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Perplexity AI、5億ドル調達で評価額140億ドルへ

Y Kobayashi

2025年5月13日

AI検索エンジンの新星、Perplexity AIが、評価額140億ドル(約2兆710億円)で5億ドル(約739億円)の大型資金調達を完了する見込みだと、The Wall Street JournalとCNBCが報じた。シリコンバレーの著名ベンチャーキャピタルであるAccelがこのラウンドを主導すると見られている。熾烈な競争が繰り広げられるAI検索市場で、同社はどのようにして急成長を遂げ、次なる一手として何を見据えているのだろうか?

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AI検索の新星Perplexity、評価額140億ドルでの大型調達へ秒読み

現地時間5月12日、複数の米主要メディアが、AI検索エンジン開発のスタートアップPerplexity AIが、シリーズ最新ラウンドで5億ドルの資金調達に向けた交渉の最終段階にあると報じた。今回の調達により、同社の評価額は140億ドルに達する見込みだ。

今回の資金調達ラウンドは、名門ベンチャーキャピタルであるAccelが主導すると伝えられている。AccelはFacebook(現Meta)やSlack、Spotifyなど、数々のユニコーン企業への初期投資で知られる。

過去1年で4回の資金調達、累計調達額は9億ドル超え

Perplexityの資金調達のスピードは驚異的だ。報道によると、同社はこの1年間で既に4回の資金調達ラウンドをクローズしており、累計調達額は9億ドル(約1300億円)以上にのぼる。

直近では2024年12月にも資金調達を行っており、その際の評価額は90億ドル(約1兆3031億円)だった。今回の調達が完了すれば、わずか半年弱で評価額が約55%上昇することになる。この急成長ぶりは、AI、特に生成AIと検索技術の融合に対する投資家の高い期待を如実に示していると言えるだろう。

当初の目標評価額180億ドルからは下方修正も、依然として高い期待値

一方で、CNBCは3月の時点で、Perplexityが最大10億ドル(約1480億円)の資金調達を、評価額180億ドル(約2兆6630億円)で目指していると報じていた。今回の報道が事実であれば、目標としていた評価額からは若干の下方修正となるものの、依然として極めて高い水準であることに変わりはない。

この背景には、AIスタートアップへの投資熱が継続している一方で、市場環境の変動やより現実的な事業成長見通しを反映した結果である可能性が考えられる。

なぜPerplexityは投資家を惹きつけるのか? – その強みとビジネスモデル

Perplexityの最大の強みは、従来型のキーワード検索とは一線を画す「会話型AI検索」という新しいユーザー体験の提供にある。大規模言語モデル(LLM)を活用し、ユーザーの質問に対して、Web上の情報を基に自然な文章で直接的な回答を生成する。

「会話型AI検索」という新しい体験 – 1500万MAUの突破

この新しい検索体験は多くのユーザーに支持され、2025年4月時点で月間アクティブユーザー数(MAU)は1500万人を突破したと報じられている。従来型の検索エンジンが提示するリンクのリストから情報を探す手間を省き、より迅速かつ効率的に答えにたどり着ける点が評価されているのだろう。

個人向け・法人向け有料プランと「Sonar」API – 収益モデルの確立

Perplexityは、無料版に加えて、より高機能な有料プランを個人向けと法人向け(Enterprise Pro)に提供することで収益化を図っている。Enterprise Proでは、企業内のドキュメントやサードパーティ製のビジネスデータセットを横断して検索・質問できる機能などが提供されるという。

さらに、2025年1月には、開発者向けに「Sonar」と呼ばれるAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)群の提供を開始した。これにより、他の企業が自社のソフトウェアやサービスにPerplexityのAI検索機能を組み込むことが可能になる。Sonarは、同社が独自に開発したLLMファミリーを搭載しているとされる。

CNBCによると、Perplexityの年間経常収益(ARR)は1億ドル(約148億円)弱に達しているという。これは、同社のビジネスモデルが着実に収益を生み出し始めていることを示唆しており、投資家にとって魅力的な要素の一つとなっていることは間違いないだろう。

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巨額資金の使途は? – Cometブラウザと独自LLM開発への布石か

今回調達が見込まれる5億ドルという巨額の資金は、Perplexityのさらなる成長戦略を加速させるために投じられると考えられる。

OpenAIとの競争 – Sonar ReasoningのDeepSeek-R1からの脱却?

