NVIDIAが、AI検索を手がけるPerplexityへの追加出資を協議している。The Informationが2026年8月24日に報じたもので、想定評価額は300億ドル超。1年前の資金調達時より5割以上高い。両社は合意を発表しておらず、投資額や持分も分からない。それでも今回の交渉は、Perplexityが検索の回答画面から、複数のモデルと外部ツールを動かすエージェント基盤へ事業を広げた時期と重なる。NVIDIAにとっては、その仕事量が増えるほどGPU、CPU、推論ソフトウェアへの需要も膨らむ関係にある。

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300億ドル評価を押し上げた「Computer」

Perplexityの前回評価額は、2025年9月の資金調達で200億ドルだったと報じられている。今回の300億ドル超は、約1年で少なくとも100億ドルを積み増す水準だ。評価を押し上げた材料としてThe Informationが挙げたのが、急増した売上高である。

同社の年換算売上高は、2026年初めの2億5,000万ドル未満から7億5,000万ドル超へ増えたという。8カ月足らずで3倍を上回る伸びになる。ただし、これは非公開企業について報じられたランレートであり、監査済みの年間売上高でも、契約が毎年更新されることを示すARRでもない。顧客の継続率や値引き、売上総利益率も開示されていない。

それでも、伸び方には製品の変化が表れている。Perplexityは2月26日、「Perplexity Computer」を投入した。開始時点では19のAIモデルを使い分け、調査からコード作成、デプロイまでを一つの会話から実行するクラウド型エージェントだった。サービスはMax会員からProや企業向けへ広がり、現在は処理量に応じてクレジットを消費する。2026年8月6日時点の案内では100クレジットが1ドルに相当し、Pro利用者は初期付与分を使い切ると追加購入する仕組みだ。

従来型の回答生成は、利用者へ返答した時点で処理が区切られる。Computerは外部サービスを呼び出し、コードを走らせ、結果を検証してから次の操作へ進む。1件の依頼が多くのモデル呼び出しと実行時間を生むため、利用量に応じた課金を組み込みやすい。報じられた7億5,000万ドルを基準に300億ドルを割ると約40倍になるが、双方とも「超」とされた数字なので正確な倍率ではない。Computerが売上高増加の一部を生んだとされる以上、その利用が継続収益として定着するかは300億ドル評価を検証する材料になる。

出資先からVeraの実証相手へ

NVIDIAとPerplexityの関係は今回始まったものではない。NVIDIAは2024年1月、Perplexityが実施した7,360万ドルのシリーズBで新規投資家に加わった。同年4月の6,270万ドル調達でも、PerplexityはNVIDIAを再出資した既存投資家に挙げている。

資本関係の外側でも接点は増えた。Perplexityの開発者向けAPIは、AWS上のNVIDIA A100とH100 GPUを使い、TensorRT-LLMで推論処理を最適化してきた。NVIDIAの顧客事例は、利用者の増加に伴う推論費用をPerplexityの主要課題として明記している。つまりNVIDIAは出資者であると同時に、Perplexityがサービスを提供するための計算基盤を供給してきた。

2026年3月には、PerplexityがNVIDIA Nemotron Coalitionの創設メンバーに入った。参加各社は、NVIDIA DGX Cloudで学習するオープンモデルにデータや評価、開発知見を持ち寄る。Perplexityは完成したモデルを買う顧客に収まらず、NVIDIAのモデル基盤を育てる側にも回った。

さらに7月、PerplexityはNVIDIAの新CPU「Vera」をエージェントのコーディング処理で試した。NVIDIAによれば、リポジトリを複製してテストを走らせる処理はx86 CPUより約1.5倍速く、複数のサンドボックスを立ち上げる時間は最大1.9倍速かった。ベンダーが公表した測定であり、独立検証ではない。それでも、PerplexityがVeraの本番導入を検討している事実は、NVIDIAがGPUの外側まで同社の計算基盤へ入りつつあることを示す。

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売上高7億5,000万ドルと同額のクラウド契約

エージェントは売上高を増やす一方、原価となる計算処理も増やす。Computerは一つの依頼で複数モデルを呼び、検索や外部サービスへの接続、コード実行を繰り返す。クレジット課金は利用量を収益へ変換できるが、モデル提供者とクラウド事業者へ支払う費用がそれ以上に増えれば利益は残らない。

