬ故障や起動不能に陥る事例が100件以上報告されている。特にASRock製マザーボード環境での発生(80%超)が際立っており、原因究明に向けた調査が続いている状況だ。

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100件超の報告、大半がASRock環境で発生

人気CPU「Ryzen 7 9800X3D」は、AMD独自の3D V-Cache技術を搭載し、優れたゲーミング性能から多くのユーザーに支持されている。しかし、その一方で、昨年11月頃から予期せぬ故障や起動不能といった問題報告が、主に海外のオンラインコミュニティRedditなどで散見されるようになった。

Redditユーザーnatty_overlord氏が集計した情報によると、予期せぬ故障や起動不能といった事例報告は累計で120件に達しており、このうち、Ryzen 7 9800X3Dに関連するものは108件と大半を占め、その他にRyzen 9 9950X3Dが2件、非X3DのRyzen 9000シリーズ(開発コード名: Granite Ridge、アーキテクチャ: Zen 5)が10件含まれる。

注目すべきは、これらの問題が発生したマザーボードのメーカー別割合である。

Ryzen 9000シリーズ 問題報告のマザーボード別内訳

ベンダー問題事例数パーセンテージ
ASRock9882%
Asus1613%
MSI54%
Gigabyte11%
(データ出典: Tom’s Hardware)

上記データが示す通り、報告された事例の実に82%がASRock製マザーボード環境で発生している。Asusが13%、MSIが4%、Gigabyteが1%と続く。この数字だけを見るとASRock製品に何らかの問題があるかのように受け取られがちだが、現時点では断定できない。Tom’s Hardwareは、ASRock製マザーボードが比較的安価で人気が高いことが、報告数の多さに繋がっている可能性を指摘している。実際に、問題はエントリーモデルの「B850M-X」からハイエンドの「X870E Taichi」まで、幅広い製品で報告されており、特定のモデルに集中しているわけではない。

また、報告された100件超のケース全てがCPUの物理的な故障を示すものではなく、一部は起動に関する問題である可能性もあるようだ。多くのケースでは、CPUをRMA(Return Merchandise Authorization、製品保証による交換手続き)することで問題が解決しているという。

チップセット別では最新世代での報告が多い

問題が発生したマザーボードをチップセット別で見ると、最新のAMD 800シリーズチップセット(X870, B850)での報告が多い傾向にある。

Ryzen 7 9800X3D 問題報告のチップセット別内訳

チップセット問題事例数パーセンテージ
X8704945%
B8503633%
B6501615%
X67077%
(データ出典: Tom’s Hardware, Ryzen 7 9800X3Dの108件に基づく)

X870チップセット搭載マザーボードでの報告が45%と最も多く、次いでB850が33%となっている。前世代の600シリーズ(B650, X670)でも発生しているが、比較すると800シリーズでの報告が目立つ。X870は通常、堅牢な設計を持つプレミアムマザーボードに採用されるチップセットであり、このデータだけではマザーボードの品質が直接的な原因とは考えにくい。

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原因は依然不明、複数の可能性が浮上

なぜRyzen 7 9800X3D、特にASRock製マザーボードとの組み合わせで問題報告が多いのか、その明確な原因は特定されていない。現状、以下のような複数の可能性が指摘されている。

  1. ファームウェア/BIOSの問題: ASRockは2025年2月に、AM5マザーボード向けに「少数割合のAMD 9000シリーズCPUにおける起動問題を改善する」とされるファームウェアアップデートをリリースしている。これが今回の問題と直接関連するかは不明だが、起動不能に関する報告の一因であった可能性は否定できない。
  2. メモリ関連の問題: ASRock Japanは以前、この問題についてメモリ関連の問題である可能性を示唆し、最新ファームウェアで解決するとの見解を示している。AMD EXPO(Extended Profiles for Overclocking、メモリのオーバークロック設定プロファイル)との関連性を疑う声もある。
  3. 電圧設定の問題: 過去にRyzen 7000X3Dシリーズで発生した、過剰なSoC(System on a Chip)電圧による焼損問題との類似性を指摘する声もある。Wccftechは、一部の報告でCPUに焼損痕が見られるケースと、物理的な損傷がないケースの両方があることを伝えている。手動でのオーバークロックやEXPO有効化の有無に関わらず問題が発生しているとの報告もある。
  4. 物理的な問題(ソケットのゴミなど): ASRockが回収した不具合品のひとつでは、CPUソケット(AM5)内のゴミが原因であり、清掃によって正常動作したケースがあったとTom’s Hardwareは伝えている。ただし、これが全てのケースに当てはまるわけではない。
  5. ユーザーエラー: 自作PC特有の組み立てミスや設定ミスといった、ユーザー側のエラーである可能性も排除できない。
  6. CPU個体差: 特定の製造ロットや個体不良の可能性も考えられるが、現時点ではそれを裏付ける情報はない。

故障が発生するまでの時間も様々で、最短で30分、長い場合は数ヶ月と、非常にランダムであるようだ。中には、RMA交換を2度経験したユーザーもいるという。

今後の動向と注意点

報告されている件数は、Ryzen 7 9800X3Dの総販売数から見ればごく一部である可能性が高い。このCPUは非常に人気が高く、大量に出荷されている。しかし、100件を超える報告は決して無視できる数ではなく、特にASRock製マザーボードを使用しているユーザーにとっては不安要素となるだろう。

現時点では、AMDやASRockを含むマザーボードメーカーからの公式な原因特定や、広範なリコールなどの発表はない。ASRockがファームウェアアップデートで対応を進めている動きはあるものの、問題の全容解明には至っていない。

ユーザーとしては、まずマザーボードのBIOS/ファームウェアを最新の状態に保つことが推奨される。また、CPUの取り付けやメモリ設定(特にEXPOや手動オーバークロック)に不確かな点があれば、デフォルト設定に戻して様子を見るなどの対策が考えられる。万が一、同様の問題が発生した場合は、速やかに販売店やメーカーサポートに連絡し、RMAなどの対応を相談することが重要である。

根本的な原因が特定され、対策が明確になるまでは、引き続き関連情報の収集と、メーカーからの正式なアナウンスを注視する必要があるだろう。


Sources

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