NAND型フラッシュメモリの市場が、価格上昇によって急拡大している。Counterpoint Researchが9月2日に公開した集計では、2026年第2四半期(4〜6月)の市場売上高は前四半期比70%増、価格は55%上昇した。Samsungは売上高シェア28%で首位を守り、Micronが3位となった。Counterpointの四半期集計によるものだ。
ただし、Samsungのシェアは前四半期より下がっている。市場が大きくなることと、その中で取り分を増やすことは別だ。背景には、AIサーバー向けの高容量SSDに需要が集まり、何を売るかによって売上の伸びに差が出る構図がある。
「価格55%上昇」とSSDの店頭価格
Counterpointの集計では、第1四半期の市場成長率も前期比90%に達していた。その大幅増の後に、さらに70%増えたことになる。もっとも、ここで膨らんでいるのは売上高であり、記憶容量の出荷量が同じ割合で増えたという意味ではない。
NANDはSSDなどに使う記憶媒体だ。売上高には、出荷した容量に加えて、その容量をいくらで売ったか、どの種類の製品が多く売れたかが影響する。サーバー向けの高価格製品が増えれば、出荷容量の伸び以上に売上高が膨らむこともある。
公開ページは「価格が前期比55%上昇」と記す一方、価格指数の算出方法や製品別の重み付けまでは示していない。この数字を、特定のSSDの値上げ率や、日本の店頭価格の上昇率に置き換えることはできない。売上高と価格の伸び率の差から、出荷容量の増加率を逆算するのも避けるべきだ。
PCを使う側に関係するのは、NANDの調達費が製品価格へどう移るかである。TrendForceは7月3日の価格見通しで、高コストの部品を使う製品が在庫に入るにつれ、ノートPCの小売価格にも上昇圧力が及ぶとした。部品市場の値動きと完成品の値札には、対象と反映時期の違いがある。
Samsungの首位とMicronの伸び
売上高シェアを同じ調査の前四半期と並べると、各社の変化が分かる。下のグラフはCounterpointの公表値をそのまま使ったものだ。
- 第1四半期
- 第2四半期
データを表で見る
| 第1四半期 (%) | 第2四半期 (%) | |
|---|---|---|
| Samsung | 29 | 28 |
| SK hynix | 18 | 19 |
| Micron | 13 | 15 |
| キオクシア | 14 | 14 |
| YMTC | 13 | 14 |
| SanDisk | 13 | 11 |
Samsungは29%から28%へ下がった一方、Micronは13%から15%へ上がった。キオクシアとYMTCはともに14%と表示されるが、丸めた値から細かな差や同順位を断定することはできない。
Samsungのシェア低下を、そのまま事業悪化と読むのも早計だ。同社は7月30日の決算発表で、限られた供給能力をサーバー向けに優先配分し、価格上昇もあってメモリ事業の四半期売上高と営業利益が過去最高になったと説明した。サーバー向けの売上構成比も過去最高だったという。
これはDRAMやHBMも含むメモリ事業全体の説明であり、NAND単独の利益を示すものではない。それでも、シェアの維持と収益の最大化が常に同じ動きにならないことは読み取れる。生産能力に制約がある企業は、販売量を広げると同時に、どの顧客・用途へ供給するかを選んでいる。
企業向けSSDがNAND出荷容量の48%を占める
AI需要の大きさは、用途別の出荷容量に現れている。Counterpointが8月12日に公表した出荷動向では、企業向けSSDが第2四半期のNANDビット出荷量の48%を占めた。前年同期は26%だった。
データを表で見る
| 企業向けSSD (%) | |
|---|---|
| 前年同期 | 26 |
| 2026年第2四半期 | 48 |
出荷した記憶容量のほぼ半分が企業向けSSDへ向かった計算だ。SSDの台数ではなく容量で測るため、高容量製品への需要を捉えやすい。
出荷量と売上高の違いは、メーカーの順位にも出る。同じ8月の調査でYMTCはビット出荷量3位だったが、売上高では5位とされた。Counterpointは、同社の製品構成が消費者向けに偏り、高価格のデータセンター向けSSDが少ないことを理由に挙げる。9月更新の売上高集計と、8月公表の出荷順位は、公表時点も指標も分けて読む必要がある。
企業向け製品の伸びは、別の調査でも確認できる。TrendForceが9月1日に発表した企業向けSSDの調査は、第2四半期の上位5社の売上高を合計375億9000万ドル、前期比103.6%増と見積もった。Samsungでは高容量品とPCIe 5.0製品の構成比が上がり、Micronでは企業向けSSDの売上高が126.3%増の約69億8000万ドルに達したという。
Micronの売上シェア上昇を理解するうえで、この企業向けSSDの伸びは有力な背景になる。ただし、TrendForceの企業向けSSD売上高をCounterpointの市場集計へ足したり、両者を割って構成比を作ったりすることはできない。調査対象と集計方法が異なるためだ。
PC向けの供給はいつ楽になるか
供給側がサーバーを優先すると、PCやスマートフォンの需要が弱くても、NANDの調達がすぐ楽になるとは限らない。Samsung自身も下半期に生産を増やす努力を続けながら、供給制約は残るとの見方を示している。
TrendForceは7月3日時点で、第3四半期(7〜9月)のNAND契約価格を前期比10〜15%上昇と予測した。値上がりの鈍化を見込んでも、値下がりを予測したわけではない。しかもこれは四半期の契約価格の見通しであり、個々の市販SSDの価格予測ではない。
増産にも時間がかかる。TrendForceの7月21日の中期見通しでは、工場スペースの制約とDRAMへの設備投資優先が重なり、NANDメーカーは既存ラインの製造技術更新によって出荷容量を増やす方針だという。新工場を増やす以外にも供給を伸ばす道はあるが、短期間に需要へ追いつくとは見ていない。
一方で、スマートフォンとノートPCは合わせてNAND需要の約40%を占めると同社は推計する。AIサーバーが強くても、消費者向けの需要低迷は市場全体の需給を左右する。TrendForceが2027年下半期の供給不足緩和を予測するのも、製造技術の更新や増産に加え、消費者向け需要の弱さを織り込んだ結果だ。
今後の判断材料は、企業向けSSDの売上が伸び続けるかに加え、出荷容量がどれだけ増え、PC向けの調達条件に変化が出るかである。部品の供給改善が完成品の在庫へ届くまで確認できれば、NAND市場の好況が利用者の負担軽減へつながる時期も見えてくる。



