中国の国家統計局、科学技術部、財政部は2026年10月16日、2025年の研究開発費が3兆9288.2億元に達し、前年比8.2%増加したと発表した。国内総生産(GDP)に対する比率は2.80%で、2025年の平均為替レートを使ってドルに換算すると約5500億ドルに相当する。国家統計局は研究開発費の総額を米国に次ぐ世界2位としているが、OECD(経済協力開発機構)の購買力平価に基づく統計では、2024年の時点で中国が米国をわずかに上回っていた。一方、基礎研究費の対GDP比は米国の4割弱にとどまり、中国の科学技術相も、研究開発費全体に占める基礎研究の割合が主要先進国より低いことを認めている。研究開発への投資規模では米国に匹敵する中国だが、その資金の使い道には依然として大きな違いがある。

AD

研究開発費の8割以上が試験開発、企業が支出の4分の3を占める

中国国家統計局などが公表した「2025年全国科学技術経費投入統計公報」によると、研究開発費の総額3兆9288.2億元のうち、最も大きな割合を占めたのは試験開発の3兆2012.0億元で、全体の81.5%に達した。基礎研究費は2834.6億元で全体の7.21%、応用研究費は4441.6億元で11.3%だった。前年比の伸び率は基礎研究が13.3%と最も高く、試験開発の8.4%、応用研究の3.2%を上回った。基礎研究費が研究開発費全体に占める割合も前年から0.33ポイント上昇しており、規模はまだ小さいものの、基礎研究への投資が拡大していることが分かる。

研究開発費を支出主体別に見ると、企業が3兆394.4億元で全体の77.4%を占めた。企業の研究開発費は前年比7.7%増加し、初めて3兆元を突破した。政府系研究機関は4572.3億元(8.1%増、全体の11.6%)、高等教育機関は3407.3億元(11.1%増、同8.7%)となっている。研究開発費全体の増加額に対する企業の寄与率は73.7%に達し、中国の研究開発投資を企業が牽引する構造が鮮明になった。

一方、国家財政による科学技術関連支出は1兆3184.5億元で、前年比4.4%増だった。研究開発費全体の伸び率である8.2%を下回り、支出の内訳は中央政府が33.9%、地方政府が66.1%となっている。ただし、財政の科学技術支出と社会全体の研究開発費は統計上の対象範囲が異なるため、両者をそのまま合算したり、同じ支出項目として比較したりすることはできない。

研究開発費の総額は、2023年の3兆3357.1億元から2年間で約5900億元増加した。国家統計局の統計師、羅秋実(Luo Qiushi)氏による解説では、第14次五カ年計画期間(2021〜2025年)の研究開発費の年平均伸び率は10.0%で、米国の8.4%や日本の5.8%を上回ったという。ただし、米国と日本の伸び率は2021〜2024年の平均であり、中国とは比較対象の期間が1年異なる。

GDPに対する研究開発費の比率も上昇している。2025年の2.80%は世界12位に相当し、国家統計局によれば、OECD加盟国の平均である2.72%を初めて上回った。ただし、この比較では中国の2025年の値と、OECDの2024年の推計値を使用しており、対象年が一致していない。OECDの2025年平均はまだ公表されておらず、同じ2024年で比較すると、中国の2.69%はOECD平均の2.72%をわずかに下回っていた。

中国の研究開発費は米国を超えたのか? 為替レートと購買力平価で異なる結果

中国と米国の研究開発費を比較する場合、重要なのがドルへの換算方法だ。国際比較には主に、市場の為替レートを使う方法と、各国の物価水準の違いを調整する購買力平価(PPP)を使う方法がある。同じ人民元建ての研究開発費でも、どちらを使うかによってドル換算額は大きく変わり、米中の順位さえ入れ替わる。

まず、市場の為替レートで計算してみよう。2025年の研究開発費3兆9288.2億元を、国家統計局が公表した同年の平均為替レートである1ドル=7.1429元で換算すると、約5500億ドルになる。年間の研究開発費を比較するため、特定の日の為替レートではなく、対象年の平均レートを使用した計算だ。

