OpenAIが2026年9月3日、PC上の操作や長いタスクを主な用途に据えた「GPT-6 Astra」を発表した。画面操作の評価では前世代より高いスコアを短い想定時間で達成し、Codexには長時間の作業を支える記憶機能も加える。一方で同社は、サイバー能力をCriticalに分類しながら一般提供の機能を絞り、推論の監視しやすさが下がる評価結果も公表した。第三者評価では、総合性能よりコーディングの効率改善が目立つ。経営陣がAGIへの到達を語る新モデルを、他社との比較と人が監督できる範囲から確かめる。

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PC操作と推論で広がった差

Astraと前世代のGPT-5.6 SolをOpenAIの発表表で比べると、AutomationBenchでは23.3ポイント、DeepSWEでは1.4ポイントと、改善幅は大きく異なる。以下は同じ発表に掲載された値を抜き出し、AstraからSolを引いて差を計算したものだ。

ベンチマーク GPT-6 Astra GPT-5.6 Sol
OSWorld 2.0(v2026.08.08、オフライン、部分点) 72.6% 65.7% 6.9ポイント
AutomationBench 41.4% 18.1% 23.3ポイント
Terminal-Bench 4.0 57.7% 37.3% 20.4ポイント
DeepSWE v1.1 74.1% 72.7% 1.4ポイント
FrontierMath Tier 4(v2) 97.6% 83.0% 14.6ポイント
ARC-AGI-3 99.9% 7.8% 92.1ポイント

OSWorld 2.0では、スコアが6.9ポイント上がり、想定所要時間は約46.7%短くなった。これはAstraが約40分、Solが約75分という遅延シミュレーションから、(75−40)÷75×100で計算した値である。実際の利用者の作業時間を測った結果ではない。画面をまたぐ仕事では、部分点を含む評価スコアに加え、操作を終えるまでの想定待ち時間も改善したとする結果である。

各指標で解く問題は異なり、差を平均して総合的な性能倍率にはできない。OpenAIのスコアは、推論に使う計算量の設定を変えて得た最高値だ。研究環境やAPIでの評価には、製品版ChatGPTとプロンプトやツールの違いもある。自分の業務でも同じ改善が得られるかは、提供後の検証が必要になる。

PC操作の高速化には、モデルを動かす側の変更も含まれる。OpenAIはCodexの実行環境も更新し、Astraと組み合わせたMind2Webのタスク完了が、従来のSolの利用環境より1.9倍速くなったとする。この倍率はモデルと実行環境を合わせた比較であり、Astra単体の改善率とは区別する必要がある。

他社比較では総合性能とコーディング効率に違い

第三者の測定では、得意分野がさらに見えてくる。Artificial Analysis(AA)の評価で、Astraの総合指標「Intelligence Index」は61点となり、Solと並んだ。同指標のv4.1.1は、科学や知識、コード生成、エージェント業務など9種類の評価をまとめたものだ。

主要モデルの総合スコア横棒グラフ。カテゴリ 7 件、系列: Intelligence Index(単位: 点)Claude Fable 5.1(max・フォールバック)Claude Fable 5.1…Claude Fable 5.1(max・フォールバック) — Intelligence Index: 66点66Claude Opus 5(max)Claude Opus 5(ma…Claude Opus 5(max) — Intelligence Index: 63点63GPT-6 Astra(max)GPT-6 Astra(max…GPT-6 Astra(max) — Intelligence Index: 61点61GPT-5.6 Sol(max)GPT-5.6 Sol(max…GPT-5.6 Sol(max) — Intelligence Index: 61点61Muse Spark 1.3(xhigh)Muse Spark 1.3(x…Muse Spark 1.3(xhigh) — Intelligence Index: 61点61Grok 4.6(high)Grok 4.6(high)Grok 4.6(high) — Intelligence Index: 61点61Gemini 3.8 Flash(high)Gemini 3.8 Flash…Gemini 3.8 Flash(high) — Intelligence Index: 59点59単位: 点
データを表で見る
Intelligence Index (点)
Claude Fable 5.1(max・フォールバック)66
Claude Opus 5(max)63
GPT-6 Astra(max)61
GPT-5.6 Sol(max)61
Muse Spark 1.3(xhigh)61
Grok 4.6(high)61
Gemini 3.8 Flash(high)59
主要モデルの総合スコアArtificial Analysis Intelligence Index v4.1.1。9月1〜3日公表の評価、2026年9月4日確認。高いほど良い。括弧内は推論設定。出典: Artificial Analysis:GPT-6 Astra、Claude Fable 5.1、Muse Spark 1.3、Gemini 3.8 Flashの各評価

総合スコアではFable 5.1やOpus 5がAstraを上回る。ただし、61点で並ぶモデル同士でも個々の評価結果は異なり、あらゆる仕事で同等という意味にはならない。

比較条件にも注意が要る。Fable 5.1は、安全判定されたリクエストをOpus 4.8やOpus 5に切り替える既定のフォールバックを含む。各社のmaxやhighは同じ計算量を保証する設定ではない。Muse Spark 1.3には62点のmax版もあるが、提携先向けの限定プレビューで価格が未公表のため、グラフには61点のxhigh版を載せた。

