OpenAIが、質問と選択肢を入力すると、確率や選択肢の形で回答を返す「Decisions API」の一般提供を開始した。TechCrunchの10月22日付記事によると、同日からすべての顧客が利用できるようになった。この分野ではTypeSafeの「Jev」が先行しており、OpenAIは判断専用の新モデルを開発するのではなく、既存のGPT-6 Lunaを再構成して市場に参入した。通常の入力単価を比較すると、OpenAIは100万トークンあたり0.10ドル、Jevは0.042ドルで、OpenAIが約2.4倍高い。価格面では先行するJevに及ばず、OpenAIが競争力を発揮できるかどうかは、画像や音声を扱うマルチモーダル機能が鍵になると考えられる。

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GPT-6 Lunaを転用した判断専用API、一般提供で最大400問に対応

Decisions APIは、あらかじめ回答の範囲が決まっている問題について、AIに判断を求めるためのAPIだ。開発者は質問と回答候補を定義し、判断材料としてテキスト、画像、JSONを入力する。回答形式は3種類あり、「predicate」は指定した条件が真である確率を0〜1の値で返し、「choice」は候補から1つを選んで確率と確信度を添える。「score」は段階評価に対する確率加重平均を算出する。OpenAIによると、Responses API経由でGPT-6 Lunaを利用する場合と比べて、最大10倍高速に処理できるという。ただし、この性能向上は同社が示した数値である。

今回の一般提供では、公開ベータ版から機能が拡充された。GPT-Liveとの連携やプロンプトキャッシュ、米国とEUにおける推論処理地域の指定に対応したほか、1回のリクエストで処理できる質問数が従来の2倍となる最大400問に増えた。OpenAIでAPI部門のプロダクトリードを務めるNikunj Handa氏はTechCrunchに対し、判断専用に調整した新モデルは開発せず、Lunaを再構成することで推論の高速化とコスト削減を図ったと説明している。これにより、応答時間は従来の1〜3秒から100〜180ミリ秒に短縮されたという。Handa氏は、現時点ではLunaそのものが判断を担っていると述べる一方、将来的には専用の学習を行う可能性にも言及した。

初期の導入企業にはBox、Datadog、Ramp、Speakが名を連ねる。語学学習サービスを開発するSpeakのCTO、Andrew Hsu氏によると、同社では処理の応答時間が1.4秒から0.13秒に短縮されたという。

入力単価はOpenAIが0.10ドル、Jevが0.042ドル

判断APIの料金を比較するうえで重要なのは、入力トークンの単価だ。OpenAIとTypeSafeはいずれも出力トークンに課金しないため、通常の利用料金は入力トークンの価格によって決まる。OpenAIの公式料金表では100万トークンあたり0.10ドル、TypeSafeはJevの料金を10億トークンあたり42ドルと公表している。後者を100万トークン単位に換算すると0.042ドルとなり、OpenAIの通常入力料金はJevの約2.4倍に相当する。正確な倍率は0.10を0.042で割った約2.38倍である。

仮に1ドル=150円で換算すると、100万トークンあたりOpenAIは約15円、Jevは約6.3円となる。TypeSafeは自社サイトで、Jevの入力料金がClaude Fable 5.1の238分の1だと主張している。OpenAIの0.10ドルも絶対額としては低いものの、同じ判断API市場には、その半額以下で利用できる競合サービスが存在する。

ただし、約2.4倍という価格差は、キャッシュを利用しない場合の定価比較に限られる。OpenAIはプロンプトキャッシュに対応しており、複数の質問で共通する入力の先頭1,024トークン以上をキャッシュした場合、キャッシュ済み入力の料金は100万トークンあたり0.01ドルになる。これはJevの通常料金を下回る水準だが、キャッシュへの書き込みには料金が発生する。一方、Jevの公開料金表には入力と出力の料金のみが記載されており、キャッシュ専用の単価は示されていない。そのため、長い共通指示を繰り返し使用する用途では、実際のコストが逆転する可能性もある。

性能評価でも、現時点ではOpenAIが優位に立っているわけではない。TechCrunchによると、Artificial Analysisの「Decision Index」ではJevが3位であるのに対し、OpenAIのモデルは14位にとどまっている。また、OpenRouterの判断モデル部門で最も利用されているのもTypeSafeの製品だという。公開されている通常料金と評価指数の順位を見る限り、OpenAIは先行する競合を追う立場にある。

日本の開発者にとっては、推論処理を実行する地域も判断材料になる。OpenAIが今回発表した推論処理地域の指定機能は米国とEUを対象としており、アジアについては応答遅延を減らすための処理能力増強にとどまる。データの国内処理を必須条件とする企業にとっては、今回の発表だけで導入要件を満たせるとは判断できない。

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画像と音声が差別化の鍵になるか、今後の焦点

TechCrunchは、OpenAIが競争上の優位性を築く可能性のある分野として、マルチモーダル対応を挙げている。Handa氏は画像分類について、Lunaは高い性能を持ち、モデルが出力する確信度と実際の正答率がどの程度一致するかを表す「較正(Calibration)」でも良好な結果が得られていると説明した。音声については、今回の一般提供でGPT-Liveとの連携が追加されている。OpenAIは活用例として、顧客対応を担う音声AIエージェントが、会話の途中で聞き返すべきか、問い合わせを振り分けるべきか、人間の担当者に引き継ぐべきかを判断する用途を挙げている。

ただし、Jevも画像入力に対応している点には注意が必要だ。 TypeSafeのブログによると、「jev-1.13.0」は当初からマルチモーダル機能を備えており、画像入力も専用ヘッダーを指定することで利用できる。ただし、この機能は「danger zone」と呼ばれる実験的な位置づけで提供されており、同社は本番環境での利用を保証していない。また、画像を入力した場合、すべてのモデルでテキスト入力時より精度が低下すると説明している。したがって、画像処理の性能そのものについて、JevがOpenAIに劣ると判断できるだけの材料はない。OpenAIの優位性を裏付ける情報も、現時点では主に同社の説明に基づいている。

応答速度についても、単純な比較は難しい。OpenAIは100〜180ミリ秒、TypeSafeは1ワークフローあたり0.114秒という数値を示しているが、いずれも各社が独自の条件で測定したものだ。測定対象や処理条件が統一されていない以上、これらの数値だけで優劣を判断することはできない。

それでもOpenAIのマルチモーダル対応に差別化の余地があると考えられるのは、機能の提供形態が異なるためだ。OpenAIは画像入力とGPT-Live連携を一般提供の対象に含めているのに対し、Jevの画像入力は本番利用が保証されない実験機能にとどまっている。これはOpenAIの性能的な優位が確立したことを意味するわけではないが、実運用を前提とした機能の提供状況には差がある。

今後、この見立てが変わる条件は明確だ。Jevの画像入力が実験段階を終え、正式な本番機能として提供されれば、少なくとも画像対応の提供形態に関する差は解消される。また、Artificial Analysis Decision IndexでOpenAIが現在の14位からJevの3位に並べば、同指数の性能評価においても追う立場ではなくなる。Handa氏は、応答時間が60ミリ秒まで短縮されれば、動画の各フレームに対して判断APIを呼び出す使い方も考えられると述べている。今後は、画像を含む判断処理をどこまで高速化できるか、そして実際の運用でどの程度のコストがかかるかが、両サービスの競争力を見極める重要な指標となる。