同じ方法で2024年を見ると、中国の研究開発費3兆6326.8億元は、同年の平均為替レートである1ドル=7.1217元で約5101億ドルとなる。これは米国の研究開発費1兆93億ドルの約51%に相当する。国家統計局は中国の研究開発費を「米国に次ぐ世界2位」とし、ドイツの3.4倍、日本の3.5倍と説明しているが、これらの倍率に用いた換算基準は明示していない。

一方、購買力平価は、国ごとの物価水準の違いを考慮し、同じ金額で購入できる財やサービスの量が等しくなるように調整する方法だ。例えば、中国の研究開発に必要な人件費やサービスの価格が米国より低ければ、同じドル換算額でも中国の方が多くの研究資源を確保できる可能性がある。この違いを反映するため、購買力平価で計算した中国の研究開発費は、市場為替レートで換算した金額より大きくなる。

2024年の中国の研究開発費は、購買力平価で換算すると、市場為替レートによる約5101億ドルのほぼ2倍になる。OECDの統計から逆算した購買力平価は1ドル=約3.53元で、同年の市場為替レートである約7.12元のほぼ半分だ。中国国内での購買力を基準にすると、人民元建ての研究開発費がより大きなドル額として評価されることになる。

実際に、OECDの主要科学技術指標(MSTI)によると、2024年の中国の研究開発費は、当年価格の購買力平価ドルで1兆283億ドルに達した。米国は1兆93億ドルで、中国が約1.9%上回っている。同じ統計で日本は2338.3億ドルとなっており、中国の約23%、中国から見れば日本の約4.4倍に相当する。国家統計局が示した「日本の3.5倍」という値とは異なるが、換算方法が同じとは限らないため、単純にどちらかが誤っているとは判断できない。

もっとも、この結果には留意点がある。OECDは米国の研究開発費について、統計上の定義に相違があることを注記している。また、米国の国立科学財団(NSF)に属する国立科学工学統計センター(NCSES)が公表した2024年の推計値は9930億ドルで、今後改定される可能性がある。ただし、この推計値を使っても、中国の購買力平価換算額が米国を上回るという結果は変わらない。

OECD自身も、2026年3月の統計解説で、購買力平価による比較では中国の研究開発費が2024年に米国へ追いつき、わずかに上回ったと説明している。ただし、現在利用できる購買力平価はGDP全体を対象に設計されたもので、研究開発に特化した価格指数ではない。研究機器の輸入費用や海外研究者の雇用費用などを直接比較する指標でもなく、購買力平価の改定によって順位が変わる可能性もある。さらに、米国の2025年の研究開発費はまだ公表されていないため、2025年同士で中国が米国を上回ったかどうかは判断できない。

AD

基礎研究費の対GDP比は米国の約37%にとどまる

研究開発費の総額では米国に匹敵する中国だが、基礎研究に限ると状況は大きく異なる。2025年の中国の基礎研究費は2834.6億元で、同年の平均為替レートでは約397億ドルに相当する。前年比13.3%という伸び率は研究開発費全体の8.2%を上回っており、中国が基礎研究への投資を拡大していることは確かだ。しかし、研究開発費の総額が大きいことと、経済規模に対して基礎研究へ十分な資金を投じていることは、必ずしも同じではない。

国家統計局は、中国の基礎研究費の総額も米国に次ぐ世界2位で、日本の約2.3倍、韓国の約2.8倍に相当すると説明している。ただし、ここでもドル換算の基準は明示されていない。一方、各国のGDPに対する基礎研究費の比率で比較すると、中国の水準が主要先進国を大きく下回っていることが分かる。

OECDの2024年の統計によると、基礎研究費の対GDP比は中国が約0.19%だった。米国は約0.50%、日本は約0.42%、韓国は約0.75%で、いずれも中国を大きく上回っている。丸める前の数値を使うと、中国は0.185%、米国は0.497%であり、中国の基礎研究費の対GDP比は米国の約37%にすぎない。

基礎研究費の対GDP比(2024年)横棒グラフ。カテゴリ 4 件、系列: 基礎研究費の対GDP比(単位: %)中国中国中国 — 基礎研究費の対GDP比: 0.19%0.19日本日本日本 — 基礎研究費の対GDP比: 0.42%0.42米国米国米国 — 基礎研究費の対GDP比: 0.5%0.5韓国韓国韓国 — 基礎研究費の対GDP比: 0.75%0.75単位: %
データを表で見る
基礎研究費の対GDP比 (%)
中国0.19
日本0.42
米国0.5
韓国0.75
基礎研究費の対GDP比(2024年)米国は定義相違の注記付き、日本は推計値、韓国は暫定値出典: OECD MSTI(2026年10月18日取得)