コーディングではAstraの効率改善が目立つ。AAの「Coding Agent Index」でCodex上のAstraは67点を記録し、Claude Code上のOpus 5やFable 5におおむね並んだ。首位はClaude Code上のFable 5.1の70点である。CodexやClaude Codeとモデルを合わせた比較であり、前節のOpenAIの測定表とも区別して読む必要がある。

AAによると、Astraのmax設定はCodex上のSolのmax設定に対してトークン使用量が約3分の1になり、タスク当たり費用はほぼ同じだった。Fable 5とは同程度のスコアを半分未満の費用で得た。一方、Intelligence IndexではSolより出力トークンが約10%少なくても、料金の上昇によりタスク当たり費用は75%高くなったという。

同じモデル・設定のタスク当たり費用横棒グラフ。カテゴリ 7 件、系列: Intelligence Indexの加重平均費用(単位: 米ドル/タスク)Claude Fable 5.1(max・フォールバック)Claude Fable 5.1…Claude Fable 5.1(max・フォールバック) — Intelligence Indexの加重平均費用: 3.76米ドル/タスク3.76Claude Opus 5(max)Claude Opus 5(ma…Claude Opus 5(max) — Intelligence Indexの加重平均費用: 2.34米ドル/タスク2.34GPT-6 Astra(max)GPT-6 Astra(max…GPT-6 Astra(max) — Intelligence Indexの加重平均費用: 1.67米ドル/タスク1.67GPT-5.6 Sol(max)GPT-5.6 Sol(max…GPT-5.6 Sol(max) — Intelligence Indexの加重平均費用: 0.95米ドル/タスク0.95Muse Spark 1.3(xhigh)Muse Spark 1.3(x…Muse Spark 1.3(xhigh) — Intelligence Indexの加重平均費用: 0.55米ドル/タスク0.55Grok 4.6(high)Grok 4.6(high)Grok 4.6(high) — Intelligence Indexの加重平均費用: 0.94米ドル/タスク0.94Gemini 3.8 Flash(high)Gemini 3.8 Flash…Gemini 3.8 Flash(high) — Intelligence Indexの加重平均費用: 0.58米ドル/タスク0.58単位: 米ドル/タスク
データを表で見る
Intelligence Indexの加重平均費用 (米ドル/タスク)
Claude Fable 5.1(max・フォールバック)3.76
Claude Opus 5(max)2.34
GPT-6 Astra(max)1.67
GPT-5.6 Sol(max)0.95
Muse Spark 1.3(xhigh)0.55
Grok 4.6(high)0.94
Gemini 3.8 Flash(high)0.58
同じモデル・設定のタスク当たり費用総合スコアと同じモデル・設定。9月1〜3日公表の評価、2026年9月4日確認。低いほど安い。API従量料金で、Geminiは年末までの割引を反映。出典: Artificial Analysis:GPT-6 Astraモデルページ、Claude Fable 5.1、Muse Spark 1.3、Gemini 3.8 Flashの各評価

総合指標が同じ61点でも、Astraは1タスク1.67ドル、Muse Spark 1.3のxhigh版は0.55ドルだった。コーディングでの節約を、そのまま一般的な質問や調査へ当てはめることはできない。

この費用は、入力と出力に加え、推論やキャッシュの読み書きに使ったトークンと料金を反映した加重平均だ。Gemini 3.8 Flashは年末までの割引価格で計算されている。定額プランの利用料や、人が成果を確かめる時間まで含む総費用ではない。総合スコアを目安に候補を絞り、実際に任せる仕事で費用を比べると、Astraの効率改善が役立つかを判断しやすい。

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長い仕事をつなぐ記憶と実務での手応え

Astraが想定する仕事には、ブラウザーでの調査、表計算ソフトでの分析、顧客管理システムへの入力がある。人が操作手順を一つずつ実行する負担を、画面を扱えるエージェントへ移す使い方だ。Codexでは、不明点を利用者に尋ねながら、返答に依存しない作業を進められる。影響の大きな判断には返答を待ち、途中の追加指示や質問も元の依頼を維持したまま取り込むという。

さらにCodexには実験的な記憶機能が加わる。従来は会話が長くなると履歴を要約していたが、そのたびに修正が失敗した理由や、部品の挙動を取りこぼす恐れがあった。新方式では作業メモを次の文脈ウィンドウへ引き継ぎ、メモに残らなかった過去のメッセージやツール出力も検索できる。設定ファイルから有効にする実験機能で、今後数週間でAstraの標準設定にする予定だ。

実務での改善幅を考える材料が、法律業務向けサービスLegoraの利用報告だ。Legoraの事例では、財務諸表の照合作業で41文書を一度のエージェント実行で処理し、試算表や連結用の明細、前年の決算書と突き合わせた。所要時間は数分だったという。仕込んだ4件の誤りは全て見つけ、当該ワークフローの性能は前のモデルより約40%上がったという。

