Microsoftの共同創業者Bill Gatesが、半導体大手Intelの現状と、Pat Gelsinger元CEOの手腕について言及した。かつての栄光を失いつつあるIntelが直面する課題と、Gelsinger氏が取り組んでいた再建への道のりを明らかにしている。
Gates氏が指摘するIntelの現状
Bill Gates氏は最近のインタビューで、半導体業界の巨人Intelが「道を見失っている」と指摘した。具体的には、モバイルプロセッサ市場での出遅れや製造プロセスの度重なる遅延により、技術革新と市場シェアの両面で苦戦が続いているという。
Gates氏は、Intelの共同創業者であるGordon Moore氏が常にIntelを最先端の状態に保っていたと称賛する。その上で、現在のIntelは「チップ設計とチップ製造の両面で後れを取っている」と指摘。「AIチップ革命にも乗り遅れた」と述べ、かつての栄光からの転落に「愕然としている(stunned)」と表現。同社の現状に強い懸念を示している。
過去数年間、Intelは競合他社が技術的、財務的に躍進する中で、厳しい状況に直面してきた。
Intelが実際に見舞われた問題の数々は以下の通りだ:
- 14nmから10nmプロセスへの移行の遅延、それに続く7nmの遅延
- AMDへの市場シェアの継続的な喪失
- Appleが自社製シリコンに移行し、Intelとの提携を解消
- セキュリティ脆弱性問題
- Raptor Lakeの問題
- チップの競合他社に対する遅れ
- 財務上の問題、CEOであったPat Gelsinger氏の退任(2024年12月)
特に、Gates氏はIntelがAIチップ革命に乗り遅れたことを指摘。NVIDIA、TSMC、Qualcommなどがチップ製造と設計のさまざまな分野でIntelを上回っており、追いつくことは容易ではないと述べている。
救世主を期待されたPat Gelsinger氏への評価とIntelの今後
Gates氏は、元CEOのPat Gelsinger氏の取り組みを評価しつつも、Intelの回復は困難であるとの見方を示した。
「Pat Gelsingerが『いや、私はデザイン面を修正し、ファブ面を修正するつもりだ』と言ったのは、とても勇気のあることだと思った。私は、彼のためにも、この国のためにも、彼が成功することを願っていた。Intelが回復することを願うが、現段階ではかなり厳しいようだ」。
Intelは、消費者向けCPU市場でもAMDに後れを取っている。Amazon.comのプロセッサ販売チャートではAMDが優勢であり、海外でも同様の傾向が見られる。Steamの調査では、63%のユーザーがIntel CPUを使用しているが、これは過去の遺産とも言える。
深まる競争環境
Intelが直面する最大の課題の一つが、競合他社の急速な台頭だ。特に、AMDのRyzenプロセッサやAppleのMシリーズチップは、性能と電力効率の両面でIntel製品を上回るケースが増えており、同社の市場シェアを脅かしている。
さらに、PC市場全体が縮小傾向にある中、QualcommなどのARMベースのプロセッサメーカーも市場参入を狙っており、Intelの置かれた状況はますます厳しさを増している。
XenoSpectrum’s Take
Bill Gates氏の発言は、Intelの現状に対する厳しい評価であると同時に、同社への期待の裏返しでもある。Intelは、PC市場の黎明期から「Wintel」としてMicrosoftと共に業界を牽引してきた。しかし、スマートフォン革命への乗り遅れ、そして近年のAI革命への対応の遅れは、同社の競争力を大きく損なった。
Intelは、昨年からコスト削減と約15,000人の従業員の解雇を開始した。同社は業界最高の半導体製造施設をいくつか所有し、PCおよびデータセンター向けCPUの大部分を販売しているため、破産する可能性は低い。しかし、次の最高経営責任者がどのようにこの巨大企業を導くかは、まだ不透明である。
Gates氏が指摘するように、Intelがチップ設計と製造の両面で競争力を取り戻すには、多額の投資と時間が必要となる。Broadcomなどが買収に関心を示したとの噂もあったが、ファブを再建するには数百億ドルの資金と数年の歳月が必要となるため、買収は容易ではない。
Intelは、失われた技術的優位性を取り戻し、新たな成長戦略を描けるのか。今後の動向が注目される。
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