アクセサリーメーカーのUGREENが、ワイヤレス充電における次世代製品を発表した。今回発表されたモバイルバッテリー「MagFlow マグネット式モバイルバッテリー」は、世界で初めてWireless Power Consortium (WPC) の「Qi 2.2」認証を取得した(※同社調べ)モバイルバッテリーとなる。これまでのQi2における15Wの壁を打ち破る25Wという高速充電が、いよいよ現実のものとなりそうだ。

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ワイヤレス充電の新時代を告げる「Qi 2.2」とは何か?

今回のニュースの核心は、製品そのものよりも「Qi 2.2」という規格にあると言っていいだろう。これまで馴染みのあった「Qi(チー)」規格が、静かに、しかし着実に大きな進化を遂げていたのだ。では、このQi 2.2とは一体何者なのだろうか?

15Wから25Wへ、速度だけではない進化の本質

Qi 2.2の最も分かりやすい進化は、ワイヤレス充電の最大出力が従来のQi 2.0で標準とされた15Wから、最大25Wへと大幅に引き上げられた点にある。この「10W」の差は決して知育内。スマートフォンのバッテリー容量が増大し続ける現代において、充電速度は利便性を左右する決定的な要素だ。

興味深いのは、この25Wという数値が、Appleが2024年9月に発表したiPhone 16シリーズで採用した新しいMagSafe充電の速度と一致する点だ。だがこれは偶然ではない。Qi 2.0規格自体が、AppleのMagSafe技術をベースにした磁気吸着技術「Magnetic Power Profile(MPP)」を取り入れたものであり、Qi 2.2はその延長線上にある正常進化なのである。業界全体が、Appleが示した一つのベンチマークに追いつき、そして追い越そうとしている、そんな構図が見て取れる。

MagSafeがベースの「MPP」がもたらす安定性と効率

Qi 2.2の進化は、速度向上だけにとどまらない。その根幹を支えるのが、前述のMagnetic Power Profile (MPP) である。これは、充電器とデバイスに内蔵された磁石のリングによって、物理的に最適な位置へと「カチッ」と吸着させる技術だ。

従来の磁石を持たないワイヤレス充電では、デバイスを充電パッドの正確な位置に置かなければならず、少しでもズレると充電効率が著しく低下したり、最悪の場合充電が中断したりする課題があった。MPPはこの「位置合わせ」の問題を根本的に解決する。

これにより、以下のような恩恵がもたらされる。

  • 充電効率の最大化: コイルの位置が常に最適化されるため、エネルギーの損失が少なくなる。
  • 発熱の抑制: 無駄なエネルギー消費が減ることで、充電中のデバイスや充電器の発熱が抑えられる。これはバッテリーの寿命を長持ちさせる上でも極めて重要だ。
  • 安定性の向上: 磁力で固定されるため、充電中にデバイスが動いてしまう心配がない。

つまりQi 2.2は、単に速いだけでなく、より賢く、より安全で、より確実な充電体験を提供するための規格なのである。

安全性の向上と将来の展望(50Wへの道)

さらにQi 2.2は、改善された異物検出機能や、デバイスの状態に応じて出力を動的に調整する機能など、安全面での強化も図られている。

WPCは、Qi 2.2をさらに発展させ、将来的には最大50Wまでの高速化も視野に入れているとされる。今回の25W対応は、その壮大なロードマップの第一歩に過ぎないのかもしれない。

UGREEN「MagFlow マグネット式モバイルバッテリー」の詳細について

この次世代規格の認証を世界で初めて勝ち取ったのが、UGREENの「MagFlow マグネット式モバイルバッテリー」だ。その特徴を見ていこう。

10,000mAhの大容量とスマートなデザイン

プレスリリースによれば、本製品のバッテリー容量は10,000mAh。最新のスマートフォンを約1.5回〜2回フル充電できる十分な容量を備えている。コンパクトな筐体ながら、高度な放熱設計と電力制御機能を搭載し、日々の通勤から出張、旅行まで、あらゆる場面で頼りになる存在となりそうだ。

ストラップにもなる内蔵USB-Cケーブルと拡張性

ユニークなのは、本体にUSB-Cケーブルが内蔵されている点だ。このケーブルは、使用しないときには本体に固定でき、持ち運び用のストラップとしても機能する。ケーブルを忘れる心配がなく、デザイン性も損なわない巧みな設計と言えるだろう。

さらに、追加のUSB-Cポートも1基備えており、ワイヤレス充電と同時に別のデバイスを有線で充電することも可能。複数デバイスを持ち歩く現代のユーザーニーズを的確に捉えている。