日本と比較しても中国の比率は半分に届かず、韓国の約0.75%は中国の約4倍に相当する。ただし、基礎研究に分類する活動の範囲は各国の統計調査における申告に依存しており、国によって定義や集計方法が完全に一致しているわけではない。このため、数値の差をそのまま各国の研究能力の差と解釈することはできない。

ここで注意したいのが、「基礎研究の比率」という言葉には異なる二つの指標があることだ。中国の統計公報にある7.21%は、基礎研究費が研究開発費全体に占める割合である。一方、OECDの0.19%は、基礎研究費がGDPに占める割合を示している。この二つは分母が異なるが、研究開発費の対GDP比と、研究開発費全体に占める基礎研究費の割合を掛け合わせることで関係づけられる。

例えば、2024年の中国では研究開発費の対GDP比が2.69%、そのうち基礎研究費の割合が6.88%だった。両者を掛け合わせると、基礎研究費の対GDP比は約0.19%になる。同様に米国では、研究開発費の対GDP比3.44%に基礎研究費の割合14.4%を掛けると、約0.50%となる。

2025年の中国の数値で同じ計算をすると、2.80%×7.21%で、基礎研究費の対GDP比は約0.20%となる。米国の2025年の値は未公表なので、2024年の約0.50%と直接比較することはできない。ただし、中国の基礎研究費の割合が7%台にとどまる場合、研究開発費全体の対GDP比が仮に3.0%まで上昇しても、基礎研究費の対GDP比は約0.22%(3.0%×7.21%)にとどまる。基礎研究への投資を米国並みに近づけるには、研究開発費全体を増やすだけでなく、その配分を変える必要があることを示す計算だ。

中国の科学技術相も認める基礎研究の弱点、企業の関与は米日より低い

こうした基礎研究への投資の少なさは、中国政府自身も課題として認識している。科学技術相の陰和俊(Yin Hejun)氏は、『求是』2026年第18号に掲載された署名論文で、中国の基礎研究費が研究開発費全体に占める割合は7.08%にとどまり、科学技術分野の主要先進国の15〜20%という水準には大きな開きがあると指摘した。

この7.08%という数字は、陰氏が2026年3月5日の全国人民代表大会(全人代)期間中の記者会見で示した速報値に基づいている。当時は研究開発費が3.92兆元を超え、基礎研究費は約2800億元となり、その割合が初めて7%を超えたと説明していた。その後、10月に公表された確定値では基礎研究費が2834.6億元、割合は7.21%へと上方修正されている。したがって、陰氏の論文にある7.08%と最新の統計にある7.21%は、異なる集計段階の数値として区別する必要がある。

陰氏が特に問題視したのは、企業による基礎研究への投資が少ないことだ。中国では企業による投資が基礎研究費全体の10%未満にとどまるのに対し、同氏の論文によれば、米国は約35%、日本は約45%を占めている。中国企業の研究開発費は製品の改良や製造工程の改善に集中しており、長期的な成果を目指す基礎研究に積極的に投資する動機が弱いという。また、基礎研究に従事する人員は研究開発人員全体の約8%で、欧米先進国の15〜25%を大きく下回っている。

研究環境にも課題が残る。陰氏は、生命科学分野の一部では、高性能な試薬や特殊な研究・検査機器、中核となる科学ソフトウェアなどについて、依然として輸入への依存度が高いと指摘した。研究開発費の総額が拡大しても、研究に必要な人材や設備、ソフトウェアを国内で十分に確保できるとは限らない。基礎研究を強化するには、資金だけでなく、それを支える研究体制や技術基盤の整備も求められる。

