テクノロジーと科学の最新の話題を毎日配信中!!

Supabase、20億ドル評価で2億ドル資金調達 – バイブコーディングブームで成長加速

Y Kobayashi

2025年4月23日

オープンソースのバックエンド基盤を提供するSupabaseが、Accel主導のシリーズDラウンドで2億ドルという巨額の資金調達を実施し、企業評価額が20億ドルに達したことが明らかになった。急成長の背景には「バイブコーディング(Vibe Coding)」と呼ばれる新たな開発トレンドがあり、同社の技術とコミュニティが高く評価されている。

スポンサーリンク

Accel主導、評価額20億ドルでの大型調達

今回の2億ドルのシリーズD資金調達は、著名ベンチャーキャピタルのAccelが主導した。Fortune誌が独占的に報じたところによると、このラウンドにはCoatue、Y Combinator、Craft Ventures、Felicisといった既存投資家に加え、OpenAIの最高製品責任者であるKevin Weil氏、VercelのCEOであるGuillermo Rauch氏、LaravelのCEOであるTaylor Otwell氏など、テクノロジー業界の著名なエンジェル投資家も参加している。

特筆すべきは、AccelのパートナーであるGonzalo Mocorrea氏とArun Mathew氏が、SupabaseのCEO兼共同創業者であるPaul Copplestone氏に会うため、シリコンバレーから7,000マイル以上離れたニュージーランドのワナカまで足を運んだというエピソードである。Mathew氏はFortune誌に対し、「テーブルを挟んで彼(Copplestone氏)の目を見て、彼が何かを成し遂げると確信する必要があった。この評価額では特にそうだ」と語っており、投資決定における経営陣への信頼の重要性を強調している。

この調達は、Supabaseが7ヶ月前に発表したシリーズC(Peak XVとCraft Ventures主導で8,000万ドル調達、PitchBook推定評価額約9億ドル)からわずか短期間での大幅な評価額向上(2倍以上)を意味する。今回の調達により、Supabaseの累計調達額は約3億9800万ドルに達した。

Supabaseとは? Firebase代替のオープンソースDBaaS

Supabaseは、GoogleのFirebaseに対するオープンソースの代替として位置づけられる、アプリケーション開発プラットフォームである。2020年に設立され、特に「バックエンド・アズ・ア・サービス(BaaS)」の分野で注目を集めている。

中核技術と特徴:

  1. PostgreSQLベース: Supabaseの中核には、世界で最も人気のあるオープンソースのリレーショナルデータベースの一つであるPostgreSQLがある。PostgreSQLは、データの信頼性を保証するACID(原子性、一貫性、独立性、永続性)特性をサポートしており、エンタープライズレベルの要求にも応えられる堅牢性を持つ。Supabaseはこの実績あるデータベースを基盤としている。
  2. Firebase代替機能: Firebaseが提供するような、認証、リアルタイムデータベース、ストレージ、自動生成APIなどのバックエンド機能を、オープンソースツールを組み合わせて提供する。これにより、開発者はバックエンドの複雑な設定や管理から解放され、アプリケーション開発に集中できる。
  3. 開発者向けツール:
    • Table Editor: SQLクエリを書かずに、Excelのようなインターフェースでデータベース情報を編集できる。
    • 自動生成API: データベース内のデータにアクセスするためのAPIを自動的に生成する。
    • リアルタイム機能: データベース内のデータ変更をミリ秒単位で検知し、アプリケーションに反映させることができる。リアルタイム性が求められるダッシュボードなどに有用である。
    • Supabase Cron: 定義された時間間隔でスクリプトを実行できる。例えば、重複レコードの定期的なチェックと削除などが可能。
    • Vector Toolkit: AIアプリケーションで必要となるベクトルデータ(AIモデルが知識を保持する数学的構造)の保存と管理をサポートする。
  4. スケーラビリティとパフォーマンス:
    • Read-only Replicas: データベースの読み取り専用レプリカを複数作成し、異なるクラウド施設にデプロイできる。これにより、メインデータベースの負荷を軽減し、書き込みが必要なワークロードの応答時間を向上させる。また、ユーザーに近いレプリカから情報を取得することでレイテンシを削減し、バックアップとしても機能する。
    • Edge Functions: ユーザーに近いデータセンターでコードを実行することでレイテンシを削減する。AIアプリケーションの実行や悪意のあるリクエストのブロックなどに適している。

これらの特徴により、Supabaseは「週末で構築し、数百万ユーザー規模にスケール」というマーケティングタグラインを掲げ、シンプルな開発体験と高いスケーラビリティの両立を目指している。