Perplexityは2026年1月、Microsoft Azureを使う3年間で7億5,000万ドルの契約を結んだとBloombergが報じた。単純平均なら年2億5,000万ドルで、現在報じられている年換算売上高の3分の1に当たる規模である。ただし、契約額を毎年均等に費用計上するとは限らず、この比較から利益率は計算できない。Perplexityは既存のAWS支出も移さないと説明しており、総計算費用はAzure契約だけでは捉えられない。

ここにはNVIDIAにとって二つの利点がある。PerplexityがMicrosoftやAWSから計算能力を買っても、そのクラウドでNVIDIA製アクセラレーターが動けばNVIDIAは売上高を得られる。加えて、Veraが本番導入に進めば、NVIDIAはGPUに加えてエージェント実行用CPUでも供給接点を持つ。NVIDIAがPerplexityを支える動機は、特定クラウドへの囲い込みより、同社が生む計算処理を自社の製品群で広く受け止めることにある。

ただし、出資金がNVIDIA製品の購入へ戻る契約があるとは報じられていない。投資と製品採用が並んでいる事実から、循環取引と断定することはできない。評価すべきなのは資金の行き先ではなく、独立した顧客需要がPerplexityの売上高を伸ばし、その売上高から計算費用を払っても十分な利益が残るかどうかだ。

株式、ライセンス、人材採用を使い分けるNVIDIA

The Informationによると、NVIDIAとPerplexityは株式出資に先立ち、技術ライセンスや人材採用を含む広い協力も検討した。どの案が現在も交渉対象なのかは明らかでない。とはいえ、NVIDIAは必要な技術と人材を得るために、企業買収以外の契約をすでに使っている。

代表例がGroqとの取引だ。NVIDIAの年次報告書によれば、2025年12月にGroqのLPU技術について非独占ライセンスを取得し、一部従業員を採用した。株式や既存製品、顧客契約は買っていないが、対価は合計170億ドルに達した。NVIDIAは知的財産、人材、株式を一括で取得せず、必要な要素だけを契約ごとに選べる。

投資残高も急拡大している。NVIDIAが保有する非上場株式の帳簿価額は、2026年1月25日の222億5,100万ドルから4月26日には423億3,600万ドルへ増えた。3カ月間の純追加投資は178億9,900万ドルで、同日時点には条件付きの投資コミットメントも270億ドル残っていた。Perplexityへの出資額は不明だが、今回の交渉はNVIDIAが大幅に増やしている投資活動の延長線上にある。

Perplexity側にも選択肢がある。株式調達なら企業全体の買収を伴わず、計算資源と製品開発へ資金を回せる。ライセンスや人材移籍を組み合わせれば、NVIDIAは必要な技術や人材へ早くアクセスできる。その代わり、Perplexityに残る開発能力や将来の収益源は契約内容に左右される。交渉中の取引が株式出資に落ち着くのか、別の契約を伴うのかはまだ分からない。

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成立後に確認したい三つの条件

最初の条件は、300億ドルがプレマネーとポストマネーのどちらか、そしてNVIDIAがいくら投じるかである。同じ評価額でも、ラウンド総額と優先条件が違えば既存株主の希薄化もNVIDIAの影響力も変わる。現時点では、そのどちらも判断できない。

次は7億5,000万ドル超とされる年換算売上高の中身だ。Computerの利用が一時的なクレジット購入に支えられているのか、企業契約として継続するのかで価値は大きく違う。売上総利益率とクラウド支出、顧客継続率が出れば、約40倍という評価の基準を初めて検証できる。

最後は、NVIDIAとの関係が商取引として自立しているかである。Veraの本番導入時期、NVIDIA製品の購入条件、出資との契約上の結び付きが開示されれば、戦略投資と需要喚起を分けて見られる。Perplexityがエージェントを高収益事業へ育て、複数クラウドを使いながら最適な計算基盤を選べるなら、300億ドルは検索企業への値付けではなく、新しいソフトウェア実行層への値付けとして意味を持つ。