Weiboの投稿を発端に、Appleの次世代SoC「A20 Pro」とされる内部配置の推定が広がっている。白饭炒白米饭は8月30日、はんだ接点の配置図と既知のチップ構成を突き合わせ、CPUは高性能2コアと高効率4コア、GPUは7コアになると推定した。さらに96-bitのメモリインターフェースや、チップとDRAMを横に並べる実装の説も重なった。
7コア化が実現すれば、A19 Proから演算器の数が増える。ただ、GPUを十分に働かせるにはテクスチャなどのデータ供給も必要だ。QualcommとMediaTekはすでに、GPUの近くにデータを置き、外部メモリへの転送を減らす設計を公表している。今回の噂の意味は、こうした競合の工夫と比べると見えてくる。
接点配置から推定された7コアGPU

Appleが公表している現行のA19 Proは、6コアCPUと6コアGPUを備える。iPhone 17 Pro/Pro Max向けの説明では、GPUの各コアにNeural Acceleratorsを組み込み、GPUキャッシュの容量を増やし、16コアNeural Engineと連携させたとしている。GPUは描画だけを担う部品ではなく、端末内のAI処理にも関係する設計になっている。
今回の7コア説は、GPUを直接写したダイ写真から数えたものではない。投稿者がはんだ接点の配置を前提に6、7、8コアの構成を試し、7コアが最も整合すると判断した推定である。原投稿を直接検証できておらず、画像そのものの真正性も未確認だ。Appleが認めた構成ではない。
A19 Proの6コアから7コアへ増えるなら、個数の増加率は(7÷6−1)×100で約16.7%となる。ただし、実行ユニットの中身や動作周波数は分からず、電力と冷却の条件も未確認だ。GPU性能が16.7%伸びるという意味にはならない。
| 項目 | A19 Pro(Apple公表) | A20 Proに関する今回の推定 |
|---|---|---|
| CPU構成 | 6コア | 高性能2コア+高効率4コアとする推定 |
| GPU構成 | 6コア | 7コアとする推定 |
| GPU/AIの説明 | GPU各コアのNeural Accelerators、キャッシュ増量、16コアNeural Engineとの協調 | 詳細未確認 |
| メモリ規格・バス幅 | 参照したAppleの公表資料に記載なし | 96-bit説あり。LPDDR5XかLPDDR6かも未確認 |
| 性能の扱い | 前世代iPhone比で最大40%の持続性能改善。ベイパーチャンバーとの組み合わせ | この推定には実測値なし |
GPUが1コア増えるという推定は、描画とAI向けの演算資源をどこまで広げるかという話である。表の「最大40%」は冷却を含めた端末の持続性能の比較で、GPUのコア数増加率とは測っている対象が違う。
96-bit化でデータ供給はどう変わるか
96-bitという数字は、演算性能を直接表さない。メモリの理論帯域は、ピン当たりの転送速度にバス幅を掛け、bitからbyteへ換算するため8で割って求める。したがって、転送速度が同じという条件で64-bitから96-bitへ広がれば、96÷64で1.5倍、理論帯域は50%増える。この64-bitはA19 Proや競合品の確定値ではなく、幅だけの差を示す比較モデルである。
帯域が増えれば、メモリからの転送待ちが支配的な処理は速くなる可能性がある。高解像度のゲーム描画、画像処理、端末内AIが同じメインメモリへアクセスする場面では、GPUだけを速くしても取り合いが残るからだ。一方、演算能力や放熱が先に限界へ達する処理では、帯域を増やしても性能は比例して伸びない。バス幅の50%増からゲームのフレームレートを予想することはできない。
メモリの接続方法を変えるという噂は、パッケージ設計にも関わる。TSMCのInFO_PoPは、モバイル向けプロセッサーにDRAMパッケージを積層し、再配線層や貫通ビアで接続する技術だ。これに対してA20 Proには、WMCMと呼ばれる実装でメモリを横に並べる説がある。ただし、Appleによる採用確認はない。
並置で配線の選択肢が増える可能性はあっても、バス幅はメモリコントローラーなどの設計と併せて決まる。実装の名称から96-bitや7コアGPUを導けるわけではない。メモリ規格についてもLPDDR5X継続を確定できておらず、規格変更、バス幅拡張、パッケージ変更はそれぞれ確認する必要がある。