なお、先に示した「企業が研究開発費全体の77.4%を占める」という数字と、「企業の基礎研究投資は基礎研究費全体の10%未満」という数字は、矛盾するものではない。前者は基礎研究、応用研究、試験開発を含む研究開発費全体を分母とし、後者は基礎研究費だけを分母としている。国家統計局は、研究開発費全体に占める企業の割合について、中国の77.4%は米国の77.6%、日本の78.9%に近い水準だと説明している。しかし、研究開発費の大部分を企業が負担していても、その投資が基礎研究ではなく製品開発や技術改良に集中しているため、基礎研究への企業の関与には大きな差が生じている。

また、陰氏が挙げた「主要先進国の15〜20%」という水準については、論文中に対象年や具体的な出典が示されていない。OECDの統計から計算した米国の14.4%、日本の11.6%とは必ずしも同じ定義や期間に基づく数値ではないため、直接比較する際には注意が必要だ。

AD

中国は2030年に研究開発費5.5兆元を目指す、米国は研究予算の削減案を審議中

中国は今後も研究開発投資を拡大する方針だ。2026年3月に採択された第15次五カ年計画綱要では、2026〜2030年の社会全体の研究開発費について、年平均7%以上の増加を目標に掲げている。これは第14次五カ年計画でも掲げられていた目標と同じ水準だ。仮に2025年の3兆9288.2億元を起点に毎年7%ずつ増加すると、2030年の研究開発費は約5兆5100億元に達する計算になる。ただし、これは編集部による単純計算であり、中国政府が2030年の具体的な支出額として公表した目標値ではない。

一方、米国では研究関連の連邦予算をめぐり、政権の削減方針と議会の判断に大きな隔たりがある。2026会計年度の予算編成では、大統領の予算要求が米国立衛生研究所(NIH)の予算を279億ドルとし、前年度比40.6%の削減を求めた。また、全米科学財団(NSF)についても39億ドル、同56.9%減を要求していた。しかし、議会はこうした大幅削減をほぼ退け、NIHには475億ドル(約1%増)、NSFには約88億ドル(約3%減)を配分した。議会調査局(CRS)の報告でも、政権の要求額と実際の歳出額に大きな差があったことが確認できる。

現在審議の対象となっているのは、2026年4月3日に公表された2027会計年度の予算要求だ。Harvard大学の連邦関係室による集計では、NIHへの要求額は411.64億ドルで前年度比12.8%減、NSFは39.632億ドルで同54.7%減となっている。ただし、これらはあくまで政権の提案であり、議会が成立させた予算ではない。2026会計年度と同様に、議会での審議によって最終的な金額が変わる可能性がある。

2027会計年度は2026年10月1日に始まっているが、通年の歳出法はまだ成立していない。米国立衛生研究所の告知によると、現在は暫定的な予算措置である「2027会計年度継続歳出・延長法(Continuing Appropriations and Extensions Act, 2027)」に基づいて政府機関が運営されている。この措置は2026年12月11日まで、原則として2026会計年度の成立済み予算に基づく資金供給を継続するものであり、2027会計年度のNIHとNSFの通年予算は依然として確定していない。

ただし、中国の研究開発費の増加目標と、米国のNIHやNSFの予算削減案を直接比較することはできない。中国の目標は企業や研究機関、大学などを含む社会全体の研究開発費を対象としているのに対し、米国の予算要求は連邦政府による特定機関への支出に関するものだ。対象範囲が異なるため、これらの数字だけで米中の研究開発投資が今後どのように変化するかを判断することは難しい。

それでも、中国が基礎研究の弱点を克服できるかどうかは、今後の重要な注目点となる。陰氏が指摘したように、中国では企業の基礎研究投資が基礎研究費全体の10%未満にとどまり、基礎研究に従事する人員も研究開発人員全体の約8%しか占めていない。こうした構造が変わらなければ、研究開発費の総額が拡大しても、基礎研究の割合を主要先進国の水準へ近づけることは容易ではない。

今後、まず注目されるのは、12月11日に期限を迎える米国の暫定予算措置と、中国が次に公表する2026年分の研究開発統計だ。米国で研究関連予算がどこまで削減されるのか、中国では基礎研究への配分が引き続き拡大するのかが、両国の研究投資の方向性を判断する材料になる。研究開発費の総額で米国に並ぶ段階に達した中国にとって、次の課題は投資規模の拡大だけでなく、基礎研究を支える企業、人材、研究環境をどこまで強化できるかにある。