スポンサーリンク

急成長の背景:「Vibe Coding」の追い風

Supabaseの利用者は急増しており、Fortune誌によると、現在200万人以上の開発者が350万以上のデータベースを管理し、GitHubスター数を8万1千以上獲得している。特に過去3ヶ月でサインアップ率が倍増したという事実は、その勢いを物語っている。

この急成長の要因の一つとして、「バイブコーディング」と呼ばれるトレンドが挙げられる。バイブコーディング(Vibe Coding)とは、AIを活用してコーディング作業を自動化・効率化する開発スタイルを指す。

VercelのCEOでありSupabaseの投資家でもあるGuillermo Rauch氏は、バイブコーディングを「自動運転車」に例え、「移動を助ける素晴らしい偉業だが、それでも道路は必要だ」と述べている。そして、「Supabaseは使いやすいだけでなく、手の届く存在になるよう努力してきました。道路はクラウドインフラであり、Supabaseはデータエコシステムのこの基本的なニーズを満たす準備ができていました」と語り、Supabaseがバイブコーディング時代のインフラとして重要な役割を担っていることを示唆した。

実際、SupabaseはLovableのような急成長中のバイブコーディングツールの人気バックエンドになっており、AIによる開発が主流になるにつれて、ベクトルデータを扱え、セットアップが容易なSupabaseのようなデータベースの需要が高まることが予想される。

FelicisのマネージングパートナーであるAydin Senkut氏は、「(Supabaseは)驚異的な成長を遂げています。最大の資産は開発者コミュニティであり、100万人を突破し、毎日数千人規模で成長しています。AIアプリや他の無数のカテゴリのアプリにとって、デフォルトのバックエンドになりつつあります」とTechCrunchに語っている。

投資家の視点とSupabaseの将来性

AccelのMathew氏は、「すべての主要なプラットフォームシフトにおいて、データベースレイヤーでは常に価値が創造されるというのが我々の中心的な考えだ」と述べ、OracleやMongoDBの例を挙げながら、データベース市場の重要性を強調した。データベースレイヤーは競争が激しい一方で、成功すれば莫大な企業価値を生み出す可能性を秘めている。Accelは、Supabaseがそのポテンシャルを持つと判断したのだ。

Supabaseは、PostgreSQLをベースにしていることで、エンタープライズ開発者からの信頼も厚い。OracleやMicrosoftのような高価なデータベースを必要としない場合に、有力な選択肢となる。TechCrunchは、次世代の数十億ユーザー規模のアプリケーションはAIによって開発・管理される可能性があり、Supabaseはそのための有力なデータベースの一つとして既に位置づけられていると分析している。

Copplestone CEOは、「私たちのコミュニティは、今後10年間で私たちと共に成長し、個々の開発者からエンタープライズまで、あらゆる人々のためになるものだと考えています」と将来のビジョンを語っている。

創業、文化、そして「Super Bass」

Supabaseはパンデミック下の2020年に設立され、完全リモート体制を維持している。CEOのCopplestone氏はニュージーランド出身で、今回が3度目の起業となる。過去の経験から学び、「お金を集めてポスターを貼り、高給で人を雇って従業員数を自慢するような『スタートアップごっこ』」を避け、本質的な価値創造に注力しているという。

採用方針も独特で、「マネーボール」のように、必ずしもサンフランシスコにいない、世界中の有能でエゴの少ない人材を発掘しているとのことだ。ペルーやマケドニアにも従業員がおり、元創業者も約28%を占めるという。リモートながら、ローンチウィークには毎日新機能をリリースしたり、世界100都市でミートアップを開催したりするなど、コミュニティとの繋がりを重視している点も特徴だ。

ちなみに、「Supabase」という名前は、Copplestone氏が「Superlative base(最高のベース)」のような名前を探していた際、利用可能なドメイン名が「S-U-P-A」しか見つからなかったことに由来する。当時流行していたNicki Minajのヒット曲「Super Bass」に響きが似ていることが面白く、ミーム好きの共同創業者Ant Wilson氏にミームを送るためにこの名前に決めたという。

今回の大型資金調達は、そのユニークな名前と共に、Supabaseが提供する価値が市場に広く受け入れられ、大きな期待を集めていることの証左と言えるだろう。オープンソース、開発者コミュニティ、そしてバイブコーディングという追い風を受け、Supabaseはデータベース市場における存在感をさらに高めていくことが予想される。


Sources

Follow Me !

\ この記事が気に入ったら是非フォローを! /

フォローする
スポンサーリンク

コメントする