Sonar APIの一つである「Sonar Reasoning」は、現在DeepSeek-R1という外部のLLMを利用して、コーディングに関するアドバイスなど複雑な質問に対応している。資金調達により、これを自社開発のカスタムモデルに置き換えることで、競合であるOpenAIなどのAPIとの差別化を図る可能性がある。OpenAIは数十億ドル規模の資金調達力で強力なAPI群を提供しており、Perplexityとしては独自性を追求する必要がある。

AIエージェント機能を搭載? 期待される新ブラウザ「Comet」

Perplexityは、2025年2月に「Comet」と呼ばれるAI搭載型Webブラウザの開発計画を発表している。このブラウザは「エージェント的検索機能」を備えるとされており、Perplexityの検索エンジンやSonar APIとの緊密な連携が予想される。

「エージェント的検索」とは、ユーザーの指示に基づき、AIが自律的に情報収集やタスク実行を行う機能を指すと考えられる。例えば、旅行の計画立案から予約までをAIが代行するといった、より高度な利用シーンが想定される。このCometブラウザの開発と普及は、Perplexityが検索市場だけでなく、ブラウザ市場においても新たなユーザー体験を提案しようという野心的な試みと言えるだろう。

群雄割拠のAI検索市場 – Perplexityの前に立ちはだかる巨人たち

Perplexityの成長は目覚ましいものの、AI検索市場の競争環境は極めて厳しい。

検索市場の巨人であるGoogleは、既に検索結果にAIによる要約を表示する「AIによる概要」(旧SGE)を導入し、積極的な展開を進めている。また、MicrosoftはOpenAIに巨額の出資を行い、自社の検索エンジンBingやブラウザEdgeにGPTモデルを統合するなど、AI検索へのシフトを鮮明にしている。

さらに、元OpenAIのメンバーが設立したAnthropicも、同社のAIチャットボット「Claude」にWeb検索機能を統合するなど、この市場への参入を果たしている。

このように、資金力も技術力も豊富な巨大IT企業や、有力なAIスタートアップがひしめくAI検索市場において、Perplexityが独自のポジションを確立し、成長を継続していくためには、革新的な技術開発と優れたユーザー体験の提供が不可欠となる。

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Perplexityの現在地と未来

Perplexityの急速な資金調達と高い評価額は、AIが情報アクセスのあり方を根本から変える可能性に対する市場の熱狂を反映している。彼らが提唱する「会話型AI検索」は、従来の検索体験に慣れたユーザーにとっても直感的で効率的な側面があり、一定の支持を集めているのは事実だ。

問題は、この新しい検索体験が、Googleが長年築き上げてきた「10個の青いリンク」という強力なユーザー習慣をどこまで覆せるか、という点にある。Google自身もAIによる検索体験の向上に巨額の投資を続けており、その牙城を崩すのは容易ではない。

Perplexityが成功するためには、単に便利な検索機能を提供するだけでなく、ユーザーが「これなしでは情報収集が考えられない」と感じるほどの圧倒的な価値を提供し続ける必要がある。その鍵を握るのが、独自LLMの開発、そして期待されるAIエージェントブラウザ「Comet」の完成度だろう。

今回の大型調達は、そのための重要なマイルストーンとなる。しかし、競合もまた巨額の資金を投じて開発競争を繰り広げている。最終的には、技術的な優位性を確立し、それをいかに洗練されたユーザー体験として提供できるか、そしてそれを継続的に進化させられるかが、Perplexityの未来を左右するだろう。AI検索市場の覇権争いは、まだ始まったばかりだ。


Sources

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