任天堂が2026年11月5日に発表した2027年3月期の中間決算では、営業利益が前年同期比49.1%増の2,165億円に達した。しかし、この大幅増益には、第1四半期に計上した米国関税の還付が大きく寄与している。還付を計上していない7〜9月期だけを見ると、営業利益は前年同期から16.3%減少した。任天堂は通期業績予想を据え置いているが、その予想から逆算した下期の営業利益も前年同期比28.6%減となる見込みだ。中間期の増益率だけでは見えてこない、任天堂の収益構造と今後の課題を決算資料から読み解く。

AD

中間期49%増益を支えた約3億ドルの関税還付

任天堂の2026年4〜9月期の売上高は、前年同期比12.1%減の9,660億円だった。主な要因はNintendo Switch 2の販売台数減少で、前年同期の1,036万台から649万台へ37.4%落ち込んだ。これは任天堂が公表するセルイン(流通向け販売など)の数字であり、消費者への実売台数とは異なる。一方、親会社株主に帰属する中間純利益は11.0%増の2,209億円となり、売上高と利益で対照的な結果となった。

ハードウェアとは対照的に、ソフトウェアの販売は好調だった。Nintendo Switch 2向けソフトの販売本数は前年同期比18.8%増の2,449万本、Nintendo Switch向けも6.8%増の6,573万本となった。ゲーム専用機のデジタル売上高は60.5%増の2,496億円に達し、ソフトウェア売上高に占めるデジタル売上の割合も前年同期から6.2ポイント上昇して60.7%となっている。

売上高が減少するなかで営業利益が大幅に伸びた理由について、任天堂は決算説明資料で、ソフトウェアの売上構成比の上昇と、米国関税の還付を挙げている。特に大きかったのが、米国の国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税の還付だ。任天堂は第1四半期に約3億ドルの還付額を売上原価の減額として計上したと説明している。還付対象となった関税は、主に販売価格へ転嫁せず、任天堂自身が負担していたものだった。

すでに費用として計上していた関税が還付されれば、その分だけ売上原価が減少し、営業利益が押し上げられる。つまり、商品販売による利益が増えなくても、還付という一時的な要因で利益が大きく伸びることになる。実際、中間期の売上総利益率は前年同期の36.2%から50.4%へ14.2ポイント上昇した。ソフトウェアの売上構成比が高まった効果もあるが、関税還付が利益率改善に大きく寄与したことは間違いない。

還付額の規模を日本円に換算すると、中間期の平均為替レートである1ドル159.29円を使った場合、約480億円となる。任天堂は実際に計上した円換算額を公表しておらず、この数字はあくまで概算だ。それでも、中間期の営業利益増加額714億円の約3分の2に相当する。営業利益49.1%増という数字を評価する際には、この一時的な押し上げ効果を切り離して考える必要がある。

関税還付のない7〜9月期は16%減益、下期予想も29%減益

今回の増益が関税還付による一時的なものなのかを見極めるには、還付を計上していない7〜9月期の業績を確認することが重要だ。任天堂が8月に公表した第1四半期決算短信によると、4〜6月期の営業利益は前年同期の569億円から1,426億円へ大幅に増加した。しかし、中間期の累計営業利益から第1四半期の数字を差し引くと、7〜9月期の営業利益は739億円となり、前年同期の883億円から16.3%減少している。同期間の売上高も前年同期の5,272億円から4,482億円へ15.0%減少した。

この7〜9月期単独の数値は、任天堂が独立した四半期実績として開示したものではなく、第1四半期と中間期の決算短信に記載された累計値の差から編集部が算出したものだ。計算には各資料の百万円単位の数値を使用し、億円単位に丸めている。関税還付のなかった期間に売上高と営業利益がともに前年を下回ったことから、中間期の大幅増益をそのまま足元の収益成長と捉えることは難しい。

為替の影響にも注目したい。任天堂は第1四半期の決算説明資料と今回の中間決算説明資料の両方で、営業利益に対する為替の押し上げ効果を約222億円としている。累計期間を延ばしても影響額がほぼ変わらないため、7〜9月期単独では為替による営業利益への寄与が、開示された概算値の範囲でほぼゼロだったと推定できる。つまり、7〜9月期の減益は、第1四半期にあった関税還付や為替の追い風がほとんどない状況で起きたものといえる。

