IntelのLip-Bu Tan CEOが2026年10月12日、シンガポールのDBS主催会合で、AI需要は今後2〜3年で大きく減速しないとの見通しを示した。CNBCによると、同氏は同時に資本コストと投資回収への懸念にも言及している。AI向けの計算設備を求める動きが強くても、増設する資金を集め、利用から収益を生む条件までそろうとは限らない。ハードウェアの供給不足が続く局面で、半導体企業の経営者が語ったのは、その先の投資を何が支えるかという問題だった。

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「2〜3年」は何の見通しか

CNBCの会合報道は、IntelのTan氏の見通しを、AIアプリケーションの普及と計算需要を背景に、今後2〜3年で大きな減速は起きにくいという趣旨で伝えている。これは全種類の半導体について、不足が解消する年月を約束した発表ではない。部品の納期を予測する数字として使うには、対象が広すぎる。

同席したBroadcomのHock Tan CEOは、計算基盤の需要が供給を上回る状態が2029年、場合によっては2030年まで続き得るとの見方を示した。一方で、個別部材の供給制約には改善の余地があると見ている。両氏の見通しを合わせても、すべての部品が同じ期間、同じ程度に不足するという結論にはならない。

DBSの公式プログラムで、両CEOの登壇枠に掲げられていたのは、AIが次の1兆ドルの価値をどこで生むかという問いである。供給量を増やす企業と、その設備を利用する企業が、どのように価値を生み出すのか。需要の強さと採算の話が同じ会合で語られたのは、そのためだ。

設備が足りても、投資は回収できるか

IntelのTan氏は、目前の課題として資本と資本コストを挙げ、長期的には「人々は投資収益率を見たい」と述べた。CNBCが伝えた発言の日本語訳である。BroadcomのTan氏も資金調達が大きな制約になる可能性を指摘しており、計算設備への強い需要と、投資を続ける難しさを並べて捉えている。

資本コストは、設備の購入代金とは別に考える必要がある。資金を借りれば利息がかかり、出資を受ければ投資家がそれに見合う収益を求める。部品の供給が増えても、資金調達の負担まで同じように軽くなるわけではない。

さらに、設備を手に入れた後には、利用によって費用を回収する仕事が残る。AIの処理を大量に走らせられることと、その処理が顧客の支払いや業務の効率改善につながることは別の段階だ。供給不足は導入時期を遅らせ、資本コストは事業が負担する費用を増やす。そして投資回収は、導入したAIがどれだけ役に立ったかを問う。

このように考えると、需要への強気な見方と採算への慎重さは両立する。設備を求める注文があることは、購入する側の利益を保証しないからだ。AIの能力が伸びても、業務へ組み込むまでの時間や運用費によって、投資の成果には差が生じ得る。

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DBSが示した「経済価値」の読み方

会合を主催したDBSは、AIを使う側として具体的な数字も公表している。9月30日の公式発表によれば、2025年には2000超のAIモデルを430超の用途で展開し、データ分析とAI・機械学習から約10億シンガポールドルの経済価値を生んだという。同社による集計であり、AI活用が実験から継続的な業務利用へ広がった規模を示すものだ。

ただし、この10億シンガポールドルを、そのままAI事業の売上や純利益と読むことはできない。対象は生成AIだけでなく、データ分析とAI・機械学習を含む。発表では投資額や算定式の内訳が示されていないため、投資収益率へ換算することも難しい。

「価値が生まれた」と「投入した資金を回収できた」の間には、確認すべき情報がある。費用をどこまで含めたか、成果をどの期間で測ったか、AIを使わなかった場合と何を比べたかによって評価は変わる。DBSの数字は活用規模を知る材料になる一方、ほかの企業やデータセンター投資の採算へ、そのまま当てはめられる指標ではない。

投資回収を判断するには、モデルの導入数に加え、業務で得られた成果と、それに必要だった費用を対応させる必要がある。半導体の出荷量が増えたという供給側の成果だけでは、利用側が追加投資を続けられるかまでは分からない。

安く使えるAIが、需要と採算を変える

ReutersがAsiaOneに配信した記事では、IntelのTan氏は中国のAIモデルのトークン費用の低さと普及の速さにも触れている。DeepSeek、Kimi、GLMの性能を「十分に良い」と評価し、用途に適したモデルは市場が選ぶとの考えを示した。これは同氏の評価であり、モデル間の優劣を独立した試験で確定した結果ではない。

トークンは、モデルが文章を処理する際の単位である。その費用が下がれば、同じ処理量に必要な支出を抑えやすくなる。ただし、安いモデルへ切り替えたときに必要な品質を保てるか、業務全体でどれだけ費用を減らせるかは別途確かめる必要がある。利用単価の低下を、そのまま半導体需要の減少や供給不足の解消へ結び付けることはできない。

AI投資を追う際には、設備の増設計画と並べて、利用企業が公表する成果の測り方を見たい。費用と期間をそろえて業務改善や収益への寄与を示せるようになれば、企業は次の設備投資を需要への期待だけでなく、実際の利用成果に基づいて判断できる。