SnapdragonとDimensityが減らすメモリ転送
QualcommはSnapdragon 8 Elite Gen 5で、Adreno GPU向けの専用HPM 18MBと、メモリ使用量・帯域を最適化するTile Memory Heapを掲げる。対してMediaTekはDimensity 9500で、Dimensity Dynamic Cache Architectureを説明し、16MBのL3と10MBのSLCを仕様に載せる。AppleもA19 ProでGPUキャッシュを増やしたとするが、今回参照した発表文には容量が記されていない。
| SoC | GPUの公表方法 | キャッシュ/メモリ転送への手当て | メインメモリの公表 | 性能率の比較条件 |
|---|---|---|---|---|
| Apple A19 Pro | 6コアGPU | GPUキャッシュ増量。GPU各コアにNeural Accelerators | 規格・バス幅は資料に記載なし | 前世代iPhone比で最大40%の持続性能改善。冷却を含む |
| Snapdragon 8 Elite Gen 5 | Adreno。参照資料に比較可能なコア数なし | GPU専用HPM 18MB、Tile Memory Heap | LPDDR5x対応 | Snapdragon 8 Elite比でGPU性能23%向上というQualcommの主張 |
| Dimensity 9500 | Arm Mali-G1 Ultra MC12 | Dynamic Cache Architecture、16MB L3、10MB SLC | LPDDR5X対応 | 前世代Dimensityフラッグシップ比でピーク性能33%向上というMediaTekの主張 |
GPU専用の18MBと、CPUのL3やチップ全体で使うSLCは、容量だけでは比較できない。Qualcommは18MBをGPU専用のHPMと明記するが、MediaTekの16MB L3と10MB SLCはCPU階層を含む仕様として掲げられており、GPU専用18MBと同じ資源を表す数字ではない。Appleも「GPUキャッシュ増量」とするだけで容量を示さない。キャッシュは容量の大きさに加え、誰が使えるか、どの処理で外部メモリ転送を避けられるかで効き方が変わる。
QualcommのTile Memory Heapは、近くにあるAdrenoメモリを使いやすくして外部との転送を抑える手段である。MediaTekの動的キャッシュも、GPUのメモリ利用を効率化するための仕組みとして示されている。どちらも、外部メモリの転送速度だけでは説明できない改善だ。
A20 Proでバス幅拡張が確認されれば、同じ速度のメモリでも一度に多くのデータを運べる。競合が重視するキャッシュやメモリ利用の最適化は、運ぶ必要のあるデータを減らす。両者は併用できるため、Appleについてもバス幅とGPUキャッシュの変更を合わせて見る必要がある。
発表後に確かめたい持続性能
Qualcommの23%とMediaTekの33%は、どちらも自社の旧世代を基準にしたメーカー公表値である。比較対象のSoC、端末、測定条件がそろわない以上、数値の大小からSnapdragonとDimensity、まして未発表のA20 Proを含めた性能順位は作れない。Mali-G1 UltraのMC12もAppleの7コアGPUと同じ演算資源の単位ではない。
AppleはA19 Proとベイパーチャンバーを組み合わせ、前世代より最大40%高い持続性能を実現したと説明している。長くゲームを動かしたり、端末内AIを使い続けたりする場面では、熱がたまった状態で性能をどこまで保てるかが効く。帯域拡張が確認されたとしても、端末の放熱、メモリコントローラー、OSとアプリの配分まで見なければ意味は定まらない。
Appleは9月9日午前10時(太平洋夏時間、日本時間9月10日午前2時)に特別イベントを開くと告知しているが、製品名や仕様は記していない。正式なGPU構成が分かった後は、同じ画質でゲームを連続実行した際のフレームレートと消費電力が判断材料になる。AIなら、同じモデルと処理条件で、メモリ転送が性能を制限しているかを確かめたい。演算器とデータ供給の増強が放熱設計とかみ合えば、短時間の速さを、長く使える速さへつなげられる。
