テクノロジーと科学の最新の話題を毎日配信中!!

Xiaomiが独自チップ「玄戒O1(XRING O1)」を発表

Y Kobayashi

2025年5月16日

中国Xiaomiが、長年噂がされてきた自社開発のスマートフォン向けシステムオンチップ(SoC)「玄戒O1XRING O1)」を正式に発表した。Xiaomiの共同創業者であるLei Jun CEOが中国のソーシャルメディアWeiboを通じて明らかにしたもので、今月後半にも詳細が公開される見込みだ。この動きは、QualcommやMediaTekといった既存のチップメーカーに依存してきたスマートフォン市場の勢力図を塗り替える可能性を秘めており、GoogleのTensorチップ戦略にも通じるものとして、業界内外から大きく注目を集めている。

スポンサーリンク

発表された「XRING O1」の概要と10年越しの開発秘話

XiaomiのLei Jun CEOは自身のWeiboアカウントで、「XRING O1」と名付けられたこの新しいSoCを2025年5月後半に発表すると宣言した。Xiaomiはこのチップの開発に10年以上もの歳月を費やしてきており、同社が長期的な視点に立って半導体開発に取り組んできたことの証左と言えるだろう。

過去にXiaomiは、2017年に「Surge S1」という独自のSoCを発表し、自社スマートフォン「Mi 5C」に搭載した経験がある。しかし、その後継機種「Surge S2」は開発中止となり、XiaomiのSoC開発は一時的に停滞しているように見えた。しかし、Xiaomiはその間も電源管理チップやイメージング処理チップなど、特定の機能に特化したカスタムチップの開発は続けており、虎視眈々とSoC再挑戦の機会をうかがっていたと考えられる。

XRING O1のリークされたスペック:TSMC 4nmプロセス採用か?

現時点ではXiaomiからの公式なスペック詳細は明らかにされていないが、複数のリーク情報がXRING O1の輪郭を浮かび上がらせている。

  • 製造プロセスとアーキテクチャ:
    GizmoChinaによると、XRING O1は台湾のファウンドリ大手TSMCの4nmプロセスで製造される可能性が高いという。 CPUコア構成は、1つの高性能プライムコア、3つのパフォーマンスコア、そして4つの高効率コアから成る「1+3+4」のクラスタ構成が採用されると見られている。 プライムコアの動作周波数は3.2GHz、パフォーマンスコアが2.5GHz、高効率コアが2.0GHzになるという情報もあるが、これらのコアの具体的な種類(例えばArm Cortexシリーズのどのコアかなど)はまだ不明だ。
  • 予想されるパフォーマンス:
    複数の情報源が一致して指摘しているのは、XRING O1の性能が、Qualcommの最新フラッグシップSoCであるSnapdragon 8 EliteやMediaTekのDimensity 9400には及ばないだろうという点だ。 とは言え、一世代前のハイエンドSoCであるSnapdragon 8 Gen 2には匹敵する可能性がある。
    この性能レンジは、Googleが自社開発するTensorチップの立ち位置と非常に似ている。Tensorチップも、純粋な処理性能では市場のトップエンドには及ばないものの、AI処理能力やカメラ機能の最適化など、特定の分野で独自の強みを発揮している。Xiaomiも同様に、XRING O1を通じて、自社デバイスの特定の体験を向上させることを狙っているのかもしれない。
  • モデム:
    Android Authorityは、XRING O1にはUnisoc製の5Gモデムが搭載される可能性があるというリーク情報も伝えている。 もしこれが事実であれば、コストと性能のバランスを考慮した選択と言えるだろう。
スポンサーリンク

なぜXiaomiは再び独自SoC開発に挑むのか?その戦略と狙い

スマートフォンメーカーが独自SoCを開発する動きは、今に始まったことではない。AppleのAシリーズおよびMシリーズチップは言うまでもなく、GoogleはPixelシリーズにTensorチップを搭載し、SamsungはExynosシリーズを自社デバイスに採用、そしてHuaweiも様々な制約の中でKirinシリーズの開発を続けている。 Xiaomiがこの流れに本格的に加わる背景には、いくつかの戦略的な理由が考えられる。

  1. コスト削減と供給安定化:
    QualcommやMediaTekといった外部ベンダーからSoCを調達する場合、当然ながらコストが発生し、供給状況にも左右される。独自開発によって、これらの外部要因の影響を低減し、より柔軟な製品開発と価格戦略を展開できる可能性がある。
  2. ハードウェアとソフトウェアの最適化:
    自社でSoCを設計することで、OS(Android)や自社製アプリ、さらにはカメラシステムなどのハードウェアとの連携をより緊密にし、最適化を図ることができる。これにより、ユーザー体験の向上や、他社製品との差別化が期待できる。GoogleのTensorチップが良い例で、PixelのAI機能やカメラ性能の向上に大きく貢献している。
  3. エコシステムの強化とブランド価値向上:
    独自SoCを持つことは、技術力の高さをアピールし、ブランドイメージを向上させる効果もある。また、スマートフォンだけでなく、タブレット、ウェアラブルデバイス、さらにはスマートホーム製品など、Xiaomiが展開する多様な製品群において、共通のプラットフォームを構築し、エコシステムを強化する布石となる可能性も否定できない。
  4. 他社への依存からの脱却:
    特定のサプライヤーへの依存度を下げ、より自律的な製品開発体制を確立することは、長期的な視点で見れば企業のリスクヘッジにも繋がる。

もちろん、独自SoC開発には莫大な初期投資と高度な技術力、そして継続的な開発体制が必要であり、決して容易な道ではない。Surge S1での経験は、Xiaomiにとって貴重な教訓となったはずだ。今回のXRING O1が、その教訓を活かした、より成熟した製品となるかどうかが注目される。

XRING O1はどのデバイスに搭載されるのか?市場への影響は?

現時点での情報では、XRING O1は近いうちに発表されると噂される「Xiaomi 15s」シリーズに初めて搭載される可能性が高い。

このXRING O1の登場が、スマートフォン市場、特にAndroid陣営にどのような影響を与えるかは非常に興味深い。もしXRING 01が期待通りの性能と安定性を発揮し、Xiaomi製デバイスの魅力を高めることに成功すれば、QualcommやMediaTekにとっては無視できない競争相手の出現となる。また、他のスマートフォンメーカーにとっても、独自SoC開発という選択肢を改めて検討するきっかけになるかもしれない。


Sources

Follow Me !

\ この記事が気に入ったら是非フォローを! /

フォローする
スポンサーリンク

コメントする