細部へのこだわり:残量表示スクリーン

本体側面には、バッテリー残量をパーセンテージで表示する小型のスクリーンが搭載されている。これにより、残量を一目で正確に把握できる。ランプの点灯数で大まかに示すタイプの製品が多い中、こうした細部へのこだわりがユーザー体験の質を向上させる。

UGREENによれば、本製品の発売は2025年第3四半期を予定しており、価格は現時点では未定。日本では同社公式ストアのほか、Amazonや大手家電量販店での販売が計画されている。

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誰が恩恵を受けるのか?iPhoneとAndroidの現在地

さて、最も気になるのは「この新しい技術の恩恵を、誰が、いつから受けられるのか?」という点だろう。現状は、iPhoneとAndroidで明確な差が存在する。

iPhoneユーザー:25W MagSafe体験をモバイルで

現時点でQi 2.2(MPP)の恩恵を最大限に享受できるのは、iPhoneユーザーだ。特に、25WのMagSafe充電に対応したiPhone 16シリーズ以降のユーザーにとっては、純正の充電器と同等の速度をモバイルバッテリーで実現できることになる。iPhone 12から15シリーズのユーザーも、MPPによる安定した磁気吸着と、従来の15W MagSafeを超える速度での充電(デバイス側の対応次第)が期待できるだろう。

UGREENのMagFlowは、まさにiPhoneユーザーにとって待望の「純正を超える選択肢」となり得るポテンシャルを秘めている。

Androidユーザーの「もどかしさ」と未来への布石

一方、Android陣営の対応は、まだ始まったばかりだ。HMD Skylineなど、ごく一部の機種がQi 2に完全対応しているものの、SamsungのGalaxy S25シリーズをはじめとする多くの最新フラッグシップ機でさえ、MPP規格にはネイティブで対応していないのが実情だ。

磁気リングを内蔵したサードパーティ製のケースを使えば、MagSafe対応アクセサリーに吸着させることはできる。しかし、それはあくまで「擬似的」な体験であり、デバイス本体が規格に準拠していないため、Qi 2.2が誇る25Wの充電速度を引き出すことはできない。

これは、Androidユーザーにとってはもどかしい状況かもしれない。しかし、絶望する必要はない。今回のUGREENの発表は、Androidメーカーにとっても強力な「追い風」となるからだ。

急速に進むエコシステム、Qi 2.2対応はいつ広がるか?

業界の動向は、Androidの急速なキャッチアップを示唆している。Qi 2.2対応の認証インフラはすでに整い始めており、SamsungやGoogleなどの主要メーカーが対応チップの開発を進めているとの情報もある。

一度、UGREENのような有力な周辺機器メーカーが対応製品を市場に投入すれば、スマートフォンメーカーも対応を急がざるを得なくなる。これが標準化の力だ。ユーザーは「Qi 2.2対応」を新たな購入基準の一つとし、メーカー間の競争がイノベーションを加速させる。

2025年後半から2026年にかけて登場するAndroidのフラッグシップモデルでは、Qi 2.2対応が標準機能となる可能性は非常に高いと筆者は見ている。Androidユーザーにとって、今はまさに「夜明け前」なのである。

UGREENの発表が持つ真の意義

今回のUGREENの発表は、いくつかの点で非常に興味深い。同社は「世界初のQi 2.2認証」を大々的に謳っているが、WPCによるQi 2.2標準の最終仕様はまだ確定していないとも報じている。

これは何を意味するのか? おそらく、UGREENはWPCと緊密に連携し、最終仕様に準拠する形で先行して認証を取得したのだろう。これは、標準化が完了するのを待つのではなく、自らが市場を牽引しようという強い意志の表れだ。ちょうど最近、認証試験機関であるGranite River Labsが業界初のQi 2.2テストツールを発表したばかりであり、その直後というタイミングも絶妙である。

この「MagFlow」の登場は、Qi2の発表以降余り進化が見られなかったワイヤレス充電市場をにわかに活気づかせるきっかけになるかも知れない。Ankerをはじめとする競合アクセサリーメーカーは、開発の加速を余儀なくされる。そして何より、スマートフォンメーカー、特にAndroid陣営に対して、Qi 2.2採用への強力なプレッシャーとなるはずだ。

UGREEN「MagFlow」は、2025年第3四半期に、日本を含むグローバル市場で発売が予定されている。この一つの製品が、ワイヤレス充電の勢力図を塗り替え、私たちのデジタルライフを次のステージへと押し上げる起爆剤となるのか、楽しみなところだ。


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