Googleは2026年10月8日、東京を含む10都市の食の流行や人気店をまとめた「Fan-Favorite Dining List(年間飲食店リスト)」を初めて公開した。レビューや評価に加え、利用者が店への道順を調べた行動も使い、街ごとの注目店を選んでいる。東京では「お餅」に触れるレビューが前年比168%増え、ロンドンではほうじ茶への言及が伸びた。ただし、こうした数字が示すのは食べた量や店の売上ではなく、Googleマップに残った利用者の関心である。店選びに生かすには、リストの中で使われる人気の物差しを読み分ける必要がある。

AD

新しいのは年間リスト、推薦機能は以前からある

今回の対象は東京のほか、ニューヨークやロンドンなど計10都市だ。米国ではアトランタとシカゴも対象になる。西海岸のサンフランシスコ、シアトルも含む。さらにメルボルン、モントリオール、サンティアゴが選ばれている。世界のあらゆる都市の飲食店を順位付けした企画ではなく、選ばれた都市の食の動きを切り取るリストである。

「2026年版」の対象期間にも注意したい。公式サイトの選定説明によると、使った情報は2025年9月1日から2026年8月31日までのものだ。ローカルガイドのレビューや評価、集計した経路検索を基に、最終確認を経て選定したという。年末までの動きを含む総決算ではなく、夏までの情報を振り返る企画と読める。気に入った都市のリストはGoogleマップに保存し、その後の店探しに使える。

一方、Googleマップが飲食店の推薦を始めたわけではない。日本では2024年4月10日の発表で、人気急上昇の店、定番の店、隠れた名店を紹介するリストを国内6地域に展開すると案内していた。ユーザーの投稿だけでなく、食べログ編集部や一休のおすすめも紹介していた経緯がある。

Googleは今回も、アプリの探索タブで見られる週次リストを年間リストと並べて案内している。以前からある推薦を、期間を区切った企画として見せる入口が加わった。毎週の動きと年間の振り返りを、別々の場面で使えるようにする追加である。

東京のお餅、レビュー言及168%増の読み方

Googleの発表によると、東京で「お餅」に触れるレビューは前年比168%増えた。店の例にはツバメヤ 日本橋店などが挙がる。海外では冷たいデザートの再流行も見られ、ニューヨークでフローズンヨーグルトに触れるレビューが320%増えたという。

都市 注目された食品 レビュー言及の前年比
東京 お餅 168%増
ニューヨーク フローズンヨーグルト 320%増
ロンドン ほうじ茶 114%増
シアトル ドーサ 136%増

※Googleが2026年版の発表で示した値。レビュー内で各食品に言及した動きであり、販売数や来店人数の増加率ではない。ドーサは南インドの料理である。

ロンドンのほうじ茶に加え、抹茶も多くの対象都市で言及が増えている。日本の茶や菓子が海外でどのように話題になるかを追う手掛かりになる一方、東京のお餅の数字を、そのまま日本人の消費習慣が急変した証拠と読むのは早い。

Googleはお餅への言及増について観光客の増加が影響した可能性を挙げている。しかし、発表には投稿者の居住地や言語別の内訳は示されていない。地元でおなじみの菓子でも、訪れた人が新鮮な発見としてレビューに書けば、地図上の話題として目立ち得る。誰が書いたかで、同じ伸び率の意味も変わる。

また、増加前後のレビューの絶対件数は公表されていない。全レビューに占める割合も分からないため、ニューヨークの320%と東京の168%を比べて、食品そのものの需要規模を順位付けすることはできない。ここから分かるのは、各都市でどの食品がレビューに登場するようになったかという動きだ。

AD

経路検索とレビューは、別々の人気を測る

Googleが東京で経路検索の最も多かった飲食店として挙げたのは、海鮮ブッフェダイニング 銀座八芳である。ニューヨークではKatz's Delicatessen、ロンドンではFallowが同じ切り口で紹介された。名前だけを並べるより、「どんな行動を基に選ばれた店なのか」を添えると、この企画の性格が分かる。

経路検索の多さ、レビュー内の話題、用途別の評価は、それぞれ別の指標である。 Googleの年間リスト本体には、それぞれに対応する分類がある。公式サイトで説明された行動と利用場面から、各分類の使いどころをまとめた。

リストの切り口 主に見ている情報 店選びで分かること
経路検索で人気の店 店への道順を調べる行動 多くの人が行き先として関心を持った店
レビューで話題の料理 食品名への言及の伸び その街で話題になった料理と提供店
目的別のおすすめ お祝い、雰囲気、価格と量などへの評価 利用場面に合わせて検討できる店

対象は同じ2026年版の10都市で、選定期間も前述の期間である。ただし、表はGoogleが公開した分類の意味を整理したもので、店舗の点数を独自に計算し直したものではない。

経路検索には、実際に訪れようとする関心が表れやすい。しかし、道順を調べた人が来店したか、予約を取れたか、食事に満足したかまでは、その行動だけでは確かめられない。レビューで料理名が急増した店も、売上が同じ割合で増えたとは限らない。目的別の評価には、味以外の雰囲気や使いやすさも入る。

Googleは最終確認を行ったとしているものの、選定説明では各データの重みや最低レビュー数、その確認方法の詳細までは明かしていない。したがって、このリストは利用者の行動や感想から候補を見つける資料として使うのが妥当だ。掲載されたことを、専門家による実食審査や料理の品質保証と同じ意味にはできない。

話題の店から、自分に合う一軒へ

Googleは年間リストの公開に合わせ、店を探すための既存機能も紹介した。週次リストでは、人気が急上昇した店を「Trending」、地域の新しいお気に入りを「Gems」、定番を「Top」で追える。気になる店を保存すれば、年間の振り返りで出会った候補を、その後の予定につなげられる。

さらに、Geminiを使った対話検索のAsk Mapsでは、食べたい料理や席の条件を言葉で入力できる。Googleが示した例には、屋外席のあるデザートの店や、ミルクシェイクと一緒に食べられるハンバーガー探しがある。年次リストが街全体の関心を見せるのに対し、対話検索はその日の自分の条件を重ねる使い方だ。予約の取り方や駐車場所、おすすめ料理など、来店前のヒントも店舗ページで確かめられる。

ただし、店を探せる地域と、注文まで進められる地域は別に見なければならない。Googleは8月6日の発表でAsk Mapsの展開先に日本を含めた一方、食事注文などは米国から提供すると説明していた。同日時点の連携先はSquareとToastで、Uber Eatsは近日対応としていた。10月8日の案内ではUber Eatsも配送の連携先に含まれるが、日本で注文できるという地域条件の更新は示していない。

飲食店にとっても、経路を検索されること、料理がレビューに残ること、お祝いなどの用途で選ばれることは、異なる強みである。今回の分類は、自店がどんな理由で関心を集めているかを考える手掛かりになる。ただ、リストへの掲載による来店や売上への効果が測定されたわけではない。

利用者が最後に確かめるべきなのは、人気の大きさより、食べたい料理や予算、求める雰囲気に合うかどうかだ。年間リストで候補を見つけ、店舗の情報で条件を確かめる。その使い分けができれば、街の流行を眺める企画は、自分の次の食事を決める資料になる。