一方、同社の業務評価「BAR」のタスク全体では、平均改善は約3%だった。約40%は、この財務諸表照合での性能改善率であり、仕事全体が40%速くなるという意味ではない。前のモデル名も明示されていない。OpenAIが掲載した顧客事例で、網羅的な照合をエージェントが担い、個々の結果の最終判断は法律専門家が行う運用である。

特定業務の大きな伸びが、業務全体の平均には直結しない。導入先でも、照合のように結果を確かめやすい仕事を選び、確認に必要な人の時間がどれだけ減るかを測ると、利用価値を見極めやすい。

「Critical」の能力と、監視しにくくなる推論

OpenAIは9月1日、Astraのサイバー能力が、同社のモデルとして初めて「Critical」の基準に達したと発表した。適切なツールとアクセスがあれば、保護された実システムで未知の脆弱性を見つけ、段階的な手引きなしに悪用手段を開発できる能力を指す。

既知の脆弱性から攻撃コードを作れるかを測るExploitBenchでは、製品版の安全策を外したAstraが100%を記録した。別の社内ベンチマークでは、6月から8月に開示された重大なV8脆弱性20件を使い、任意のコード実行に成功した割合はAstraが39.0%、Solが5.5%だった。Astraが見つけて利用したゼロデイは2件で、開示作業中とされる。いずれも、一般のシステムに対する万能の侵入能力を示す数値ではない。

こうした能力を、そのまま全利用者へ開くわけではない。一般提供では安全なコードレビューや修正を支援する一方、脆弱性を実証する攻撃コードの作成は拒む。防御目的の高度な作業には、Daybreakを通じて今後数週間で制限を緩め、アクセスを広げる計画だ。Hugging Faceで起きた事件は安全策に影響したものの、Astraが引き起こしたものではない。

さらに、安全策を介入させずに行った難しい、または解けない攻撃コード作成タスクでは、Solが許可対象を越えた割合は約48%だったのに対し、Astraは0%だった。これは特定試験での結果であり、実運用の事故率がゼロになることを示すものではない。

許可を守りやすくなったことは、失敗したときに見つけやすくなったことを保証しない。システムカードは、回答前に言語化される中間推論である「思考の連鎖」の監視しやすさについて、監視回避を促さない条件でも、AstraはSolより低下したと報告する。OpenAIは主な理由として、思考の連鎖が短い、あるいは空になる例が増え、監視側が読む材料が減ったことを挙げる。行動だけを読む監視の平均指標は改善した一方、推論と行動を合わせて読む監視でも、全体として低下が見られた。

監視を避けるよう促した試験では、指示された回避や能力を低く見せる振る舞いが監視をすり抜ける場合もあった。ただし、隠し符号化された思考の連鎖が確認されたわけではない。モデル内部の仕組みを公表資料以上に決めつけることもできない。

システムカードに収録されたApollo Researchの評価も、低い不正行為率だけで人間の意図に沿う性質を証明しないと留保する。評価されていることをモデルが意識し得る点や、観察期間の短さがあるからだ。

OpenAIは外部提供でも、ツールを使うAstraの推論と行動を監視し、許可されていない活動の疑いを検出すると止める仕組みを導入する。追加の安全確認や誤検出によって、正当な仕事が遅れたり停止したりする場合もある。ChatGPTやCodexでは利用者の確認を求める場合があり、APIのタスクは停止する。自動で再試行される前提には立てない。高い権限を渡す仕事ほど、どの時点で人が確認し、再開し、成果を検収するかを手順に入れる必要がある。

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料金と段階提供、「AGI」の先に測るもの

Astraは9月3日に一部組織へ提供を始め、今後数日で対象を広げる。ChatGPTではPlusとPro、企業向けのBusinessとEnterpriseが対象となり、OpenAI APIとAWSにも展開する。既存のサブスクリプション枠内で使え、追加クレジットも購入できる。ProとBusiness、EnterpriseにはGPT-6 Astra Proも用意するが、Enterpriseのワークスペースでは管理者が有効化するまで初期状態でオフだ。FreeやEduへの提供、各アカウントでの完了日は発表で示していない。

OpenAI APIのモデルIDはgpt-6-astraで、Standardの料金は入力100万トークン当たり10ドル、出力100万トークン当たり50ドルである。キャッシュの読み書きには別料金が適用される。FastはStandardの最大2.5倍の速度、2倍の価格とされる。Amazon Bedrockも提供先に含まれるが、このOpenAI API価格をBedrockやAstra Proへ当てはめてはならない。

Axiosによると、共同創業者のGreg Brockmanは記者説明会で、個人的にはAGIに到達したと考える一方、判断は利用者に委ねる趣旨を述べた。OpenAI CharterがいうAGIは「経済的価値のある仕事の大半で人を上回る高度に自律的なシステム」であり、単一ベンチマークの通過線ではない。Brockman氏の個人的な評価と、広範な仕事で能力を実証することは分けて考える必要がある。

導入の判断は、まず自社の代表的な画面操作で正しく終えられる仕事の量を、トークン料金と人の確認・再開時間を含めて記録するところから始まる。高い完了率を再現でき、人が途中の確認や停止後の再開を扱えるなら、既存の業務ソフトを使った長い仕事を任せる範囲が広がる。