さらに、任天堂が据え置いた通期業績予想からも慎重な見通しが読み取れる。通期の営業利益予想は3,700億円で、中間期の実績2,165億円を差し引くと、下期の営業利益は1,535億円となる。前年度の下期営業利益2,150億円と比較すると28.6%の減益だ。売上高も通期予想2兆500億円から中間期の9,660億円を差し引くと、下期は1兆840億円となり、前年同期の1兆2,135億円から10.7%減少する計算になる。下期の営業利益率は14.2%と、前年下期の17.7%や今期上期の22.4%を下回る見通しだ。

ただし、この下期予想はNintendo Switch 2の販売台数が引き続き減少することを前提にしているわけではない。任天堂の通期販売台数予想は1,650万台で、中間期の649万台を差し引くと、下期には1,001万台を販売する計算になる。前年度の下期販売台数は950万台だったため、予想どおりなら下期の販売台数は前年同期比5.4%増加する。それにもかかわらず、営業利益は約29%減少するという見通しになっている。

任天堂は通期業績予想について、1ドル150円の為替レートを前提とし、メモリを中心とする部材価格の高騰や関税の支払いなどによる原価への影響として、約1,000億円を織り込んでいる。ただし、会社はこれらを下期減益の直接的な理由として説明しているわけではない。約1,000億円は通期を対象とした数字であり、すべてが下期に発生するという意味でもない。また、第1四半期に計上した関税還付が、5月8日に公表した通期予想にどこまで織り込まれていたかも明らかではない。仮に還付が予想に含まれていなかった場合、下期29%減益という逆算値は、その上振れ分を反映していない通期予想から生じた数字ということになる。

AD

ソフトウェアの成長で減益を補えるか、今後の注目点

もっとも、関税還付を除いても、任天堂の収益力が改善していると評価できる材料はある。概算の還付額約480億円を中間期の営業利益から差し引いても、約1,690億円の利益が残る。これは前年同期の1,451億円を約16%上回る水準だ。さらに、ソフトウェアの売上構成比が高まり、デジタル売上高も60.5%増加していることから、ハードウェアの販売台数が減少しても利益を確保しやすい収益構造へ移行しつつあると考えられる。

ただし、こうした改善が中間期を通じて続いたわけではない点には注意が必要だ。増益の大部分は4〜6月期に集中しており、ソフトウェアやデジタル販売が伸びた7〜9月期でも営業利益は前年を下回った。7〜9月期の営業利益率は16.5%で、前年同期の16.7%とほぼ同水準にとどまっている。利益率は大きく悪化していないものの、売上高の15.0%減少を補って増益を確保するには至らなかった。

今後の業績を左右するのは、Nintendo Switch 2の販売拡大とソフトウェアの収益性だ。任天堂は10月発売の『Nintendo Switch Sports Resort』、11月発売の『ゼルダの伝説 時のオカリナ』、2027年1月発売予定の『メトロイド ラヴェナス』などを挙げ、新作タイトルの継続的な投入によってNintendo Switch 2の普及を拡大する方針を示している。また、既存タイトルの販売促進やNintendo Switchの利用基盤の維持にも取り組むとしている。

為替動向も業績を左右する要因となる。実際の円相場が会社の想定する1ドル150円より円安で推移すれば、海外売上の円換算額などを通じて利益が押し上げられる可能性がある。一方、メモリ価格の上昇や関税負担が想定を上回れば、ハードウェアの採算を圧迫しかねない。現時点では、どの要因が下期の利益にどれほど寄与するかを正確に見積もることは難しい。

今後の決算で注目すべき指標は、下期の営業利益1,535億円だ。任天堂が通期予想を上方修正するか、最終的な下期営業利益がこの水準を上回れば、今回据え置いた予想が慎重だった可能性が高まる。関税還付という一時的な要因がなくなった後も、ソフトウェアの販売拡大と収益構造の改善によって利益を伸ばせるのか。Nintendo Switch 2の普及2年目を迎えた任天堂にとって、下期はその収益力が試される重要な期間となる。