NVIDIAのJensen Huang CEOが、韓国SK hynixに対し、次世代高帯域メモリ「HBM4」の供給開始時期を6ヶ月前倒しするよう要請したことが明らかになった。SK GroupのChey Tae-won会長が11月4日、ソウルで開催されたSK AI SUMMIT 2024で明らかにした。この要請は、AI計算需要の急増に伴うハイエンドメモリの需要拡大を反映したものである。
次世代AIチップ開発を巡る供給網の再編
NVIDIAは現在、世界のAIチップ市場の80%以上のシェアを握っている。同社のAI GPU開発において、高帯域メモリは処理性能を左右する重要なコンポーネントとなっている。SK hynixは当初、HBM4の供給開始を2025年後半に予定していたが、この要請により最短で2025年初頭での供給開始が視野に入ってきた。
SK hynixは現在、12層構造のHBM3Eを量産段階に移行させており、さらに高性能な16層HBM3Eの開発も進めている。同社のKwak Noh-Jung CEOは48GB容量の16層HBM3Eについて、2025年初頭のサンプル出荷を予定していることを明らかにした。
一方、競合のSamsung Electronicsも巻き返しを図っており、2024年前半には改良版HBM3Eの生産を開始し、同年後半にはHBM4の量産体制の確立を目指している。HBM4は従来のメモリチップとは一線を画す革新的な設計を採用しており、メモリとロジック半導体を単一パッケージに統合することで、パッケージング工程を簡素化し、性能効率を大幅に向上させる。TSMCなど半導体受託生産大手を巻き込んだ供給網の再編は、AI半導体市場の勢力図を塗り替える可能性を秘めている。
この発表を受け、SK hynixの株価は6.5%上昇した。同社の株価は年初来で約36%上昇しており、AIメモリ需要の拡大による業績改善期待が反映されている。特に、NVIDIAへの供給を通じた収益貢献が注目されている。
Xenospectrum’s Take
NVIDIAによるHBM4の供給前倒し要請の背景には、次世代AIアーキテクチャ「Rubin」の開発加速という明確な戦略的意図が読み取れる。これは単なる製品開発の前倒しではなく、AI半導体市場における覇権維持を賭けた重要な布石といえる。特にHBM4のような革新的メモリ技術の早期導入は、性能面での差別化を通じて、AI計算基盤における同社の競争優位性をさらに強化する効果が期待できる。この動きは、SK hynixの株価に6.5%の上昇をもたらしただけでなく、AI半導体産業全体のイノベーションサイクルを加速させる触媒となる可能性が高い。メモリチップメーカー間の開発競争は、結果としてAI技術の進化を促進し、産業構造の転換点となることが予測される。
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